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森之宮家の三兄弟
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華の入院中、裕司は伊吹の華攻撃にだいぶ精神をやられた。華じゃなきゃ嫌だが華以外ならなんでもいいわけではなく、使用人やシッターを拒否して裕司を呼ぶ。でも華じゃないから全力で攻撃してくるし泣き叫ぶ。むかついて3回くらいオムツの上から伊吹の尻を叩いたことは、華には言えない。見ていた咲也には華には黙っていてくれと懇願した。
夜の飲み会に伊吹と咲也に連れ出したのも一度や二度では済まない。子育て経験のない知人に丸投げして裕司は寝た。夜間に外に連れ出したことも華には言えない。秘密だぞ、と子供達に念を押した。が、そこにいた知人が電話をかけてきた華に「飲んでまーす」と答えやがったことがある。華は笑って許してくれたが知人を恨んだ。しかし子供達がその知人に懐いているので、恨みつつもまた彼に子供達を丸投げするという。とにかく肝を冷やしたことがあったがそれはまた別のお話だ。
そんな伊吹が、華が帰ってきた今日はとてもご機嫌だった。華にべったりで、退院したばかりの華の負担になるだろうと思いつつも伊吹を引き取る気力はなかった。とにかく華のいない森之宮家は、というか裕司は地獄の毎日を過ごした。これもいつかいい思い出になるはずだ。
そんな裕司は助手席に痛みを堪える華を乗せて病院へ急いでいる。まさか、退院早々こんなことになるなんて。アクセルがこっちでブレーキはどっち?とパニックを起こす裕司に、咲也が「しっかりしろ」と活を入れてくれた。
華の顔色は悪く、汗をかいている。病院までは大した距離じゃない。とはいえ焦る気持ちが表情に出ていたのだろう。華が苦しそうに笑う。
「大丈夫だよ、裕司、安全運転ね」
大丈夫、大丈夫と言いながら苦しそうな華に裕司はとにかく安全運転を心がけて病院を目指した。
病院につくと、見慣れた顔が華を見て笑った。
「森之宮さん!今朝ぶりですね~」
軽快に笑う彼、土屋は咲也の妊娠の頃からこの病院にいる男性看護師だ。オメガ男性の妊娠出産を多く取り扱うこの病院は、男性看護師が数名いる。その中でも彼は毎回華を担当してくれる看護師だ。華も彼を信頼している。が、土屋は快活と言うかいつも軽い。今日も苦しむ華を見て、白い歯を見せて笑っている。
「じゃっ、内診してみましょっか」
診察台に乗せられた華はやはり苦しそうで、早くなんとかしてやってほしいと裕司は願う。華の下半身にかけられたカーテン越しに、土屋のあっという声が聞こえた。
「開いてますねぇ…先生、8センチです!」
土屋の声に顔を見せたのは、この病院の院長である医師だ。咲也の妊娠がわかった時に森之宮の屋敷にいた医師だ。医師は土屋の言葉に頷いた。華を診察して裕司に声をかける。
「陣痛で間違いないですね。経産夫さんなのでもう産まれます。旦那様は立ち会いでよろしいですよね」
「は?もう、産ま、…はぁあ!?」
「森之宮さーん、お部屋行きますよ~呼吸してくださいね~」
華は土屋の手に支えられて歩かされている。華は医師の腕を掴んだ。
「麻酔、麻酔、は?」
「かけないです。効いてくる前に産まれちゃいますからね」
「森之宮さん初めて普通分娩ですね~頑張りましょう!」
「無理、無理です、こんな、痛…うぅぅううう」
華はその場で前屈みに丸くなった。伊吹を抱えて呆然としていた裕司は意識を取り戻して華に向かう。
「華!大丈夫か?いてぇよな?つか、徒歩?徒歩なの?」
「いた、痛い、だいじょばな…い、ぅ、う~っ」
