Rely on

trigger

6-2

　ゴトッと、寝室に鈍い音が響いた。
　ヘッドボードに強打した頭を抱える。闇雲に逃げ惑っていた弾みでぶつけてしまったのだ。
　一気に威勢を失った朔斗の耳に、嘲笑が落とされた。

「無駄な抵抗するからそんなことになるんだよ。さっさと四つん這いになれ、ほら、早く」

　脱出は諦めたものの、自我が死んだわけではない。ゆえに、昇良との性行為に素直に応じる事は出来なかった。

　反抗的に顔を背けるが、軽々と体を翻され、呆気なく手首を掴まれる。一瞬の隙も与えずに腹に跨った昇良が、深い溜め息を吐いた。

「お前さぁ、普段は大人しいくせにセックスの前になるといつもこうだよなぁ」

　ヘッドボードに手を伸ばし、昇良はローションを手に取る。

「は、離せ！　こんなの、もう嫌だ！」

　力では勝てないと分かっていても、本能的に抗う事をやめられない。
　身の危険が迫っている中、服従など出来るわけがない。

「いいから大人しくしろ、俺は暴力は嫌いなんだよ」
「君のセックスだって暴力みたいなものじゃないか！！！」

　その時、昇良が息を詰めたのが分かった。

　目を凝らすが、暗がりでは表情が見えない。
　曖昧模糊とした状況が、急速に恐怖心を煽る。

「あ、あ、ごめ、なさい……」

　慌てて謝るも、歯切れが悪くなってしまう。つい感情に任せて発言した事を、今更後悔する。
　命乞いするように、同じ言葉を何度も繰り返していると、不意に体から重みが消えた。

「今日はもういい……、萎えた……」

　ふらりと立ち上がり、昇良が寝室を出て行く。

　夢かと疑うほどの予想外の展開に、拍子抜けする。何が起きたのかと当惑したまま、ひりつく手首を呆然と摩った。