蒼い春も、その先も、

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昨春の今より

14-2

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 椿と出会った事で、醜いばかりの体は生きる意味を手にした。

 この体に傷さえあれば、椿が愛してくれる。椿を癒す事が出来る。椿を喜ばせたい。もっと、よく見えるところに傷を付けなきゃ。

 自分の声が、脳裏で反響している。

 死の恐怖を感じ、痛みに顔を歪めても、穂希は自傷をやめなかった。自分自身が、自傷行為を促すからだ。

 同じ痛みで気持ちを落ち着かせていた日々が、懐かしい。自傷によって精神の安寧を得ていた頃とはまるで違う、強烈な痛みに手が止まる。

 だがそれも、たった一瞬の事だった。躊躇うなと言い聞かせて、何度も肉を切り裂く。

 やがて記憶が飛び、再び自我が戻ってきた時にはもう、腕は素肌を隠すほどの血に塗れていた。
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