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完
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「当たり前でしょう。オメガの妻は先代の願いなのですから」
翠は口を歪めて答える。華は婚姻届をだして翠に差し出した。
「では、証人欄にサインをください」
華はペンも差し出す。翠は受け取って迷わず記入した。裕司は黙って成り行きを見守っている。
「これでいいかしら。あなた達だけなの?孫は来ていないのかしら」
「ありがとうございます。今日は僕たちだけで来ました」
「あぁそう。まぁオメガの血の入った子供なんて、見たくもないけれど。あぁ、可哀想ね、あなたのいやらしい血の混じった子供なんて…」
翠は嫌な顔で笑う。華は婚姻届をしまうと、勢いよくテーブルを拳で叩きつけた。突然の行動に裕司も翠も呆気にとられて華を見た。華は冷静に、しかし腹の底から怒りが湧き上がっている顔で翠を睨んだ。
「僕のことはいいです。でもあの子を侮辱しないで下さい。あの子の父親は裕司さんです」
翠は呆然としたまま固まっている。華がこんなに感情をあらわにする姿は翠はもちろん、裕司も初めて見た。
「あなたがあの子の命を弄んだこと、僕は絶対に許しません。今後許すつもりもありません。もう二度と、僕はあなたの元へは来ません。絶対に」
華は言い切ると立ち上がり部屋を出て行った。翠は青い顔でテーブルを見つめている。裕司は迷わず華を追い、部屋を出た。華は廊下の数メートル先でうずくまっていた。
「華!」
「…ごめんなさい。裕司のお母さんに、失礼なこと、」
華は泣いていた。裕司は首を横に振る。裕司の言いたいことも華が言ってくれた。あの子の命を弄んだ、その通りだと裕司は思った。諦めることも考えた二人にとって、翠のしたことは許されることではない。
華の手を確認すると赤くなっていた。裕司は華の手を両手で包む。
「裕司と、咲也が会いたいなら奥様に会いに行ってあげて。僕はもうここへは来ないから」
華は泣きながら真っ直ぐ前を見つめている。裕司は華が落ち着くのを待って、翠の別荘を後にした。
ここ数日、華の体調が良くない。医者に診せたところ、発情期だと診断された。
ベッドに横たわる華の様子を見ると、顔を赤らめて少しだるそうにしていた。咲也はそばのベビーベッドで寝息を立てている。部屋の中は華の匂いで充満している。裕司はアルファの抑制剤を飲んでいるのに、頭の芯が痺れていく。
「大丈夫か?」
「大丈夫。抑制剤飲んでるからかな、前に比べたら全然楽なんだけど…いっそ、おかしくなったほうがいいのに」
オメガの抑制剤を定期的に飲むことで次の発情期が軽くなると言われている。実際華はきちんと受け答えできるほど意識がはっきりしていた。
「俺は、今の方がいいけど」
華の唇に顔を寄せると、華はギュッと目と口を閉じた。顔だけではなく、全身に力がこもって震えている。緊張がこちらにも伝わって、裕司は頬が緩んだ。
「ちゅーしていいっすか?」
「いっ、いいですよ、どうぞ」
「なんで敬語なんだよ」
「わ、わかんな、んっ」
開いた唇の隙間に舌をねじこむ。緊張した華の体を少しずつ解きほぐしていく。
「痛いとこ、ないか?」
華は何度も頷く。華は体も瞳もとろけきっている。
「ぼく、を、ゆうちゃんの、番にしてくれる?」
荒い呼吸の間に華が言う。裕司は華の首筋に顔を埋めた。
「噛んでいい?」
「う、ん、っ」
華の返事を待って裕司は噛み付いた。華と裕司はやっと、番になれた。
森の中に咲く一輪の華は、今日も幸せそうに咲いている。
END
翠は口を歪めて答える。華は婚姻届をだして翠に差し出した。
「では、証人欄にサインをください」
華はペンも差し出す。翠は受け取って迷わず記入した。裕司は黙って成り行きを見守っている。
「これでいいかしら。あなた達だけなの?孫は来ていないのかしら」
「ありがとうございます。今日は僕たちだけで来ました」
「あぁそう。まぁオメガの血の入った子供なんて、見たくもないけれど。あぁ、可哀想ね、あなたのいやらしい血の混じった子供なんて…」
翠は嫌な顔で笑う。華は婚姻届をしまうと、勢いよくテーブルを拳で叩きつけた。突然の行動に裕司も翠も呆気にとられて華を見た。華は冷静に、しかし腹の底から怒りが湧き上がっている顔で翠を睨んだ。
「僕のことはいいです。でもあの子を侮辱しないで下さい。あの子の父親は裕司さんです」
翠は呆然としたまま固まっている。華がこんなに感情をあらわにする姿は翠はもちろん、裕司も初めて見た。
「あなたがあの子の命を弄んだこと、僕は絶対に許しません。今後許すつもりもありません。もう二度と、僕はあなたの元へは来ません。絶対に」
華は言い切ると立ち上がり部屋を出て行った。翠は青い顔でテーブルを見つめている。裕司は迷わず華を追い、部屋を出た。華は廊下の数メートル先でうずくまっていた。
「華!」
「…ごめんなさい。裕司のお母さんに、失礼なこと、」
華は泣いていた。裕司は首を横に振る。裕司の言いたいことも華が言ってくれた。あの子の命を弄んだ、その通りだと裕司は思った。諦めることも考えた二人にとって、翠のしたことは許されることではない。
華の手を確認すると赤くなっていた。裕司は華の手を両手で包む。
「裕司と、咲也が会いたいなら奥様に会いに行ってあげて。僕はもうここへは来ないから」
華は泣きながら真っ直ぐ前を見つめている。裕司は華が落ち着くのを待って、翠の別荘を後にした。
ここ数日、華の体調が良くない。医者に診せたところ、発情期だと診断された。
ベッドに横たわる華の様子を見ると、顔を赤らめて少しだるそうにしていた。咲也はそばのベビーベッドで寝息を立てている。部屋の中は華の匂いで充満している。裕司はアルファの抑制剤を飲んでいるのに、頭の芯が痺れていく。
「大丈夫か?」
「大丈夫。抑制剤飲んでるからかな、前に比べたら全然楽なんだけど…いっそ、おかしくなったほうがいいのに」
オメガの抑制剤を定期的に飲むことで次の発情期が軽くなると言われている。実際華はきちんと受け答えできるほど意識がはっきりしていた。
「俺は、今の方がいいけど」
華の唇に顔を寄せると、華はギュッと目と口を閉じた。顔だけではなく、全身に力がこもって震えている。緊張がこちらにも伝わって、裕司は頬が緩んだ。
「ちゅーしていいっすか?」
「いっ、いいですよ、どうぞ」
「なんで敬語なんだよ」
「わ、わかんな、んっ」
開いた唇の隙間に舌をねじこむ。緊張した華の体を少しずつ解きほぐしていく。
「痛いとこ、ないか?」
華は何度も頷く。華は体も瞳もとろけきっている。
「ぼく、を、ゆうちゃんの、番にしてくれる?」
荒い呼吸の間に華が言う。裕司は華の首筋に顔を埋めた。
「噛んでいい?」
「う、ん、っ」
華の返事を待って裕司は噛み付いた。華と裕司はやっと、番になれた。
森の中に咲く一輪の華は、今日も幸せそうに咲いている。
END
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