蒼い春も、その先も、

Rg

文字の大きさ
上 下
25 / 88
イタズラは桜色

4-3

しおりを挟む
 椿の部屋は、案に違わず整然としていた。机上やベッドが殺風景なのに対し、壁面は書物で埋め尽くされている為、異様さすら感じる空間だった。

「……友達の家来るの初めて」

 呟き、すぐにハッとなる。

「……違った。恋人だ」

 訂正して微笑むと、椿は相好を崩した。色白で滑らかな頬が、仄かに赤く染まっている。

「……僕、何か淹れてくるよ。穂希君、苦手なものとかある?」
「特には」
「分かった。じゃあ、ちょっと待っててね」

 ドアが閉まると、穂希は正しく配置されている書籍を眺めた。

 一見した限りだが、傷や病気に関する本は見当たらない。辞典や参考書、哲学書や自己啓発本、文学作品などといった、小難しそうなものばかりだ。

 座り直すと、透かさずモカが走ってくる。
 その柔らかな長毛を撫でながら、穂希は自分だけが知っている椿の“秘密”について、ぼんやりと考えていた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

純白のレゾン

雨水林檎
BL
《日常系BL風味義理親子(もしくは兄弟)な物語》 この関係は出会った時からだと、数えてみればもう十年余。 親子のようにもしくは兄弟のようなささいな理由を含めて、少しの雑音を聴きながら今日も二人でただ生きています。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

366日の奇跡

夏目とろ
BL
「ごめんな。お前は全校生徒からの投票で会計に決まったのにな」 「……っっ」 私立柴咲学園高等部の生徒会長は、前年度の会長の任命で決まる。その他の役員は総選挙で決まるのだが、他のメンバーはそれを快く思ってなくて……。 ※本編には出て来ませんが、主人公が会長に就任した年が閏年(365日より1日多い)と言う裏設定で、このタイトル(366日の奇跡)になりました。奇しくも今年度(2019年)がそうですよね。連載開始が4年前だから、開始時もそうだったかな。 閉鎖(施錠保存)した同名サイト『366日の奇跡』で2015年5月末に連載を開始した作品(全95頁)で、95ページまでは転載して96ページから改めて連載中(BLove、エブリスタ等でも) お問い合わせや更新状況はアトリエブログやツイッターにて (@ToroNatsume)

Please,Call My Name

叶けい
BL
アイドルグループ『star.b』最年長メンバーの桐谷大知はある日、同じグループのメンバーである櫻井悠貴の幼なじみの青年・雪村眞白と知り合う。眞白には難聴のハンディがあった。 何度も会ううちに、眞白に惹かれていく大知。 しかし、かつてアイドルに憧れた過去を持つ眞白の胸中は複雑だった。 大知の優しさに触れるうち、傷ついて頑なになっていた眞白の気持ちも少しずつ解けていく。 眞白もまた大知への想いを募らせるようになるが、素直に気持ちを伝えられない。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

それはきっと、気の迷い。

葉津緒
BL
王道転入生に親友扱いされている、気弱な平凡脇役くんが主人公。嫌われ後、総狙われ? 主人公→睦実(ムツミ) 王道転入生→珠紀(タマキ) 全寮制王道学園/美形×平凡/コメディ?

処理中です...