発端

くろねずみ

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蠢動

体育館

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「どうしよう、トイレ行きたい」
「行ってくれば?」
「我慢する」

すぐ後ろから女の子同士の会話が聞こえてきた。
ついチラ見してしまう。
声の主の酒井優子さんと一瞬目が合う。覗きがバレた気まずさに慌てて目を逸らす俺。
酒井さんの方は照れなのか笑ったように見えた。

すぐ近くでクラスメイトの女の子がトイレを我慢していることに鼓動が速くなった。
彼女は今すぐにでもスカートを捲り上げ、パンツを下ろし、アソコを開きたいのだ。
トイレに行きたいというのはそういうことだ。

ついつい想像してしまう。
彼女がおしっこを出している姿を。

もう一度彼女の様子をうかがいたい衝動に駆られる。
けど、彼女の様子を見て正気を保つ自信もなかった。彼女とは「優子さん」と呼ぶ程度に仲良かったが、この場面で声をかけるような立場でもないような気はした。

冬の体育館で座布団もなしに座っていたらトイレにも行きたくなるだろうなとも思う。
「今日寝坊してトイレ行き損なっちゃってさ」
「え、今日一回もトイレ行ってない?」
思わず口を挟んでしまった俺。
「あー、そうなるかぁ。昨日の夜行ったきりか」
あっけらかんといった感じで答える彼女。
「だ、大丈夫?こっそり行っちゃえば?大変なことになっちゃうかもよ」
「我慢できるから大丈夫だよ」
彼女が笑った。我慢するのは身体に良くないという意味で言ったつもりだったけど。
「すごいね」
感心したような俺の言葉に彼女は満足気な表情になった。

彼女の膀胱に昨日から作り続けてきたおしっこが溜まりに溜まっていると想像すると正気でいられなくなる程ドキドキした。

「宏樹君も想像しておしっこしたくなっちゃったとか?」
彼女が余裕を見せた。


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