Rely on

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birthday

23-4

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「知ってっと思うけど、昔から親に酷い事ばっかされてさ、相談センターみたいなとこに電話しても繋がらないわ突っ撥ねられるわでホント病んでて、やっと出来た彼女もどこの誰だか知らない奴に殺されるだろ? ……絶対成り上がって見下してやるって必死になってたけど、トラウマとか、発作とかで死にたくなるばっかりで、結局いいことなんてなかった」

 壮絶な人生を振り返るには、あまりにも優しすぎる声色だ。
 朔斗は俯き、鼓膜の奥に流れてゆく彼の声が、脳内で反響しているのを感じていた。

「でもさ……あの時死んどきゃよかったって、何回も思ったけど、好きなやつに殺されるんなら、……俺の今までの人生も悪くないかもな」

 響きが、途切れる。

「…………す、好き?」

 朔斗は、思わず聞き返した。
 今までのキスやセックスは、全て“薬”でしか無かったはずだ。
 言葉では言い表せない感情がドッと溢れ、額に汗が滲み出す。

「気の毒な話だよなぁ、殺したい奴に好かれるなんてさ」

 どういうことかと問い詰めようにも、混乱するあまり声が出なかった。
 ナイフに震えが伝い、昇良の白い首に、浅く切創を付ける。 
 彼は一瞬顔を顰めたが、微塵も抵抗することなく、目を瞑っていた。

「……殺す前に、ちょっと聞いてくれるか」

 シーツに血が滲む。相槌すら打たずに、これ以上は切り裂かないよう、必死に震えを抑える。

「……お前になら、毒薬を飲まされてもいい、ズタズタに切り裂かれてもいい、滅多刺しにされても、首を絞められても、……お前の、朔斗のしたいように殺してくれていい。……でもその前にひとつ、頼みごとを聞いてくれ」
「な、なに……」
「最後に、キスしてほしい」

 昇良の瞼が開く。月明かりに照らされた瞳が、遣る瀬無く潤んでいた。
 今まで散々体を求めてきた男が、最後に求めるのがキスひとつとは、全く以て可笑しな話だ。

 だが、こんな時まで彼の情に振り回されて、殺意を揺らしている自分自身の方が、もっと滑稽だ。

 好きだなんて嘘だと言ってほしい。
 愛されたと錯覚したのは、間違いなくお前の勘違いだと、罵ってほしい。

 ――――そうでもしないと、心が壊れてしまう。
 
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