蒼い春も、その先も、

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蒼い春も、その先も、

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 ――――自分でも、不思議だった。
 そろそろ諦めてもいい頃だと言うのに、足が止まらない。

 不意に、椿と話をする為だけに、今まで避けてきた教室に出向いた日の事を思い出す。

 あの時感じた不可解な欲求の正体が、今なら分かる。

 明確になった愛情を胸に抱き、穂希は15回目のノックをした。
 相変わらず廊下は静かで、名前だけを名乗ってから、我知らずと息を殺した。

「……どうぞ、入って」

 一滴の雫のように、心地好い声が静寂に落ちる。
 間違いなく、椿の声だ。

 帰るつもりでいた爪先を捻り、穂希はそっとドアを開けた。
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