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番外編
あの日の話 完
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「華、咲也さんがちょっと、お怒りです」
「ごめんね、うるさかったね……初体験、うまく、できた?」
華はしーっと人差し指を立てて口元に当てて咲也に謝ったあと、裕司に小声で華は尋ねてくる。今日の華はなんだかちょっとエロい。興奮したいのにさっきの話題が続行していて、裕司は興奮しきれなかった。裕司は再びヤケクソになった。
「それはもう、ね。相手の方が、初めてじゃなかったんで。できました。童貞、捨てました」
「はゎーっ!大人!大人だ!ひゃーっ!」
「ちょ、落ち着いて、なんなんこれ、なんの時間!?なんでこんな話してんの、俺!」
華は小声で大興奮している。裕司も小声で華をなだめた。もう少しで咲也がミルクを飲み終える。咲也は大人しくミルクを飲み続けていた。両親が騒がしいのはもう、諦めた様子だ。
「…あのね、僕、お付き合いとか裕司が初めてだし、そういうことってどんなふうにするのかなーって、気になっちゃって。裕司はいっぱい、お相手がいたでしょ?学生時代に友達から聞いたんだ。裕司が女の人といたとか、また別の女の人と一緒にいたとか、二股かけたとか」
「お、おぉっふ…どいつよ、そんなクソみてぇな噂を華の耳に入れたクソ馬鹿は。どいつ?健司にやらすわ、そいつ」
「裕司は知らないんじゃないかなぁ…なに、健司さんに、何させるの…で、何人くらいと付き合ったの?」
「んっ…さ、3人くらい…かな?」
「えぇー、本当~?」
華は本当に楽しそうに裕司の話に聞き入ったりつっこんだりしてくる。裕司は学生時代の、ほんの数年前の自分を恨んだ。せめて一人の相手と遊んでおけ、と。それよりも、腐ってないでさっさと華に告れ!と。裕司は己を叱咤した。
「ちなみにさ、お相手の方は、第2性はなんだったの?オメガの人は、いた?」
「いや、オメガはいなかった。ベータだけ…アルファもいたかな。でも、オメガの人は、いない」
それは裕司の中での決め事だった。華に想いが届かないならいっそ別の人間で、と、多くの女性と関係を持った。ただ、オメガ相手となると、どうしても華を連想してしまう。オメガの女性を、男性も、裕司は抱くことができなかった。
「そ、そうなんだ…じゃあ、オメガは、僕が初めて?」
「え?うん」
「えー…なんか、…嬉しい…へへへ」
華が頬を染めて照れ臭そうに笑う。思わぬ展開に裕司は哺乳瓶を握りしめた。咲也はミルクを飲みきってうとうとしている。華が、裕司の初めてになれて嬉しいと赤くなって、ちょっとエロい。咲也を抱き上げて背中を叩くと、爆速でげふーっと声が出た。
「華、哺乳瓶洗ってくる」
裕司は華に咲也を託し、哺乳瓶片手にキッチンに駆け込んだ。
(これは今日…やれそうな気がする!)
