蒼い春も、その先も、

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イタズラは桜色

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 椿の部屋は、案に違わず整然としていた。机上やベッドが殺風景なのに対し、壁面は書物で埋め尽くされている為、異様さすら感じる空間だった。

「……友達の家来るの初めて」

 呟き、すぐにハッとなる。

「……違った。恋人だ」

 訂正して微笑むと、椿は相好を崩した。色白で滑らかな頬が、仄かに赤く染まっている。

「……僕、何か淹れてくるよ。穂希君、苦手なものとかある?」
「特には」
「分かった。じゃあ、ちょっと待っててね」

 ドアが閉まると、穂希は正しく配置されている書籍を眺めた。

 一見した限りだが、傷や病気に関する本は見当たらない。辞典や参考書、哲学書や自己啓発本、文学作品などといった、小難しそうなものばかりだ。

 座り直すと、透かさずモカが走ってくる。
 その柔らかな長毛を撫でながら、穂希は自分だけが知っている椿の“秘密”について、ぼんやりと考えていた。

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