2 / 88
憂う春、君の視線
1-2
しおりを挟む「あんたまた何か企んでない?」
慌てて帰って行ったロバートは夜には現れず、厳しい顔をしたシアが代わりに食事を届けに来た。今すぐにでも会いたいのに、思うように会えない。連絡だってとれない。モヤモヤとした気持ちが心の中に渦巻いているからか、シアの問いかけに答える事が億劫になり、ついフイっと顔を背けてしまった。
「反省してるわけじゃなさそうだね」
私に無視されてムカついたのか、シアの口調が刺々しくなった。
「謝ればだしてくれるわけ?」
「何を謝るっていうの?」
「反省しろって言ったのは貴方なんだから貴方に聞けば?『ごめんなさい、私が可愛いばっかりに貴女の愛する人を奪ってしまったのね!!』とでも言って欲しいの?」
もっと怒らせてやろうかと思って煽ってみたが表情は変わる事なく、可哀想なものでも見るかのような目でこちらをみてきた。
「ここみが奪ったものは、それだけじゃないって、まだ気が付かないの?ユウリの代わりに聖女になりたかったのなら何で、苦しんでる人を救わなかったの?他の人が整えた環境を壊してなぜ邪魔をしたの?そのせいで…何人の人たちがなくなったとおもっているの?そういうことに気がつけって言ってるんだよ!!人の男を奪う事しか頭に無いのか?」
「私のせいじゃ無いじゃん!!病気を広げたのは私?汚い水を流したのは私?違うでしょ!オーラリアだって、医者じゃ無いくせにでしゃばらなければ苦労しなくて済んだじゃない!!人に責任なすり付けないでよ」
うまくいかないことは全部私のせい。昔からそうだった。私を好きになったせいで離婚したんだから慰謝料よこせとか、婚約破棄したんだから婚約しろだとか。彼女の代わりに家賃半分払えとか。みんな私には関係ないことなのに。今回だって、浄化しないでほったらかしにしたのはユウリ。川に汚い水を流して生活してたのは街のみんなじゃない。本当に自分勝手な人ばっかり!腹が立ってお昼が乗っていたお盆を思いっきりシアに向かって投げつける。もちろん鉄格子と電流に弾かれてお盆は黒く焦げ床に叩き落とされる。
バチバチバチン!!!
という思っていた以上の大きな音に一瞬ビックリしたがほんの少しだけ胸がスッとした。
シアは、もともと大きな目を見開いて鉄格子を見つめている。
「ローランドか?」
「知らない。私だって最近気が付いたんだから。知らずに出ようとしてたら死んでるよ。酷すぎる」
「…いや、酷すぎることはないよあんたにはこの牢獄がお似合いだよ。ここで反省もせずにご自慢の美貌が朽ちていくのを嘆いていれば良い。」
「は?」
「お手入れしていない髪は艶がなくなる」
その言葉に、無意識に自分の髪に手をやるとサラッと指が抜けるはずが直ぐにつっかえる。
「潤いが足りなければ肌は荒れる」
次に頬に手を当てれば、カサカサなのにベタベタな何とも言えない手触りを感じた。
そう言えばこの部屋には鏡がない。ロバートにこんなみっともない姿で会っていたなんて。そう思うと恥ずかしくて涙が出てきた。
「早く消えて!!もう会いたくない!!」
腕を組んだまま呆れた顔をしているシアにそう叫ぶと私はベットに突っ伏して思い切り泣いた。
いつの間にか眠ってしまっていたようで、目を覚ますとあたりは暗くシンと静まり返っていた。
塔の下からザクザクと微かに足音が聞こえ、何の気無しに窓から外を覗くとロバートが見回りでもしているのか歩いていた。それだけだったらよかったのに、若いメイドが並んで歩いていた。
モヤモヤとした嫌な気持ちが一気に湧き出してきた。
何か話をしているのか、時々顔を見合って笑っている。
腕に触れて語りかけている。
どうしよう、とられてしまう。その人は私のモノなのに!!
そう思った瞬間に胸の奥がズキンと痛んだ。
他人に好きな人を取られるって…こう言う気持ちになるんだ。
私は本当に初めて、そう思った。悲しくて悔しくて本当に嫌だ。
取らないで!!って腹の底から叫びたい。
取ってなんかないよ、勝手に私を好きになっただけでしょ。
過去の私が、鉄格子の向こうで、そう言って嘲笑った。
慌てて帰って行ったロバートは夜には現れず、厳しい顔をしたシアが代わりに食事を届けに来た。今すぐにでも会いたいのに、思うように会えない。連絡だってとれない。モヤモヤとした気持ちが心の中に渦巻いているからか、シアの問いかけに答える事が億劫になり、ついフイっと顔を背けてしまった。
「反省してるわけじゃなさそうだね」
私に無視されてムカついたのか、シアの口調が刺々しくなった。
「謝ればだしてくれるわけ?」
「何を謝るっていうの?」
「反省しろって言ったのは貴方なんだから貴方に聞けば?『ごめんなさい、私が可愛いばっかりに貴女の愛する人を奪ってしまったのね!!』とでも言って欲しいの?」
もっと怒らせてやろうかと思って煽ってみたが表情は変わる事なく、可哀想なものでも見るかのような目でこちらをみてきた。
「ここみが奪ったものは、それだけじゃないって、まだ気が付かないの?ユウリの代わりに聖女になりたかったのなら何で、苦しんでる人を救わなかったの?他の人が整えた環境を壊してなぜ邪魔をしたの?そのせいで…何人の人たちがなくなったとおもっているの?そういうことに気がつけって言ってるんだよ!!人の男を奪う事しか頭に無いのか?」
「私のせいじゃ無いじゃん!!病気を広げたのは私?汚い水を流したのは私?違うでしょ!オーラリアだって、医者じゃ無いくせにでしゃばらなければ苦労しなくて済んだじゃない!!人に責任なすり付けないでよ」
うまくいかないことは全部私のせい。昔からそうだった。私を好きになったせいで離婚したんだから慰謝料よこせとか、婚約破棄したんだから婚約しろだとか。彼女の代わりに家賃半分払えとか。みんな私には関係ないことなのに。今回だって、浄化しないでほったらかしにしたのはユウリ。川に汚い水を流して生活してたのは街のみんなじゃない。本当に自分勝手な人ばっかり!腹が立ってお昼が乗っていたお盆を思いっきりシアに向かって投げつける。もちろん鉄格子と電流に弾かれてお盆は黒く焦げ床に叩き落とされる。
バチバチバチン!!!
