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エピローグ 2

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「付き合ったのは、華が入院してだいぶ経ったあとなんだが…聞いてるか?」
「ん…衝撃が…すごすぎて…」
「女の家に転がり込んでたのかよ…優等生の生徒会長様がやることじゃねぇだろ」
「お前を参考にしたんだが」
「おぉい!余計なことを言…違うからな、華、健司がなんか勘違いしてるだけだから」
「ふぇ…ふぇええぇ」
「健司さんに恋人…それでそんなに、柔らかい雰囲気になっちゃうんだ…そっかぁ…裕司、ミルク」
「はいっ!…健司、余計なことを言うなよ!」
華は両手で自分の頬を包んでほぅ、と息をついた。咲也は裕司の声に驚いたのかほやほやと泣き出す。泣き出した咲也に少し焦った健司だったが、華の短い司令に裕司は元気な返事とともに頷いた。裕司は大きなバッグを持って、咲也を抱いたまま部屋を出ていった。二人の力関係を見せつけられた。
あの素行の悪かった裕司が、今は妻の命令を素直に聞いて子育てに勤しんでいる。ほんの1年ほどなのに、自分達は大きく変わってしまった。でもそれは良い方に変わっているのだろう。
「健司さん、幸せなんだね。なんだか僕も、嬉しい…彼女さんて、どんな人なの?どんなところが、好き?」
「どんな人、か…優しくて、色々教えてくれる。年上だからか大人だな。でも時々、俺よりも幼く見える時もあって可愛らしい。どんなところが好きかは、全部好きだ。あとは…」
「ま、待って、すっごい惚気けてくる…」
華は赤くなって顔を両手で覆ってしまった。もっと彼女の話を聞いてほしいが、健司は華に伝えたいことがあった。照れる華に、テーブル越しに健司は頭を下げた。
「華、今まで…色々、すまなかった」
健司はずっと、華に謝りたかった。
今まで彼女と色んな話をしてきた。家のこと、自分の第2性のこと、華のこと。特に華の話を聞いて彼女はとても怒っていた。妻となるために幼い頃から森之宮に縛りつけられていたこと、華を次の跡継ぎを産むための存在としか思っていなかったこと。時代錯誤だと憤っていた。
オメガと確定された者が、特に男性でオメガと確定された時、どれだけ大きな衝撃を受けるか。第2性の検査を行う病院で働く彼女は何人もそんな患者を見てきた。
オメガであることに喜ぶ者もいる。しかし、オメガであるという診断は望まない結果であることが多い。妊娠に限らず、発情期をコントロールしながら、アルファに対して常に危機感を持って生きなければならない。それが大きな苦痛となって絶望してしまうことも少なくない。
オメガの間に産まれた華はオメガになると思っていた。華本人も、当然オメガとしての覚悟ができているだろうと思っていた。
健司は母からの言葉を鵜呑みにして、華はこれからの森之宮のために早々に子供を産むための存在で、それが華にとって一番の幸せなのだと思い込んでいた。彼女に真っ向から否定されて、健司は思い直した。華はオメガとして生きることも妊娠も出産も、覚悟なんてできていなかった。
だから華はあの時、泣いて健司を拒絶したのではないか。
「すまなかった。怖がらせて、華のことを考えていなかった」
オメガが確定されて間もなく、華は次期当主の妻になるという前提で子を孕まされることになった。まだ学生で、学業も途中のうちに。
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