Rely on

drug

17-1

　二月も中旬に差し掛かり、窓の外には雪が降り始めた。何の気なしに眺めていると、突然視界がカーテンに遮断される。

「雪は嫌いなんだ、昔を思い出す」
「あ……ごめん、なさい」

　彼に何があったのかは、容易に想像出来る。恐らく、極寒の中、何時間か放置された経験があるのだろう。

「……昇良は、なんでそんなに立派に生きられるの？」

　無責任な親の元で育ったと言う共通点を感じさせないほどの実績に、そんな疑問を抱く。

「仕事も出来て、友人もたくさんいて……」

　彼は腕を組んで一考した。

「今まで俺を見捨ててきた奴を、見下すためだよ。その気持ちだけで、何でもしてきた。……理由と言ったらそれしかねぇな」

　生かさず殺さずの酷烈な環境があったからこその意気地は、時々虚勢にも見える。

　そして、人生の勝ち組になった代償とは何かを、今もナイトテーブルの上に散乱する大量の錠剤が静かに物語っていた。



　昇良を知るたびに、羨望、憎悪、憐憫といった感情が渦巻く。
　復讐を悟らせない為の、上辺だけの愛情だと自分に言い聞かせても、どうも腑に落ちない。

　全てを奪った相手に絆されて、自分の本心すら見失っているなんて、惨めにも程がある。

　全部、昇良が悪い。
　朔斗は何度も何度も、心の中でそう唱えた。