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途中華に遮られてしまったが、裕司は華の手を取った。病院はいつ医者や看護師が来るかわからない。二人きりになれるのは今しかないので、今伝えたかった。そもそも裕司が何を話すのか華は気づいていないだろう。きちんといろんなことを話し合おうと約束した。裕司の想いに気づいていないだろう華に、子供が産まれる前にきちんと伝えておきたかった。
「華が、好きだ」
華の手を握る手に力を込める。裕司はこんなふうに誰かに想いを伝えたことがない。声が震えそうになるのを必死にこらえる。うつむく華の表情は見えない。
「俺はずっと、華のことが好きだった。この先も、一緒にいてほしい」
華は何も言わず、沈黙が流れる。耐えられなくなった裕司は口を開く。
「まさか今日、告られると思わないよな。ごめん、驚かせて」
「…き、気づいたよ、僕…そこまで、鈍くないよ」
華は耳まで赤くなっている。
「今日、他に誰もいないとか、そういう、ことかなって。でも、恥ずかしくて、別の時が良いなって、思って」
裕司は気合が入りすぎてしまっていたようだ。華に感づかれていたことに、ちょっと気恥ずかしくなる。
「この子がいるから、次の当主の候補の子がお腹にいるから大切にされてるんだって、思ってたけど…思おうと、してたんだけど…裕司は、もっと前から僕を大切にしてくれてた。僕も、僕、裕司がいないと不安で怖くて、そばにいてくれると、すごく安心する」
気づくと裕司が握っていた手は華に強く握り返されていた。華は真っ赤な顔を上げて、泣きそうになりながら伝えてくれた。
「僕も、裕司が、好き…」
裕司も泣きそうになった。やっと通じ合えた。ずっと、幼い頃から大切で愛おしかった。もっと早く、家も性別も気にせずに華に伝えれば良かったと、何度も何度も後悔した。
「華っ、」
「待って、赤ちゃんいるから!」
感極まり覆い被さって華を抱きしめようとした裕司は華に強く止められた。ぐっとこらえた裕司は改めて華の肩を抱きしめて顔を寄せる。が、華は片手で自分の顔を隠し、片手で裕司の顔を押し返した。
「キスしたいんだけど」
「だめです」
即答されてしまった。思いの外強い華の力に押し返されて、裕司はようやく諦めた。流石に無理強いするのは良くないだろう。華は両手で顔を覆っているが、首まで赤くなってしまっている。真っ赤な首に触れると、指先から温もりが伝わってくる。くすぐったいのか身を捩る華は顔から両手を離さず、それでも逃げずにそこにいて触らせてくれた。
裕司は少し間をおいてもう一つ大切なことを伝えた。
「18になったら籍を入れて、番になりたい」
華は両手を外して裕司を見た。まだ赤い顔に浮かんだのは、同意よりも、戸惑いの色が強い表情だった。
「それは、奥様が…奥様にはもう、話した?」
「いや、あれから話をしてないし会ってもいない。こんなことをした以上、俺達がどうするかはわかってるはずだ」
裕司の子供を、森之宮の当主の子を妊娠した華は森之宮の大切な花嫁様だ。二人がどうなるか、こんな結果を招いた翠がわからないはずがない。まして子供を婚外子のままにしてはおけない。
「僕は、籍を入れたり番になるまえに、奥様と話がしたい。今は怖くて会えないけど、この子が産まれた後に」
「もうあの人には会わなくていい。華が、辛いだろ」
華は横に首を振った。どうしても翠と話がしたいらしい。
「だって奥様は裕司のお母さんだから…勝手なことは、したくない」
裕司は口を閉ざした。裕司は華と翠を会わせたくはない。しかし、華が翠に会うことを強く望んでいるのがわかる。
「…また、落ち着いたら考えよう」
まだ少し時間がある。今は華に、自分の体と子供のことに専念してほしい。華が頷くのを見て、裕司はまた飲み物を口にした。
「華が、好きだ」
華の手を握る手に力を込める。裕司はこんなふうに誰かに想いを伝えたことがない。声が震えそうになるのを必死にこらえる。うつむく華の表情は見えない。
「俺はずっと、華のことが好きだった。この先も、一緒にいてほしい」
華は何も言わず、沈黙が流れる。耐えられなくなった裕司は口を開く。
「まさか今日、告られると思わないよな。ごめん、驚かせて」
「…き、気づいたよ、僕…そこまで、鈍くないよ」
華は耳まで赤くなっている。
「今日、他に誰もいないとか、そういう、ことかなって。でも、恥ずかしくて、別の時が良いなって、思って」
裕司は気合が入りすぎてしまっていたようだ。華に感づかれていたことに、ちょっと気恥ずかしくなる。
「この子がいるから、次の当主の候補の子がお腹にいるから大切にされてるんだって、思ってたけど…思おうと、してたんだけど…裕司は、もっと前から僕を大切にしてくれてた。僕も、僕、裕司がいないと不安で怖くて、そばにいてくれると、すごく安心する」
気づくと裕司が握っていた手は華に強く握り返されていた。華は真っ赤な顔を上げて、泣きそうになりながら伝えてくれた。
「僕も、裕司が、好き…」
裕司も泣きそうになった。やっと通じ合えた。ずっと、幼い頃から大切で愛おしかった。もっと早く、家も性別も気にせずに華に伝えれば良かったと、何度も何度も後悔した。
「華っ、」
「待って、赤ちゃんいるから!」
感極まり覆い被さって華を抱きしめようとした裕司は華に強く止められた。ぐっとこらえた裕司は改めて華の肩を抱きしめて顔を寄せる。が、華は片手で自分の顔を隠し、片手で裕司の顔を押し返した。
「キスしたいんだけど」
「だめです」
即答されてしまった。思いの外強い華の力に押し返されて、裕司はようやく諦めた。流石に無理強いするのは良くないだろう。華は両手で顔を覆っているが、首まで赤くなってしまっている。真っ赤な首に触れると、指先から温もりが伝わってくる。くすぐったいのか身を捩る華は顔から両手を離さず、それでも逃げずにそこにいて触らせてくれた。
裕司は少し間をおいてもう一つ大切なことを伝えた。
「18になったら籍を入れて、番になりたい」
華は両手を外して裕司を見た。まだ赤い顔に浮かんだのは、同意よりも、戸惑いの色が強い表情だった。
「それは、奥様が…奥様にはもう、話した?」
「いや、あれから話をしてないし会ってもいない。こんなことをした以上、俺達がどうするかはわかってるはずだ」
裕司の子供を、森之宮の当主の子を妊娠した華は森之宮の大切な花嫁様だ。二人がどうなるか、こんな結果を招いた翠がわからないはずがない。まして子供を婚外子のままにしてはおけない。
「僕は、籍を入れたり番になるまえに、奥様と話がしたい。今は怖くて会えないけど、この子が産まれた後に」
「もうあの人には会わなくていい。華が、辛いだろ」
華は横に首を振った。どうしても翠と話がしたいらしい。
「だって奥様は裕司のお母さんだから…勝手なことは、したくない」
裕司は口を閉ざした。裕司は華と翠を会わせたくはない。しかし、華が翠に会うことを強く望んでいるのがわかる。
「…また、落ち着いたら考えよう」
まだ少し時間がある。今は華に、自分の体と子供のことに専念してほしい。華が頷くのを見て、裕司はまた飲み物を口にした。
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