蒼い春も、その先も、

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春宵に恋煩い

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「ミレイの話は良く分かった。だが、本当にシリウスという男は、信頼は出来るのだろうな?ミレイ」
ミレイから大魔王シリウス・リノベイションが居城を構えるという、リーベルタース城へと移住計画に何とか首を縦に振ることにした、ミレイの父であるケイネス・A・アッシュベインは、言ったのである。
「勿論よ。お父様。昔話から伝わって聞いていた大魔王とは違うわ。あの人はこの地を昔のように豊かな領土にしようとしているの」
「…昔か。もう何万年もことだろう。わしらが生まれるもっともっと昔は、ここアーノルド連邦は、どの国にも劣らない国だったというが…」
「だからこそ…今はもう廃墟になったんじゃない。他国との繋がりを断ち、雑草ばかりの暮らしになってしまったんじゃないの?お父様」
「…それもそうだ。とりあえず、わしは今から連中に話を付けて来るが、お前は一足先に戻っていなさい」
「う、うん。分かったわ…お父様。絶対に来てよ」
以前よりもどこか生気は感じられないケイオスを見ながら、ミレイは一足先にリーベルタース城へと向かったのである。


「できちゃの!にーさまのいっていたとおりだったの!」
10回連続で、フリックは召喚魔法でお気に入りのぬいぐるみをイメージしながら、出すことが出来たのだった。
「良かったな。フリック。コレでぬいぐるみ関連の召喚魔法は完璧のようだ」
「うん!よかったの!ボクね?きょーね?ネイサシュにーさまといっしょにオネンネしていい?」
「ああ。いいぞ」
普段から一人寝が出来ないフリックは、兄たちのベッドに潜り込んで寝るのが好きだったのである。
「にーさま」
「どうした?フリック」
「しゃっきからね?しゅっごくあまいにおいがしゅるの」
そうフリックが言った途端、ノックと共にアープルは、リンゴをふんだんに使ったアップルパイとアップルティーを持って来たのである。
「失礼します。わたくしはシリウス様によって生成されたばかりの人面樹、アープルと申します。シリウス様に言われてお二人におやつをお持ちしたのですが…」
「人面樹って…樹じゃなかったのか。まるで…」
「本来の姿は樹ですわ。でも、今は人間の姿をしているだけですのよ」
「しゅっごいの。ボクもシリウシュにーさまみたいにまものちゅくってみたい」
フリックは、思わずとシリウスの魔物生成に興味を持ちながら言った。
「それは出来ませんわ。魔物生成は魔王特有の能力ですのよ」
「そーなんだ…。ねー?シュライシュ(スライス)は?」
魔物ということから、スライムに触ってみたい衝動からフリックは朝から姿を見ていないことを思い出したのである。
「スライスですか?彼なら今、建造物の設計をしていますよ」
なので、今は手が離せないことから代わりに来たのだとアープルは返したのである。
「そーなんだ…」
「確かにこの地は城以外、何もないな。あるとすればプラント畑とシャガルたちの畑か」
「そうですわね。とりあえず、わたくしの焼いたアップルパイをどうぞ」
「あ、ああ。有り難く頂くとしよう」
「ボクもたべりゅー!」
普段からネイサスは甘いモノは好んで食べないものの、フリックの手前で食べない訳にもいかないことから、フリックと共にアープルの焼いたアップルパイを食べ始めたのである。





「何度数えても数が合わないべ…」
ゼノア帝国で家畜を任されている奴隷29は、明日、皇帝であるゼフィーリア・E・フィリアルド・ゼノアに献上しなければいけない卵の数を数えていた。
「昨日まで確かに100個あったべ…。どうしたんだべ?」
籠の中にあった筈の卵の数が合わないことに不審に思っていた。
「ルー…知っているべ?」
まだ、皇帝から番号を付けられていない奴隷29の息子であるルーに聞いてみた。
「ううん。ぼくは何も知らないよ」
(だって突然とスッと煙のように消えたとしか…思えないし)
「そうだべな。とりあえず、明日次第だべ」
不安になりつつも彼らは帰路に着くことにしたのだった。
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