裕司は哺乳瓶をしっかり手早く洗って消毒液に突っ込む。走って寝室に戻った。走りながらゴムはいくつ残っていたか思い返す。存分に数はある。
「ゴムなくなるまで寝かさねぇぞ!は…」
頭の中で考えていたつもりの言葉を口から吐き出しながら寝室に入ると、広いベッドの上で華と咲也はすやすやと寝息を立てていた。咲也をそっとベビーベッドに横たえて、華に声をかけつつ体をまさぐる。
「華」
「ん…うん、ゆうじ、…大人だねぇ……むにゃ」
「…」
華は一瞬目を開けた。ふにゃりと笑って、しかしすぐにすやすや寝息を立て始めた。安らかな寝顔に、裕司は手を止めた。
華と顔を合わせないようにしていた頃、友達の家から女性の家まで渡り歩いていた。華と初めてした日から女性の家に行くことはなくなったが、寝床を求めるなら女性の家が一番楽だった。とにかく荒れていたあの頃。あの頃の自分に、裕司は思う。
(華といられてめちゃくちゃ幸せになる。でも、時々お預けを食らってめちゃくちゃ苦しむ)
裕司は荒ぶる股間を持て余しながら、過去の自分に語りかけた。
END
「ごめんね、うるさかったね……初体験、うまく、できた?」
華はしーっと人差し指を立てて口元に当てて咲也に謝ったあと、裕司に小声で華は尋ねてくる。今日の華はなんだかちょっとエロい。興奮したいのにさっきの話題が続行していて、裕司は興奮しきれなかった。裕司は再びヤケクソになった。
「それはもう、ね。相手の方が、初めてじゃなかったんで。できました。童貞、捨てました」
「はゎーっ!大人!大人だ!ひゃーっ!」
「ちょ、落ち着いて、なんなんこれ、なんの時間!?なんでこんな話してんの、俺!」
華は小声で大興奮している。裕司も小声で華をなだめた。もう少しで咲也がミルクを飲み終える。咲也は大人しくミルクを飲み続けていた。両親が騒がしいのはもう、諦めた様子だ。
「…あのね、僕、お付き合いとか裕司が初めてだし、そういうことってどんなふうにするのかなーって、気になっちゃって。裕司はいっぱい、お相手がいたでしょ?学生時代に友達から聞いたんだ。裕司が女の人といたとか、また別の女の人と一緒にいたとか、二股かけたとか」
「お、おぉっふ…どいつよ、そんなクソみてぇな噂を華の耳に入れたクソ馬鹿は。どいつ?健司にやらすわ、そいつ」
「裕司は知らないんじゃないかなぁ…なに、健司さんに、何させるの…で、何人くらいと付き合ったの?」
「んっ…さ、3人くらい…かな?」
「えぇー、本当~?」
華は本当に楽しそうに裕司の話に聞き入ったりつっこんだりしてくる。裕司は学生時代の、ほんの数年前の自分を恨んだ。せめて一人の相手と遊んでおけ、と。それよりも、腐ってないでさっさと華に告れ!と。裕司は己を叱咤した。
「ちなみにさ、お相手の方は、第2性はなんだったの?オメガの人は、いた?」
「いや、オメガはいなかった。ベータだけ…アルファもいたかな。でも、オメガの人は、いない」
それは裕司の中での決め事だった。華に想いが届かないならいっそ別の人間で、と、多くの女性と関係を持った。ただ、オメガ相手となると、どうしても華を連想してしまう。オメガの女性を、男性も、裕司は抱くことができなかった。
「そ、そうなんだ…じゃあ、オメガは、僕が初めて?」
「え?うん」
「えー…なんか、…嬉しい…へへへ」
華が頬を染めて照れ臭そうに笑う。思わぬ展開に裕司は哺乳瓶を握りしめた。咲也はミルクを飲みきってうとうとしている。華が、裕司の初めてになれて嬉しいと赤くなって、ちょっとエロい。咲也を抱き上げて背中を叩くと、爆速でげふーっと声が出た。
「華、哺乳瓶洗ってくる」
裕司は華に咲也を託し、哺乳瓶片手にキッチンに駆け込んだ。
(これは今日…やれそうな気がする!)
裕司は哺乳瓶をしっかり手早く洗って消毒液に突っ込む。走って寝室に戻った。走りながらゴムはいくつ残っていたか思い返す。存分に数はある。
「ゴムなくなるまで寝かさねぇぞ!は…」
頭の中で考えていたつもりの言葉を口から吐き出しながら寝室に入ると、広いベッドの上で華と咲也はすやすやと寝息を立てていた。咲也をそっとベビーベッドに横たえて、華に声をかけつつ体をまさぐる。
「華」
「ん…うん、ゆうじ、…大人だねぇ……むにゃ」
「…」
華は一瞬目を開けた。ふにゃりと笑って、しかしすぐにすやすや寝息を立て始めた。安らかな寝顔に、裕司は手を止めた。
華と顔を合わせないようにしていた頃、友達の家から女性の家まで渡り歩いていた。華と初めてした日から女性の家に行くことはなくなったが、寝床を求めるなら女性の家が一番楽だった。とにかく荒れていたあの頃。あの頃の自分に、裕司は思う。
(華といられてめちゃくちゃ幸せになる。でも、時々お預けを食らってめちゃくちゃ苦しむ)
裕司は荒ぶる股間を持て余しながら、過去の自分に語りかけた。
END
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