Rely on

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drug

17-3【挿絵あり】

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 “薬”が効いたのか、昇良はすぐに落ち着きを取り戻した。しかし、キスが終わる様子は無い。また、ふわりと軽い口付けをされる。

「……昇良って、酒入ってないとホント優しいよね、何で最初からそうしてくれなかったの」

 昇良の胸を押し退け、不満げに問う。彼は何てことを聞くんだ、と言いたそうな顔をしていたが、渋々口を開いた。

「あれは……絶対逃がしたくなかったんだ、お前のこと。でも流石に素面じゃあんな事できねぇから、酒の力を借りて……みたいな……」

 最愛の彼女に重ねていると発言した彼の言葉に、行動が伴っていなかったことに対して、漸く合点がいく。
 手酷くする為に、敢えて行為前に酒を飲んでいたとは、驚きである。

「僕を逃したくなかったのは、……都合が良かったから?」
「まぁ、そんなところだな」
「……聞いた僕が馬鹿だった」

 そっぽを向き、悲しみとも、苛立ちともつかない感情を抑え込む。

「でも今だって、逃がそうなんて思ってない」

 内容とは裏腹に、口調は優しかった。振り向き、彼を視線で咎める。

「……それも都合が良いからだろ」
「ったく、そんな怖い目すんなよ。…………なぁ、こんな時間だけど、やろうぜ」
「すぐそういう……、答えになってないじゃんか……」

 難色を示すも、軽々と笑い飛ばされる。そして、体を軽く抱き締めたかと思えば、彼は徐に数回目のキスを落とした。

「……口開けて」

 目を逸らし、首を横に振る。
 昇良は腕を解き、左手で朔斗の歯列を強引に抉じ開けた。合わさった口唇の隙間から、温かくて柔らかいものが潜り込んでくる。


 舌を噛んだらまずいという意識から自然と唇が開き、不覚にも、さらに奥へと進むことを許してしまう。

 はっきりとした意識で味わう舌は滑らかに口中を這い、規則正しい呼吸を奪い取ってゆく。
 拒絶は全てくぐもった声となり、虚しく空気に溶けた。

 二人の口唇が離れた時にはもう、双方の呼吸は速く深くなっていた。
 面映さで、顔が火照っているのが分かる。ふと目が合った瞬間、昇良は見せ付けるように濡れた唇を舐めずった。

「男同士でも案外気持ちいいだろ、朔斗」

 え、と湿った口元も拭わずに目を瞠る。

「……今、名前」

 言い終える前に、背中がベッドに沈み込む。馬乗りになった昇良の瞳は、いやに優しい。
 テーブルランプを消し、一呼吸おいて、再び唇を重ねる。
 先程よりも容赦なく、けれど丁寧に舌は歯牙や粘膜を探った。


 二人は深夜の静寂を背に、いつ終わるともしれない、まるでそれ自体が交合なのだと錯覚するほどの猛然たる接吻に溺れた。
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