うそつきな友情(改訂版)

あきる

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番外編 僕らの友情1

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※こちら、尾上の友人の大山くん語りでのお話となります。
大山くんのへたれっぷりが好きな作者の自己満足のための番外編となりますので、読み飛ばしていただいても、本編のストーリー上問題はありません※






 俺は悩んでいた。

 というのも、同中出身で仲のいい友人、尾上輝の様子がこのところすこぶる変だからである。
 尾上はいい奴だが、実に平凡なレールの上を標準速度で運行するようなやつで、所謂『普通』の枠組みから外れた事はない。
 
 高校に入学してから社交性はちょっちプラスになったみたいだけど、授業をほいほいサボるようなやつではなかった。

 尾上の姉、癒しのひかりさんから「テルちゃんの事、よろしくおねがいねぇ~」と頼まれている俺としては、尾上が非行に走るなんてことは全力で阻止しなければならないのだ。が、どうやら、不良になったわけではなく、尾上は今日も平凡でいい奴だ。

 最初に気付いたのは、クラスメイトの久賀が数日学校を休んだ時だった。

 いつの間にやらすっかり彼らは仲良くなっていた。
 俺や坂本クンを押しのけ、ベストフレンズ認定までされちゃった尾上と久賀。

 相方が何日も学校を休んで、しかもメールの返信がなかったら、まぁ誰だってそこそこは心配するだろう。
 別にね、それはなんら不思議じゃなかったんだよ。
 尾上は友だち思いのいい奴だ。そしてちょっぴりお節介だ。

 そして、そのお節介くんがなにかと御執心の久賀龍二くん。


 性格は軽くて遊び人の久賀だけど、あいつも基本いいヤツだと思うんだよね。
 男の俺から見てもカッコいいし、頭もいいし、スポーツも出来る。
 普通さ、三拍子揃ったら男子のやっかみを買いそうだけど、底抜けに明るくて、才能をひけらかさない所や、女子の前でも下ネタを臆せず口にしたり、いきなしカマ口調でふざけたりと…………あれ、久賀ってちょっと変人?ま、ともかく、悪い奴じゃない。男子たちからの人気も上々なんだよな。

 あれ、ハナシが逸れた。何で俺は友人たちの自慢をしている。えーと、そうそう尾上のハナシだ。

 多分だけど、確証はまったくないデスガ。
 おそらく、俺の予想が正しければ、尾上は久賀に……。

「まどろい」

 すぱっと坂もっちゃんに斬り捨てられて、繊細な心に傷を負った俺は、机をガタガタ動かして地味な反撃をしてみせた。

 季節は秋(暦の上では冬か?)
 月でいうと、11月。

 山の紅葉はあちらもこちらも、目にも楽しく彩るけれど、俺の心は疑惑と不安で一杯で、紅葉を楽しむ余裕もない。

 おっと自己紹介がまだでしたな、お嬢さん。俺の名前は皆様ご存じ大山君ですっ!
 愛と勇気をトモダチに、悪を裁く正義の

「大山。うるさい」

 せめて決めゼリフは言わせてくださいませんかね?

 友人の冷たい言葉の刃を繊細な胸で受け止めながら、今日も大山くんは頑張ってるよ、みんな!

「へー……頑張れー」

 すごくどうでも良さそうに、坂もっちゃんが言った。
 モノローグを相手に会話とか、上級者レベルだね。
 真面目なハナシ、坂本くんの洞察力はちょっとエスパーレベルでヤバイので、色々心の中のあれこれがモレモレになる。

「お前……もっとマシな表現をしろ。なんだ漏れ漏れって。きたない」

 いやぁ、何だかんだ言いつつ、相手してくれる坂もっちゃんが俺は好きだよ。
 ちなみに坂本くんの『まどろい』発言以降、俺は一言も思考を声に出してないからね。
 ガチでモノローグ相手に会話できんだよ、こいつ。
 まぁ、そんなエスパー坂本だからこそ、こんな相談というか、愚痴というか、な話もできるわけでして…………。

 俺はだらんっと机に突っ伏して、夕焼け色の空を見上げてみたりね。
 坂もっちゃんは、なんだか良くわからない本を読んでいたりね。
 尾上は、尾上はね……。

「かんばっくおがみくーん!!!!」

「黙れ!」

 体を起こして叫んだ俺の顔面に、ハードカバーがぶち当たった。
 鬼畜ドエスの称号を坂本くんに与えたいと思います。
 たぶん誰も異議を申し立てはしないだろう。

「酷いや、坂もっちゃん!鼻が低くなったらどーしてくれる。いくら温厚な大山くんでも、さすがにマジおこぷんぷんだぜ!」

「貴様はどこの女子だ。あと、死語だぞ、それは」

 そんな、ガチでげんなりしなくてもいいじゃない。俺だってな、イロイロ考えすぎて、のーみそパンク間近なんだよ?

「だってさー。だってさー。尾上がさぁー」

 机をガタガタ鳴らすと、ウルサイとまた怒られた。たぶん次は簀巻きにして窓から落とされるな。
 うん、机をガタガタいわすのはやめよーか。

 ふいっと窓の向こう側に視線を移動させると、グラウンドで行われているサッカーの練習試合が見える。
 放課後の教室には、誰もいない。
 いつもなら数人の女子が下らないハナシに花を咲かせているんだけど、今はみーんな寒さにも負けずグランド横に集合。

 開けっ放しの窓から、黄色い歓声が聞こえてくる。
 ひとりの選手が鮮やかにゴールを決めた瞬間だった。

「かっくいーねぇ。流石は我がクラスのエースだな」

 机に肘突きながら観戦し、ぽつりと呟く。すると、向かいに座る友人も窓の外に視線を移動させた。

「サッカー部員だったか、彼は」

「いんや、アイツは帰宅部。助っ人だってよー。選抜メンバーが風邪で数名ダウンしたらしくて、サッカー部員に雇われてた」

「へぇ。本試合でも通用しそうな腕前だな。帰宅部なんて勿体ないな」

「だーよーなー。ソツ無く何でもこなせちゃうトコロが、アイツの凄いところです。天は彼に二物どころか三つも四つも与えちゃったんだぜ。不公平だ」

「そして、妬みと逆恨みである日後ろからグッサリやられるのか。ご愁傷さま」

「いやいや、勝手に未来予想図確立しないで!絶対無いとは言い切らないけど」

 ま。あんなに輝いていたら、逆恨みの(逆恨みじゃなくても)ひとつやふたつ買っちゃいそうだけどな。

 俺が知る限りでは覚えねぇけど。

 そーいやー、女の子取っ替え引っ替えしてるけど、修羅場になったことはねぇな……それは矢張り。

「みーんな遊びで、本気じゃないって事だよな……あー、困ったぁー」

 大きな溜め息をついて、再び机に突っ伏した。

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