蒼い春も、その先も、

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不治の病と春めく唇

7-1

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 今日も、保健室に穂希の姿は無い。

 佐々木にも確認したところ、学校に連絡は入っていないとのことだった。
 自宅に赴いたがベルを鳴らしても反応がなく、物音すらしなかった。

 この状況が彼是5日は続いている。

 勉強に身が入らず、学級委員長としての業務をこなすので精一杯という状態だ。
 疲労感が纏わり付く足取りで校門に向かうと、女生徒が椿を呼び止めた。

「佳澄先輩!」

 駆け寄ってきたのは、穂希の妹である朝比奈葉月だ。彼女は随分と焦った表情で、何かを訴えるような目をしていた。

「……葉月さん、どうしたの?」
「あの……今、ちょっとお時間いいですか?」

 葉月の申し出に、無言で頷く。
 大半の生徒は帰宅していた為、二人は場所を移さずにその場で話すことにした。

「お兄ちゃんと五日間くらい連絡とれなくて……。佳澄先輩、何か知りませんか?」

 一考するが、椿も同じ期間穂希と連絡を取る事が出来ず、心当たりもなかったので、首を横に振った。

「昨日僕も家に行ってみたんだけど、出なくて」
「そうですか……。お兄ちゃん大丈夫かな、合鍵作っておいたらよかったのかなぁ」

 独り言ともとれる口調だ。葉月の不安げに下がった眉尻を見て、それが無意識に零れ出たものだと心付く。

 そもそも、穂希が何故あんな状態で一人暮らしをしているのか、皆目見当がつかない。
 葉月の言動を見る限り、学校と実家とが遠いわけでもなさそうだ。

 気懸かりではあったが、無闇な憶測は何も意味を持たないことを知っていた椿は、考えをすぐに振り払った。

「今日も寄るつもりだから、もし会えたら穂希君に伝えておこうか?」
「はい、よろしくお願いします。……あと私が原因だったら『ごめん』と言っていた、とも……」

 葉月はそう言い残すと、一礼して体を翻した。
 孤独を体現化したような、寂しい笑顔だった。
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