という思っていた以上の大きな音に一瞬ビックリしたがほんの少しだけ胸がスッとした。
シアは、もともと大きな目を見開いて鉄格子を見つめている。
「ローランドか?」
「知らない。私だって最近気が付いたんだから。知らずに出ようとしてたら死んでるよ。酷すぎる」
「…いや、酷すぎることはないよあんたにはこの牢獄がお似合いだよ。ここで反省もせずにご自慢の美貌が朽ちていくのを嘆いていれば良い。」
「は?」
「お手入れしていない髪は艶がなくなる」
その言葉に、無意識に自分の髪に手をやるとサラッと指が抜けるはずが直ぐにつっかえる。
「潤いが足りなければ肌は荒れる」
次に頬に手を当てれば、カサカサなのにベタベタな何とも言えない手触りを感じた。
そう言えばこの部屋には鏡がない。ロバートにこんなみっともない姿で会っていたなんて。そう思うと恥ずかしくて涙が出てきた。
「早く消えて!!もう会いたくない!!」
腕を組んだまま呆れた顔をしているシアにそう叫ぶと私はベットに突っ伏して思い切り泣いた。
いつの間にか眠ってしまっていたようで、目を覚ますとあたりは暗くシンと静まり返っていた。
塔の下からザクザクと微かに足音が聞こえ、何の気無しに窓から外を覗くとロバートが見回りでもしているのか歩いていた。それだけだったらよかったのに、若いメイドが並んで歩いていた。
モヤモヤとした嫌な気持ちが一気に湧き出してきた。
何か話をしているのか、時々顔を見合って笑っている。
腕に触れて語りかけている。
どうしよう、とられてしまう。その人は私のモノなのに!!
そう思った瞬間に胸の奥がズキンと痛んだ。
他人に好きな人を取られるって…こう言う気持ちになるんだ。
私は本当に初めて、そう思った。悲しくて悔しくて本当に嫌だ。
取らないで!!って腹の底から叫びたい。
取ってなんかないよ、勝手に私を好きになっただけでしょ。
過去の私が、鉄格子の向こうで、そう言って嘲笑った。
20
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
空は遠く
chatetlune
BL
素直になれないひねくれ者同士、力と佑人のこじらせ同級生ラブ♥ 高校では問題児扱いされている力と成績優秀だが過去のトラウマに縛られて殻をかぶってしまった佑人を中心に、切れ者だがあたりのいい坂本や落ちこぼれの東山や啓太らが加わり、積み重ねていく17歳の日々。すれ違いから遠のいていく距離。それでもやっぱり惹かれていく。

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。
病んでる僕は、
蒼紫
BL
『特に理由もなく、
この世界が嫌になった。
愛されたい
でも、縛られたくない
寂しいのも
めんどくさいのも
全部嫌なんだ。』
特に取り柄もなく、短気で、我儘で、それでいて臆病で繊細。
そんな少年が王道学園に転校してきた5月7日。
彼が転校してきて何もかもが、少しずつ変わっていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最初のみ三人称 その後は基本一人称です。
お知らせをお読みください。
エブリスタでも投稿してましたがこちらをメインで活動しようと思います。
(エブリスタには改訂前のものしか載せてません)
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
切なくて、恋しくて〜zielstrebige Liebe〜
水無瀬 蒼
BL
カフェオーナーである松倉湊斗(まつくらみなと)は高校生の頃から1人の人をずっと思い続けている。その相手は横家大輝(よこやだいき)で、大輝は大学を中退してドイツへサッカー留学をしていた。その後湊斗は一度も会っていないし、連絡もない。それでも、引退を決めたら迎えに来るという言葉を信じてずっと待っている。
そんなある誕生日、お店の常連であるファッションデザイナーの吉澤優馬(よしざわゆうま)に告白されーー
-------------------------------
松倉湊斗(まつくらみなと) 27歳
カフェ・ルーシェのオーナー
横家大輝(よこやだいき) 27歳
サッカー選手
吉澤優馬(よしざわゆうま) 31歳
ファッションデザイナー
-------------------------------
2024.12.21~

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる