45 / 78
森之宮家の三兄弟
6 長男・咲也編
しおりを挟む
三男の出産から10年。三男は開斗と名付けられてスクスク育っていた。
長男である咲也は16歳。こちらもスクスクと育ち、高校生になった。今日は恋人と共に映画を見に来ている。恋人はペンライトを振り回して叫んだ。
「頑張れー!ぷい◯ゅあー!!」
「声、でけぇって」
周りの親御さんがチラチラこちらを見ている。幼女たちに紛れて同い年の恋人は、全力で応援上映を盛り上げていた。
この同い年の恋人とは幼馴染だ。両親が通った学園に入学し、小学部で出会った。
入学式も終えた翌日、同じクラスになった彼は休憩時間に咲也の机にやってきた。
「森之宮君てかっこいいね!シャイニングライダーみたい!僕、ダークウィザードするね。『よく来たなシャイニングライダー。いかにも私がダークウィザードだ』」
「シャイニング…なんて?」
「『受けてみよ、私の闇の力!ダークウィンドウ!』…立って、森之宮君、うわぁ~って、して」
「いや、知らないんだけど、それ」
いきなり真横にやってきてよくわからない呪文を唱え始めた彼、朝陽は咲也の話は聞かずにダークウィザードになりきっていた。咲也の朝陽に対する第一印象は、面白い変なやつだった。可愛らしい顔をしていて、一見すると美少女か美少年なのに、口を開くと早口オタクだった。そのギャップが面白くて、気づけばいつも一緒にいた。
それから何かと二人でいることが増え、高校進学と共に付き合い始めた。まだお互いに第2性はわかっていない。今のところは男性同士のカップルだが、この先どうなるかわからない。
父がアルファで母がオメガである咲也はどちらになる可能性もある。父がベータで母がオメガの朝陽もどちらになるかわからない。
咲也の叔父である健司は祖父母がアルファだが、ベータだった。第2性がどうなるかはまだ誰にもわからない。
ただ、なんとなく咲也は、自身はアルファだろうと思っていた。自他共に認めるほど、咲也はアルファの父、裕司によく似ていた。次男の伊吹と共に父と見た目がそっくりで、母の華が落ち込むほど。
そして咲也は、朝陽はオメガだろうと思っている。オメガは中性的な容姿をしていることが多い。妊娠に特化した性別のため、生殖相手を探しやすい容姿をしていると第2性に関する本で読んだことがあるが、真偽の程は不明だ。しかし朝陽は、オメガである咲也の母の華にどことなく似ている。何より年齢が上がるにつれて、朝陽から香る、華に似た甘い匂いが強くなっている気がする。華の匂いは落ち着く母の匂いだが、朝陽のそれは華に似ているのに華とは違う。鼻腔をくすぐるような香りに時々、咲也は頭がしびれるような、いつまでも嗅いでいたいような、不思議な感覚に囚われた。
「さっくんと同じクラスになれて良かったぁ。来年もずっと、同じだといいなぁ」
朝陽はクラス表を見て安堵したように笑う。
この学園は咲也の両親の妊娠出産を受けて、高校生から第2性によってクラスが分かれていた時期があった。両親は、というより母は、父と叔父と、許嫁のような関係だった。しかし学園に通うアルファが学園に通うオメガを妊娠させたことは大きな問題となった。結果、第2性がわかり次第オメガは別クラスに隔離されることになり、母は咲也を妊娠中に退学してしまった。休学して産後の復学する選択肢もあったはずだが、その話をすると母はいつも首を横に振る。
「咲也を傍で見てあげたかったし、なにより、あの学園に僕は戻りたくなかったんだ」
長男である咲也は16歳。こちらもスクスクと育ち、高校生になった。今日は恋人と共に映画を見に来ている。恋人はペンライトを振り回して叫んだ。
「頑張れー!ぷい◯ゅあー!!」
「声、でけぇって」
周りの親御さんがチラチラこちらを見ている。幼女たちに紛れて同い年の恋人は、全力で応援上映を盛り上げていた。
この同い年の恋人とは幼馴染だ。両親が通った学園に入学し、小学部で出会った。
入学式も終えた翌日、同じクラスになった彼は休憩時間に咲也の机にやってきた。
「森之宮君てかっこいいね!シャイニングライダーみたい!僕、ダークウィザードするね。『よく来たなシャイニングライダー。いかにも私がダークウィザードだ』」
「シャイニング…なんて?」
「『受けてみよ、私の闇の力!ダークウィンドウ!』…立って、森之宮君、うわぁ~って、して」
「いや、知らないんだけど、それ」
いきなり真横にやってきてよくわからない呪文を唱え始めた彼、朝陽は咲也の話は聞かずにダークウィザードになりきっていた。咲也の朝陽に対する第一印象は、面白い変なやつだった。可愛らしい顔をしていて、一見すると美少女か美少年なのに、口を開くと早口オタクだった。そのギャップが面白くて、気づけばいつも一緒にいた。
それから何かと二人でいることが増え、高校進学と共に付き合い始めた。まだお互いに第2性はわかっていない。今のところは男性同士のカップルだが、この先どうなるかわからない。
父がアルファで母がオメガである咲也はどちらになる可能性もある。父がベータで母がオメガの朝陽もどちらになるかわからない。
咲也の叔父である健司は祖父母がアルファだが、ベータだった。第2性がどうなるかはまだ誰にもわからない。
ただ、なんとなく咲也は、自身はアルファだろうと思っていた。自他共に認めるほど、咲也はアルファの父、裕司によく似ていた。次男の伊吹と共に父と見た目がそっくりで、母の華が落ち込むほど。
そして咲也は、朝陽はオメガだろうと思っている。オメガは中性的な容姿をしていることが多い。妊娠に特化した性別のため、生殖相手を探しやすい容姿をしていると第2性に関する本で読んだことがあるが、真偽の程は不明だ。しかし朝陽は、オメガである咲也の母の華にどことなく似ている。何より年齢が上がるにつれて、朝陽から香る、華に似た甘い匂いが強くなっている気がする。華の匂いは落ち着く母の匂いだが、朝陽のそれは華に似ているのに華とは違う。鼻腔をくすぐるような香りに時々、咲也は頭がしびれるような、いつまでも嗅いでいたいような、不思議な感覚に囚われた。
「さっくんと同じクラスになれて良かったぁ。来年もずっと、同じだといいなぁ」
朝陽はクラス表を見て安堵したように笑う。
この学園は咲也の両親の妊娠出産を受けて、高校生から第2性によってクラスが分かれていた時期があった。両親は、というより母は、父と叔父と、許嫁のような関係だった。しかし学園に通うアルファが学園に通うオメガを妊娠させたことは大きな問題となった。結果、第2性がわかり次第オメガは別クラスに隔離されることになり、母は咲也を妊娠中に退学してしまった。休学して産後の復学する選択肢もあったはずだが、その話をすると母はいつも首を横に振る。
「咲也を傍で見てあげたかったし、なにより、あの学園に僕は戻りたくなかったんだ」
53
お気に入りに追加
204
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
鈴木さんちの家政夫
ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる