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春愁は君だけに
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保健室に入ると、既に佐々木は戻ってきており、黙々と書類の整理をしていた。彼女の顔色を見る限り、彼女も椿に何があったのかを知っているようだった。
横並びにベッドに座るなり、千冬が開口する。
「椿のお父さんから聞いたんだけど、なんか……事故に遭ったらしくて」
予想していたはずの言葉に、一瞬、心臓が収縮するのが分かった。
「それっていつの話?」
「たしか、先週の金曜日」
――――あの日だ。
恐らく、椿は穂希の自宅から帰る途中、事故に遭ったのだろう。
「……椿は大丈夫なの?」
普段なら言い辛そうな事も躊躇無く言葉にする千冬だが、今日ばかりはひとつひとつの返事が遅い。
適切な言い回しを探しているのか、時々唸りながら、彼女は首を傾げた。
「うーん、とりあえず大丈夫とは言ってたけど、今は会わせてもらえないかも」
「そんなに酷い怪我なの?」
また『うーん』と篭った声が漏れる。
そして千冬は、低い背を僅かに伸ばし、耳元に唇を寄せて囁いた。
「椿ね、目見えなくなっちゃったんだって」
横並びにベッドに座るなり、千冬が開口する。
「椿のお父さんから聞いたんだけど、なんか……事故に遭ったらしくて」
予想していたはずの言葉に、一瞬、心臓が収縮するのが分かった。
「それっていつの話?」
「たしか、先週の金曜日」
――――あの日だ。
恐らく、椿は穂希の自宅から帰る途中、事故に遭ったのだろう。
「……椿は大丈夫なの?」
普段なら言い辛そうな事も躊躇無く言葉にする千冬だが、今日ばかりはひとつひとつの返事が遅い。
適切な言い回しを探しているのか、時々唸りながら、彼女は首を傾げた。
「うーん、とりあえず大丈夫とは言ってたけど、今は会わせてもらえないかも」
「そんなに酷い怪我なの?」
また『うーん』と篭った声が漏れる。
そして千冬は、低い背を僅かに伸ばし、耳元に唇を寄せて囁いた。
「椿ね、目見えなくなっちゃったんだって」
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