65 / 78
森之宮家の三兄弟
26
しおりを挟む
「抑制剤飲んでても、発情期ってしんどいらしいねぇ。母親と、義兄がね。番のアルファが傍にいると、発情期が少し楽になるって言ってて。番じゃ、ないけど。どう?楽になる?」
「ん…ぅん…匂い、かいとの…」
「落ち着く?」
「うん…すごく、落ち着く…」
アイは開斗の胸に顔を擦り付けている。開斗はアイの背中をポンポンと叩く。アイとミイはきちんとオメガの抑制剤を飲んでいる。だから開斗はヒートを起こさずに済んでいるし、アイも行為をしないと解消できないほどの症状ではない。
開斗の背中にミイが寄り添う。
「カイト、平気?苦しくない?もう…これ、もってなくて、いい?」
「大丈夫。俺は、出来損ないだからね、アルファの。フェロモンがあんまり、わかんないから。だけど、ちょーっと、ムラムラする、かな?だから、まだ持ってて。念の為」
ミイの言う『これ』は緊急抑制剤だ。今のところそんな気配はない。しかしもしかしたら、ヒートを起こしてしまうかもしれない。万が一の時のため、ミイにはアルファの緊急抑制剤を持ち続けてくれるよう頼んだ。
開斗は自身をアルファの成り損ないだと思っている。父や兄弟のようにオメガのフェロモンがわからない。気付けない。きっと他のアルファと比べるとアルファとしての能力が低いのだろう。今まで困ったことはなく、今はこの体質に感謝すらしていた。出来損ないでも、アルファの匂いをさせてアイを安心させることができた。
アイの呼吸は落ち着いている。もしかしたらこのまま眠ってしまうかもしれない。
「ど、うして…どうして、ここまでしてくれるの?カイトも、辛いでしょ?オメガのフェロモン、わかんないなんて、嘘だよ。苦しそう、だよ…アルファの辛さ、わかんない、けど…緊急、抑制剤のしんどさは、わかるよ」
「アイとミイが、好きだから。だからこんなに必死になってるんだよ。華ママに…ばあちゃんに、どうやって妊娠したか聞いたり、発情期って聞いてすっ飛んできたり…今までの俺なら、絶対やんない。めんどいもん」
開斗は素直に本音を吐露した。アイとミイが好きだ。どちらがより好きだとか、そういうことじゃない。二人共同じくらい好きだ。
ヒートは起こさない自信がある。今まで撮影でどんなオメガに会っても、発情したオメガと対峙してもなんともなかった。ただ、アイとミイは違う。発情期を迎えたアイを前にして、少しだけ開斗の頭も熱に浮かされたようになっている。
緊急抑制剤を使うとすぐにヒートは収まるが、ひどい副作用に苦しむことになるらしい。開斗はまだ使ったことがない。そんな薬を使ってでも、今は二人が落ち着くまで傍にいたい。
「アイの発情期が終わったら、3人で、話し合おうよ。どうしたらいいか。アイとミイが良かったら、みんなで暮らそ。俺の子供、産んでよ」
ミイは開斗にすがりついて泣いた。アイは静かに寝息を立てていた。
きっと襲われてすぐに発情期に入り、アイはとても落ち込んだだろう。傍で見ていたミイもきっと苦しかった。
差別にも辛さにも負けないように寄り添って支え合う二人が好きだ。可愛らしい外見に似合わず芯が強いところも、3人でいると年齢よりも幼く笑うところも。
アルファに怖いことをされてきた二人は開斗を心から信頼してくれている。傍にいるとよくわかる。
少しでも二人が楽になるように。
開斗はアイを抱きしめながら、背後のミイに背中を貸した。
開斗編 END
「ん…ぅん…匂い、かいとの…」
「落ち着く?」
「うん…すごく、落ち着く…」
アイは開斗の胸に顔を擦り付けている。開斗はアイの背中をポンポンと叩く。アイとミイはきちんとオメガの抑制剤を飲んでいる。だから開斗はヒートを起こさずに済んでいるし、アイも行為をしないと解消できないほどの症状ではない。
開斗の背中にミイが寄り添う。
「カイト、平気?苦しくない?もう…これ、もってなくて、いい?」
「大丈夫。俺は、出来損ないだからね、アルファの。フェロモンがあんまり、わかんないから。だけど、ちょーっと、ムラムラする、かな?だから、まだ持ってて。念の為」
ミイの言う『これ』は緊急抑制剤だ。今のところそんな気配はない。しかしもしかしたら、ヒートを起こしてしまうかもしれない。万が一の時のため、ミイにはアルファの緊急抑制剤を持ち続けてくれるよう頼んだ。
開斗は自身をアルファの成り損ないだと思っている。父や兄弟のようにオメガのフェロモンがわからない。気付けない。きっと他のアルファと比べるとアルファとしての能力が低いのだろう。今まで困ったことはなく、今はこの体質に感謝すらしていた。出来損ないでも、アルファの匂いをさせてアイを安心させることができた。
アイの呼吸は落ち着いている。もしかしたらこのまま眠ってしまうかもしれない。
「ど、うして…どうして、ここまでしてくれるの?カイトも、辛いでしょ?オメガのフェロモン、わかんないなんて、嘘だよ。苦しそう、だよ…アルファの辛さ、わかんない、けど…緊急、抑制剤のしんどさは、わかるよ」
「アイとミイが、好きだから。だからこんなに必死になってるんだよ。華ママに…ばあちゃんに、どうやって妊娠したか聞いたり、発情期って聞いてすっ飛んできたり…今までの俺なら、絶対やんない。めんどいもん」
開斗は素直に本音を吐露した。アイとミイが好きだ。どちらがより好きだとか、そういうことじゃない。二人共同じくらい好きだ。
ヒートは起こさない自信がある。今まで撮影でどんなオメガに会っても、発情したオメガと対峙してもなんともなかった。ただ、アイとミイは違う。発情期を迎えたアイを前にして、少しだけ開斗の頭も熱に浮かされたようになっている。
緊急抑制剤を使うとすぐにヒートは収まるが、ひどい副作用に苦しむことになるらしい。開斗はまだ使ったことがない。そんな薬を使ってでも、今は二人が落ち着くまで傍にいたい。
「アイの発情期が終わったら、3人で、話し合おうよ。どうしたらいいか。アイとミイが良かったら、みんなで暮らそ。俺の子供、産んでよ」
ミイは開斗にすがりついて泣いた。アイは静かに寝息を立てていた。
きっと襲われてすぐに発情期に入り、アイはとても落ち込んだだろう。傍で見ていたミイもきっと苦しかった。
差別にも辛さにも負けないように寄り添って支え合う二人が好きだ。可愛らしい外見に似合わず芯が強いところも、3人でいると年齢よりも幼く笑うところも。
アルファに怖いことをされてきた二人は開斗を心から信頼してくれている。傍にいるとよくわかる。
少しでも二人が楽になるように。
開斗はアイを抱きしめながら、背後のミイに背中を貸した。
開斗編 END
85
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
鈴木さんちの家政夫
ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。


俺にとってはあなたが運命でした
ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会
βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂
彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。
その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。
それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです

いつかコントローラーを投げ出して
せんぷう
BL
オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。
世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。
バランサー。
アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。
これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。
裏社会のトップにして最強のアルファ攻め
×
最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け
※オメガバース特殊設定、追加性別有り
.
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる