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第15話
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「そんな気になるなら、見舞いにでもいけばいーじゃね?」
見かねた大山が、真っ当な助言をくれた。しかしながら、誠に残念だがそれは出来かねる。なぜならば。
「アイツの家知らねぇーし」
机をとんとんと指で叩きながら言った。
初夏の雨の日から今日まで約4ヶ月。クラスの奴らには、マブダチ認定されてるみたいだが、実際の所、久賀との交流は学校内だけなのだ。
休みの日に「遊びに行かないか?」と誘ったことはあるが、彼女と先約があるとか、知り合いの仕事を手伝うので忙しいとかで、学校の外で会うことは滅多になかった。
今さらですが、上手くあしらわれてたって事だよな。
(それでも馬鹿みてぇに、トモダチだと思ってたんだよなぁ。俺は)
自分のおめでたさに呆れるぜ。ありえねー。
どう見ても、友情は一方通行だ。それなのにまだ、諦めきれない自分がいる。
もういいよ。お前なんてダチでも何でもねぇよと、そんな風に切り捨てる事が出来たら、どんなに楽になれるだろう。
なんで、出来ないんだろう。
ムカツク男だろ。うん、すごくムカツク。
サイテーなヤローだろ。うん、超が付くほど最低だ。
うそつきなソトヅラに騙されて、友だちゴッコをしていただけで、心の交流はナッシング。恐らく今後も望みは薄い。
それなのに、なぜ。アイツの存在を切り捨てられないのか。
どうして、こんなに、気になるんだろう。
再び机に突っ伏して、はぁと大きな溜め息を吐き出した。
「あー。落ちてるなお前。おっ!そうだ。久賀ちゃんの従兄弟に聞いてみたらいいんじゃね?久賀龍二くんは生きてますかー?って」
「縁起でもねぇ言い方止めろよ。ん?従兄弟……がいましたね、そういえば」
会ったことは無いが、この学校の同学年にいる。その従兄弟に聞けば、アイツが無事かどうかくらいなら確認できんじゃね?
よしっと小さく呟いて、椅子から立ち上がった。
「大山。久賀の従兄弟ってクラスどこ?」
「えー……と、あー……確か、おっ、そうそう。坂もっちゃんと同じクラスだ」
「坂本と同じね。じゃあ5ホームだな。俺、ちょっと行ってくる」
「行ってくるのはいいけど、昼飯は?」
「後で食べるよ」
「じゃぁ俺もついてくよ。終わったら食堂いこうぜ」
「奢らねえよ?」
「わーてるよ。ボケ」
「ボケゆーなバーカ」
じゃれ合いながら教室から出て、5ホームへと向かった。
坂本は同じ中学出身であり仲の良かったメンバーのひとりだ。
ちなみに、大山とも同中だ。
「坂もっちゃん。いてますかー?大山君が来ましたよー」
「いません。お帰り下さい」
窓際の席で、食事中の坂本が声だけ寄越した。
「坂もっちゃんっ!我が愛しのマイラバー」
「ごめん、大山。お前の暑苦しい愛はマジいらねぇ」
「愛とは情熱の炎だからな。熱くて当然だぜ!」
ぐっと顔の横で親指立てて良い笑顔をつくる大山。
因みに大山のコレはジャレ合いであって、コイツはホモじゃねぇ。こいつ「は」って区切ると自分のホモ疑惑を肯定してるみたいでイヤだな。
ううっ、俺はあくまでもホモ"の可能性もある"の段階だからっ。と、誰が聞いている訳でもないのに、心の中でひとり葛藤と言い訳を繰り返した。
「おー。そうかよ。じゃぁ暑苦しくなくても、お前の愛はいらないな。飯の邪魔だっての。あれ、尾上もいたのか、よお」
「俺って存在感薄い?ちゃんといるからね。昼飯邪魔して悪ぃな。ちょっと教えて欲しいことがあってさ」
ちらりと、坂本と昼飯を食べてる相手をみた。
びっくりだ。ちょっと居ないくらいの美人さんだった。
目とか、口とか、鼻とか、耳とかのパーツがどれも一級品でちょっと怖いくらいだ。
あまりに整い過ぎている上に、冷たさを感じさせる無表情だったので、まるで美術品の人形のようにも見えた。
坂本の彼女かな。
坂本くんはカッコイイですからねぇー。
「おいおい、尾上くん。見過ぎ、見過ぎ。いっくら友人のカノジョが可愛いからってそんなに見たら失礼だぜ」
大山がこっそりと耳元で言った。すぐ側にいる坂本たちにも充分聞こえる大きさだったけどな。
「おまえら、コイツはカノジョじゃねぇよ?」
「まったまたぁ、坂もっちゃんってばテレちゃって。例えお前にカノジョがいても、俺の愛は不滅だから。それにしても、美人さんだな。うらやましぃ」
「いや、だから」
「はじめましてーこんにちわー。坂もっちゃんの親友の大山っす」
大山。お前って凄い。
大山はすばっと右手を差し出して握手を求め、カノジョさんは無表情のままだがそれに応えてくれた。楽しい昼時の迷惑な乱入者な俺たちなのに。
良いヤツの恋人はやっぱイイヒトなんだな。羨ましい。
ぶんぶんと握った手を上下に激しく振る大山を、坂本と二人で止めた。
カノジョさんは変わらず無表情だ。どうやらコレがカノジョさんのナチュラルモードで、怒っているわけではないらしい。
「お前、騒がしくするんじゃねぇよ。大山。窓から蹴り落とすぞ。それで、何を教えればいいんだ、尾上」
「あーうん。あのさ、このクラスにさ久賀っているだろ?久賀龍二の従兄弟」
「おう、いるな」
「ちょっと訊きたいことがあってさ、紹介して」
「なんだ。告白か、尾上。先に言っとくが、史さんは男とは付き合わないぞ?」
「ちげぇーよ、馬鹿!」
ちょっと紹介してって頼んだだけで、なんで告白とか、そっち方面に話が飛ぶわけだ。ヤロー相手に告白とかないから。
あれ…………もしかして、今のは坂本君なりのジョークですか?
見かねた大山が、真っ当な助言をくれた。しかしながら、誠に残念だがそれは出来かねる。なぜならば。
「アイツの家知らねぇーし」
机をとんとんと指で叩きながら言った。
初夏の雨の日から今日まで約4ヶ月。クラスの奴らには、マブダチ認定されてるみたいだが、実際の所、久賀との交流は学校内だけなのだ。
休みの日に「遊びに行かないか?」と誘ったことはあるが、彼女と先約があるとか、知り合いの仕事を手伝うので忙しいとかで、学校の外で会うことは滅多になかった。
今さらですが、上手くあしらわれてたって事だよな。
(それでも馬鹿みてぇに、トモダチだと思ってたんだよなぁ。俺は)
自分のおめでたさに呆れるぜ。ありえねー。
どう見ても、友情は一方通行だ。それなのにまだ、諦めきれない自分がいる。
もういいよ。お前なんてダチでも何でもねぇよと、そんな風に切り捨てる事が出来たら、どんなに楽になれるだろう。
なんで、出来ないんだろう。
ムカツク男だろ。うん、すごくムカツク。
サイテーなヤローだろ。うん、超が付くほど最低だ。
うそつきなソトヅラに騙されて、友だちゴッコをしていただけで、心の交流はナッシング。恐らく今後も望みは薄い。
それなのに、なぜ。アイツの存在を切り捨てられないのか。
どうして、こんなに、気になるんだろう。
再び机に突っ伏して、はぁと大きな溜め息を吐き出した。
「あー。落ちてるなお前。おっ!そうだ。久賀ちゃんの従兄弟に聞いてみたらいいんじゃね?久賀龍二くんは生きてますかー?って」
「縁起でもねぇ言い方止めろよ。ん?従兄弟……がいましたね、そういえば」
会ったことは無いが、この学校の同学年にいる。その従兄弟に聞けば、アイツが無事かどうかくらいなら確認できんじゃね?
よしっと小さく呟いて、椅子から立ち上がった。
「大山。久賀の従兄弟ってクラスどこ?」
「えー……と、あー……確か、おっ、そうそう。坂もっちゃんと同じクラスだ」
「坂本と同じね。じゃあ5ホームだな。俺、ちょっと行ってくる」
「行ってくるのはいいけど、昼飯は?」
「後で食べるよ」
「じゃぁ俺もついてくよ。終わったら食堂いこうぜ」
「奢らねえよ?」
「わーてるよ。ボケ」
「ボケゆーなバーカ」
じゃれ合いながら教室から出て、5ホームへと向かった。
坂本は同じ中学出身であり仲の良かったメンバーのひとりだ。
ちなみに、大山とも同中だ。
「坂もっちゃん。いてますかー?大山君が来ましたよー」
「いません。お帰り下さい」
窓際の席で、食事中の坂本が声だけ寄越した。
「坂もっちゃんっ!我が愛しのマイラバー」
「ごめん、大山。お前の暑苦しい愛はマジいらねぇ」
「愛とは情熱の炎だからな。熱くて当然だぜ!」
ぐっと顔の横で親指立てて良い笑顔をつくる大山。
因みに大山のコレはジャレ合いであって、コイツはホモじゃねぇ。こいつ「は」って区切ると自分のホモ疑惑を肯定してるみたいでイヤだな。
ううっ、俺はあくまでもホモ"の可能性もある"の段階だからっ。と、誰が聞いている訳でもないのに、心の中でひとり葛藤と言い訳を繰り返した。
「おー。そうかよ。じゃぁ暑苦しくなくても、お前の愛はいらないな。飯の邪魔だっての。あれ、尾上もいたのか、よお」
「俺って存在感薄い?ちゃんといるからね。昼飯邪魔して悪ぃな。ちょっと教えて欲しいことがあってさ」
ちらりと、坂本と昼飯を食べてる相手をみた。
びっくりだ。ちょっと居ないくらいの美人さんだった。
目とか、口とか、鼻とか、耳とかのパーツがどれも一級品でちょっと怖いくらいだ。
あまりに整い過ぎている上に、冷たさを感じさせる無表情だったので、まるで美術品の人形のようにも見えた。
坂本の彼女かな。
坂本くんはカッコイイですからねぇー。
「おいおい、尾上くん。見過ぎ、見過ぎ。いっくら友人のカノジョが可愛いからってそんなに見たら失礼だぜ」
大山がこっそりと耳元で言った。すぐ側にいる坂本たちにも充分聞こえる大きさだったけどな。
「おまえら、コイツはカノジョじゃねぇよ?」
「まったまたぁ、坂もっちゃんってばテレちゃって。例えお前にカノジョがいても、俺の愛は不滅だから。それにしても、美人さんだな。うらやましぃ」
「いや、だから」
「はじめましてーこんにちわー。坂もっちゃんの親友の大山っす」
大山。お前って凄い。
大山はすばっと右手を差し出して握手を求め、カノジョさんは無表情のままだがそれに応えてくれた。楽しい昼時の迷惑な乱入者な俺たちなのに。
良いヤツの恋人はやっぱイイヒトなんだな。羨ましい。
ぶんぶんと握った手を上下に激しく振る大山を、坂本と二人で止めた。
カノジョさんは変わらず無表情だ。どうやらコレがカノジョさんのナチュラルモードで、怒っているわけではないらしい。
「お前、騒がしくするんじゃねぇよ。大山。窓から蹴り落とすぞ。それで、何を教えればいいんだ、尾上」
「あーうん。あのさ、このクラスにさ久賀っているだろ?久賀龍二の従兄弟」
「おう、いるな」
「ちょっと訊きたいことがあってさ、紹介して」
「なんだ。告白か、尾上。先に言っとくが、史さんは男とは付き合わないぞ?」
「ちげぇーよ、馬鹿!」
ちょっと紹介してって頼んだだけで、なんで告白とか、そっち方面に話が飛ぶわけだ。ヤロー相手に告白とかないから。
あれ…………もしかして、今のは坂本君なりのジョークですか?
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