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森之宮家の三兄弟

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言い切る裕司に咲也はそんなもんなのか?と疑問に思う。森之宮は代々続く由緒正しきお家、らしい。それを咲也の代で途絶えさせて良いものなのだろうか。下に伊吹と開斗がいるものの、押し付けてしまうことにならないか。そこも気になっていたが、二人がやりたくないならやらなくていいらしい。
「現当主の俺が言ってんだ、森之宮のことは気にするな。お前は朝陽ちゃんと自分のことだけ考えてろ。どうやって朝陽ちゃんを守んのか。それはてめぇで考えろや。森之宮製薬はお前のモンにならねぇし、俺が死なない限り諸々の相続も期待できねぇ。どうする?どうやって朝陽ちゃんとてめぇ守ってメシ食ってくんだよ。あ?」
咲也は言葉に詰まる。先のことを考えてはいたが、まだまとまってはいない。
裕司はニタリと笑った。楽しそうで意地の悪い、極悪な笑顔だ。
「…それが、息子に見せるツラかよ」
「いや~咲也もいっちょ前になったなぁって思って。守るもんがありゃなんでもできっから。せいぜい頑張れよ♡」
裕司はケラケラ笑った。華の前では可愛い子振るのにこの父親、咲也の前では平気で本当の顔を見せてくる。伊吹や開斗には見せないところを見ると、咲也のことを少し認めてくれているのかもしれない。
裕司はふと笑いを引っ込めた。
「俺が森之宮を継いだのは華とお前を守るためで。森之宮を存続させるだとか社員を守るだとか、そんな志があったわけでもねぇ。使えるもん使っただけで、周り巻き込んで、めちゃくちゃやってきた。必死だったからな。その結果今があるけど、全部結果論だ」
遠くを見ていた裕司は咲也を見る。
「森之宮のことは気にすんな、まじで。お前が何をするか、どうすんのか。相談には乗るけど、てめぇで決めろ。それにな、俺はまだまだ社長降りる気ねぇし。やりたい事あるし、伊吹と開斗もこれから金がかかるしな。お前も金、かかってるしな。わかるか?子供育てんのって金がかかんだよ。めちゃくちゃ、金、かかんの。辞めらんないよね、まだ」
「そら三人も作ってりゃな」
「だって、華が『僕一人っ子だから、咲也には沢山兄弟作ってあげたい』っつーんだもん。そら頑張るだろ」
「じゃあ、頑張るしかねぇじゃん。頑張れよ、パパ」
裕司は『パパ、頑張る』と両手に拳を作った。ひとつも可愛くない父親に咲也は思わず笑ってしまった。咲也なりに思い悩んで切り出したのだが、一蹴されてしまった。もしかしたらこの父なりに気を使ってくれたのかもしれない。
そう考えて、そんなこともないなと思い直す。この父親に、配偶者の華以外に気を使うなんてことはありえない。
『守るもんがありゃなんでもできっから』
この一言に尽きるのだろうと咲也は思う。朝陽のことは咲也が守る。守る方法は自分出考えて自分で決める。
森之宮製薬を継がず、森之宮への道は進まない。
実は、元々考えていたことでもある。咲也は薬学に興味が沸かない。なので、やるなら別のことがしたい。『別のこと』がなにかはわからないが、父のレールに乗るよりも咲也は自分で何かを切り開きたかった。
「お話、終わった?そろそろご飯食べない?」
「腹減った」
「咲にぃ~!」
リビングの扉が開き、華と伊吹と開斗と、使用人のエリカが入ってきた。開斗は咲也の膝に収まって猫のように甘えてくる。伊吹は空腹のためか不機嫌そうな顔をしていた。
「開斗、今日パパいるよ?パパんとこおいで♡」
「やだぁ。さく兄のお膝がいい」
「出たよ、開斗のぶりっ子。いつまで咲也にそれやんだよ、お前」
「開斗、お前もう重いんだって…伊吹もいちいち吹っ掛けんな」
開斗は伊吹に可愛らしく舌を出す。この三男は自分の可愛らしさを熟知している。そして伊吹は口を尖らせてそっぽを向いた。次男の伊吹は幼い頃から変わらず、イヤイヤ期が続いている。
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