「歩いたほうがお産、進みますから。森之宮さん深呼吸~。あ、さくちゃんといぶちゃんは、椅子を用意しようね!いぶちゃんはすやすやですねぇ、可愛い~っ」
土屋は華を支えながらぐっと咲也に親指を立てる。相変わらず軽い。華が苦しんでいるのに。裕司は歯を見せて笑う土屋をぶん殴りたくなった。
夜の飲み会に伊吹と咲也に連れ出したのも一度や二度では済まない。子育て経験のない知人に丸投げして裕司は寝た。夜間に外に連れ出したことも華には言えない。秘密だぞ、と子供達に念を押した。が、そこにいた知人が電話をかけてきた華に「飲んでまーす」と答えやがったことがある。華は笑って許してくれたが知人を恨んだ。しかし子供達がその知人に懐いているので、恨みつつもまた彼に子供達を丸投げするという。とにかく肝を冷やしたことがあったがそれはまた別のお話だ。
そんな伊吹が、華が帰ってきた今日はとてもご機嫌だった。華にべったりで、退院したばかりの華の負担になるだろうと思いつつも伊吹を引き取る気力はなかった。とにかく華のいない森之宮家は、というか裕司は地獄の毎日を過ごした。これもいつかいい思い出になるはずだ。
そんな裕司は助手席に痛みを堪える華を乗せて病院へ急いでいる。まさか、退院早々こんなことになるなんて。アクセルがこっちでブレーキはどっち?とパニックを起こす裕司に、咲也が「しっかりしろ」と活を入れてくれた。
華の顔色は悪く、汗をかいている。病院までは大した距離じゃない。とはいえ焦る気持ちが表情に出ていたのだろう。華が苦しそうに笑う。
「大丈夫だよ、裕司、安全運転ね」
大丈夫、大丈夫と言いながら苦しそうな華に裕司はとにかく安全運転を心がけて病院を目指した。
病院につくと、見慣れた顔が華を見て笑った。
「森之宮さん!今朝ぶりですね~」
軽快に笑う彼、土屋は咲也の妊娠の頃からこの病院にいる男性看護師だ。オメガ男性の妊娠出産を多く取り扱うこの病院は、男性看護師が数名いる。その中でも彼は毎回華を担当してくれる看護師だ。華も彼を信頼している。が、土屋は快活と言うかいつも軽い。今日も苦しむ華を見て、白い歯を見せて笑っている。
「じゃっ、内診してみましょっか」
診察台に乗せられた華はやはり苦しそうで、早くなんとかしてやってほしいと裕司は願う。華の下半身にかけられたカーテン越しに、土屋のあっという声が聞こえた。
「開いてますねぇ…先生、8センチです!」
土屋の声に顔を見せたのは、この病院の院長である医師だ。咲也の妊娠がわかった時に森之宮の屋敷にいた医師だ。医師は土屋の言葉に頷いた。華を診察して裕司に声をかける。
「陣痛で間違いないですね。経産夫さんなのでもう産まれます。旦那様は立ち会いでよろしいですよね」
「は?もう、産ま、…はぁあ!?」
「森之宮さーん、お部屋行きますよ~呼吸してくださいね~」
華は土屋の手に支えられて歩かされている。華は医師の腕を掴んだ。
「麻酔、麻酔、は?」
「かけないです。効いてくる前に産まれちゃいますからね」
「森之宮さん初めて普通分娩ですね~頑張りましょう!」
「無理、無理です、こんな、痛…うぅぅううう」
華はその場で前屈みに丸くなった。伊吹を抱えて呆然としていた裕司は意識を取り戻して華に向かう。
「華!大丈夫か?いてぇよな?つか、徒歩?徒歩なの?」
「いた、痛い、だいじょばな…い、ぅ、う~っ」
「歩いたほうがお産、進みますから。森之宮さん深呼吸~。あ、さくちゃんといぶちゃんは、椅子を用意しようね!いぶちゃんはすやすやですねぇ、可愛い~っ」
土屋は華を支えながらぐっと咲也に親指を立てる。相変わらず軽い。華が苦しんでいるのに。裕司は歯を見せて笑う土屋をぶん殴りたくなった。
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