29 / 74
dore
9-2
しおりを挟む
――――その時、勢いよく寝室のドアが開いた。
驚きのあまり、硬直する。
振り向いた先には、出勤したはずの昇良がいた。
昇良が焦燥したまま、近付いてくる。慌てて窓枠を降りて、咄嗟に顔を庇う。
「……寒いだろ、窓閉めろ」
そう言って、彼はぎこちなく窓に手を掛けた。明らかに狼狽している。初めて見る表情に、あんぐりとしてしまう。
勢いよく窓を閉め、カーテンで光を遮断し、昇良は深い溜め息を吐いた。
「面倒事増やすな」
苛立ちがひしひしと伝わってくる。
ナイトテーブルの抽斗から数枚の錠剤シートを引き抜くと、彼は何も言わず出て行った。
張り詰めていた緊張が一気に解け、全身の力が抜けた。
僕には、自死すら許されないのか。
「はは……、もう、全部どうでもいい」
自嘲的な語気とは裏腹に、瞳からは大粒の涙が溢れ出していた。
カーテン越しに見える空が、鮮やかなオレンジ色に染まっている。どうやら、泣き疲れて窓辺で眠っていたらしい。
再度窓枠に上ろうと手を掛けたが、身も心も疲弊していて、そこから先に踏み出せすことが出来ない。
朔斗は体を翻し、おぼろげな足取りでキッチンに向かった。
驚きのあまり、硬直する。
振り向いた先には、出勤したはずの昇良がいた。
昇良が焦燥したまま、近付いてくる。慌てて窓枠を降りて、咄嗟に顔を庇う。
「……寒いだろ、窓閉めろ」
そう言って、彼はぎこちなく窓に手を掛けた。明らかに狼狽している。初めて見る表情に、あんぐりとしてしまう。
勢いよく窓を閉め、カーテンで光を遮断し、昇良は深い溜め息を吐いた。
「面倒事増やすな」
苛立ちがひしひしと伝わってくる。
ナイトテーブルの抽斗から数枚の錠剤シートを引き抜くと、彼は何も言わず出て行った。
張り詰めていた緊張が一気に解け、全身の力が抜けた。
僕には、自死すら許されないのか。
「はは……、もう、全部どうでもいい」
自嘲的な語気とは裏腹に、瞳からは大粒の涙が溢れ出していた。
カーテン越しに見える空が、鮮やかなオレンジ色に染まっている。どうやら、泣き疲れて窓辺で眠っていたらしい。
再度窓枠に上ろうと手を掛けたが、身も心も疲弊していて、そこから先に踏み出せすことが出来ない。
朔斗は体を翻し、おぼろげな足取りでキッチンに向かった。
75
お気に入りに追加
512
あなたにおすすめの小説
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
大親友に監禁される話
だいたい石田
BL
孝之が大親友の正人の家にお泊りにいくことになった。
目覚めるとそこは大型犬用の檻だった。
R描写はありません。
トイレでないところで小用をするシーンがあります。
※この作品はピクシブにて別名義にて投稿した小説を手直ししたものです。
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる