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森之宮家の三兄弟
6 長男・咲也編
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三男の出産から10年。三男は開斗と名付けられてスクスク育っていた。
長男である咲也は16歳。こちらもスクスクと育ち、高校生になった。今日は恋人と共に映画を見に来ている。恋人はペンライトを振り回して叫んだ。
「頑張れー!ぷい◯ゅあー!!」
「声、でけぇって」
周りの親御さんがチラチラこちらを見ている。幼女たちに紛れて同い年の恋人は、全力で応援上映を盛り上げていた。
この同い年の恋人とは幼馴染だ。両親が通った学園に入学し、小学部で出会った。
入学式も終えた翌日、同じクラスになった彼は休憩時間に咲也の机にやってきた。
「森之宮君てかっこいいね!シャイニングライダーみたい!僕、ダークウィザードするね。『よく来たなシャイニングライダー。いかにも私がダークウィザードだ』」
「シャイニング…なんて?」
「『受けてみよ、私の闇の力!ダークウィンドウ!』…立って、森之宮君、うわぁ~って、して」
「いや、知らないんだけど、それ」
いきなり真横にやってきてよくわからない呪文を唱え始めた彼、朝陽は咲也の話は聞かずにダークウィザードになりきっていた。咲也の朝陽に対する第一印象は、面白い変なやつだった。可愛らしい顔をしていて、一見すると美少女か美少年なのに、口を開くと早口オタクだった。そのギャップが面白くて、気づけばいつも一緒にいた。
それから何かと二人でいることが増え、高校進学と共に付き合い始めた。まだお互いに第2性はわかっていない。今のところは男性同士のカップルだが、この先どうなるかわからない。
父がアルファで母がオメガである咲也はどちらになる可能性もある。父がベータで母がオメガの朝陽もどちらになるかわからない。
咲也の叔父である健司は祖父母がアルファだが、ベータだった。第2性がどうなるかはまだ誰にもわからない。
ただ、なんとなく咲也は、自身はアルファだろうと思っていた。自他共に認めるほど、咲也はアルファの父、裕司によく似ていた。次男の伊吹と共に父と見た目がそっくりで、母の華が落ち込むほど。
そして咲也は、朝陽はオメガだろうと思っている。オメガは中性的な容姿をしていることが多い。妊娠に特化した性別のため、生殖相手を探しやすい容姿をしていると第2性に関する本で読んだことがあるが、真偽の程は不明だ。しかし朝陽は、オメガである咲也の母の華にどことなく似ている。何より年齢が上がるにつれて、朝陽から香る、華に似た甘い匂いが強くなっている気がする。華の匂いは落ち着く母の匂いだが、朝陽のそれは華に似ているのに華とは違う。鼻腔をくすぐるような香りに時々、咲也は頭がしびれるような、いつまでも嗅いでいたいような、不思議な感覚に囚われた。
「さっくんと同じクラスになれて良かったぁ。来年もずっと、同じだといいなぁ」
朝陽はクラス表を見て安堵したように笑う。
この学園は咲也の両親の妊娠出産を受けて、高校生から第2性によってクラスが分かれていた時期があった。両親は、というより母は、父と叔父と、許嫁のような関係だった。しかし学園に通うアルファが学園に通うオメガを妊娠させたことは大きな問題となった。結果、第2性がわかり次第オメガは別クラスに隔離されることになり、母は咲也を妊娠中に退学してしまった。休学して産後の復学する選択肢もあったはずだが、その話をすると母はいつも首を横に振る。
「咲也を傍で見てあげたかったし、なにより、あの学園に僕は戻りたくなかったんだ」
長男である咲也は16歳。こちらもスクスクと育ち、高校生になった。今日は恋人と共に映画を見に来ている。恋人はペンライトを振り回して叫んだ。
「頑張れー!ぷい◯ゅあー!!」
「声、でけぇって」
周りの親御さんがチラチラこちらを見ている。幼女たちに紛れて同い年の恋人は、全力で応援上映を盛り上げていた。
この同い年の恋人とは幼馴染だ。両親が通った学園に入学し、小学部で出会った。
入学式も終えた翌日、同じクラスになった彼は休憩時間に咲也の机にやってきた。
「森之宮君てかっこいいね!シャイニングライダーみたい!僕、ダークウィザードするね。『よく来たなシャイニングライダー。いかにも私がダークウィザードだ』」
「シャイニング…なんて?」
「『受けてみよ、私の闇の力!ダークウィンドウ!』…立って、森之宮君、うわぁ~って、して」
「いや、知らないんだけど、それ」
いきなり真横にやってきてよくわからない呪文を唱え始めた彼、朝陽は咲也の話は聞かずにダークウィザードになりきっていた。咲也の朝陽に対する第一印象は、面白い変なやつだった。可愛らしい顔をしていて、一見すると美少女か美少年なのに、口を開くと早口オタクだった。そのギャップが面白くて、気づけばいつも一緒にいた。
それから何かと二人でいることが増え、高校進学と共に付き合い始めた。まだお互いに第2性はわかっていない。今のところは男性同士のカップルだが、この先どうなるかわからない。
父がアルファで母がオメガである咲也はどちらになる可能性もある。父がベータで母がオメガの朝陽もどちらになるかわからない。
咲也の叔父である健司は祖父母がアルファだが、ベータだった。第2性がどうなるかはまだ誰にもわからない。
ただ、なんとなく咲也は、自身はアルファだろうと思っていた。自他共に認めるほど、咲也はアルファの父、裕司によく似ていた。次男の伊吹と共に父と見た目がそっくりで、母の華が落ち込むほど。
そして咲也は、朝陽はオメガだろうと思っている。オメガは中性的な容姿をしていることが多い。妊娠に特化した性別のため、生殖相手を探しやすい容姿をしていると第2性に関する本で読んだことがあるが、真偽の程は不明だ。しかし朝陽は、オメガである咲也の母の華にどことなく似ている。何より年齢が上がるにつれて、朝陽から香る、華に似た甘い匂いが強くなっている気がする。華の匂いは落ち着く母の匂いだが、朝陽のそれは華に似ているのに華とは違う。鼻腔をくすぐるような香りに時々、咲也は頭がしびれるような、いつまでも嗅いでいたいような、不思議な感覚に囚われた。
「さっくんと同じクラスになれて良かったぁ。来年もずっと、同じだといいなぁ」
朝陽はクラス表を見て安堵したように笑う。
この学園は咲也の両親の妊娠出産を受けて、高校生から第2性によってクラスが分かれていた時期があった。両親は、というより母は、父と叔父と、許嫁のような関係だった。しかし学園に通うアルファが学園に通うオメガを妊娠させたことは大きな問題となった。結果、第2性がわかり次第オメガは別クラスに隔離されることになり、母は咲也を妊娠中に退学してしまった。休学して産後の復学する選択肢もあったはずだが、その話をすると母はいつも首を横に振る。
「咲也を傍で見てあげたかったし、なにより、あの学園に僕は戻りたくなかったんだ」
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