Rely on

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impulse

15-1

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 凡そ二ヶ月ぶりに吸う外の空気は、軟禁生活が始まる前とは比べ物にならないほどに冷え切っている。

 いつも、必要以上に防寒された部屋に居た事もあり、身体がなかなか寒さに慣れてくれない。

 さらに追い討ちをかけるように、服の隙間から入ってくる冷風が体温を奪ってゆく。昇良に借りた服が若干大きいようだ。無意識に、肩が縮こまる。

「寒い?」
「ま、まぁ」
「……ふーん」

 素っ気無い返事のあと、不意に手を取られる。そのまま昇良は、繋いだままの手を自身のダウンジャケットのポケットに入れ込んだ。

「……ちょ、何やって……」
「こうでもしないと逃げるだろ」

 悪戯な笑みが、何を意味しているのか見当がつかない。
 同時に、脳裏で鋭く火花が散る。

「……逃げないよ」

 もう、あんなことされたくないし、とは敢えて言わなかった。

「そもそも、外に出ようなんて言ったのは昇良じゃないか」
「はは、そうだった」
「とにかく手、離して。……男同士で、恥ずかしいよ……」

 強引に手を解き、コートのポケットの中に隠す。

「お前、何でそんなに男同士とか嫌がるの」
「何でって、普通……じゃないからだよ。変じゃないか、同性で付き合うとか、手を繋ぐとか……」
「頭かてぇのな、今時お前みたいな奴がいるなんてびっくりだわ」

 正直、朔斗自身も同性間での行為を何故こんなにも敬遠しているのか分かっていない。
 ただ、漠然とした“同性愛は異常な文化”という先入観に囚われている自覚はあった。

「でも、そんなこと言っといてセックスしてくれるのはなんで?」

 出し抜けに尋ねられ、進み掛けていた足が立ち止まる。周囲を確認し、薄く唇を開ける。

「……それは……、前言ったじゃんか、昇良が、辛そうだからって……、……別にセックスが好きになったとか、そんなんじゃないから……」
「そ、俺は好きだけどね、抱くのも抱かれるのも」

 平気な顔で言ってのける昇良に、思わず言葉を失う。彼自身にも男を受け入れた経験があるとは、驚きだ。それも、一度や二度といった話では無さそうだ。
 何故か気恥ずかしくなり、必死に返す言葉を探す。

「まぁさつきを思い出せるから抱く方が好きだけど」
「……好きって、忘れられるからって言ってたじゃないか。……ていうか外でやめろよそんな話」
「お前口悪くなったな」
「昇良に言われたくない」

 足早に歩き始めるが、目的地が分からないのですぐに歩みを止める。
 昇良が、厭きれているような、恍惚としているような、どちらともつかない溜め息を落とした。
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