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prey
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グラスにワインを注ぐ優雅な音が、恐れていた時間が迫っていることを通告する。
腹を据えるにはまだ早い。しかし、希望らしきものも見当たらない。
苦慮しているうちに、ドアが開き、またしても照明が消される。消灯は、始まりの合図だ。
毎度の如く圧し掛かってきた昇良の肩を跳ね除け、震える唇を開く。
「あ、あの……ちょっと気になってたんですけど、さつきって、誰なんですか……?」
本当は、気になってなんかいない。
時間稼ぎをするための質問に過ぎなかった。
酩酊状態さえ冷めてしまえば、乱暴な扱いは回避出来る。そんな稚拙な魂胆だ。
だが、朔斗の企みは月明かりに照らし出された昇良の鋭い眼光によって、揉み消されてしまう。
「あ、すみません……! ごめんなさい……!」
反射的に手で顔を庇うが、無防備になった体躯に目を付けられ、案の定脱がされる。
「なんで……! 何でこんな事するんですか!」
「さて、何でだろうなぁ」
まるで答える気の無い音吐が吐息と共に迫り、唇が喉元を覆う。
彼の整った歯列が当たり、緊張で体が思うように動かない。
「や、だ……ッ、アアッ」
体の奥に沈み込む指が、さらに抵抗力を奪い取る。随分と手馴れた様子で胸を愛撫しながら、同時に内側を解してゆく。
一本、二本、そして三本と指が増えてゆき、その度に異物感は強くなった。
指が去ったかと思えば、間髪を容れず膝を折り曲げられ、その上に昇良が覆い被さる。
「……挿れるよ、さつき」
「い、……嫌だ! も、やめ……て……!」
彼が口にする名前が自分のものではないことは、この際どうでもいい。男に犯されるくらいなら、数発顔を殴られる方がマシだとさえ思う。
故に拒絶を辞めない口を、強引にシーツが塞いだ。
「ふっ、……!?」
発語どころか、息すら出来ない。苦しさに手足をバタつかせる朔斗に構わず、昇良は腰を押し付けた。
「む、ぐっ……ッンン!」
一気に貫かれた体が悲鳴を上げ、ガクガクと震えている。
幸か不幸か、呼吸を阻害していたシーツにより、舌は噛まずに済んだようだ。
抵抗が弱まってきた頃、漸く口元を押さえ付けていた昇良の手が去り、朔斗はシーツを吐き出した。
激しく咳き込む度に、結合部が痛み、呻吟する。
「ご、ごめん……な、もうちょっと、……慣らしてあげたらよかったな……」
泥酔している昇良の声は、絶頂に近付くほどに優しくなる。深く抉る腰の動きに似つかわしくない、赤子に語りかけるような包容力のある声だ。
素面との格差に、頭がついていかない。
今が現実であるのかも不確かになり始めた時、昇良が顔を埋めた肩に、激痛が走った。
朦朧としていた意識は一気に引き戻され、反射的に昇良の髪を掴む。
筋がぶちぶちと千切れる感覚で、漸く状況を把握する。
「いっ、痛い、痛い! 離して!!」
朔斗の訴えには目もくれず、彼は何度も何度も、首や肩の柔らかな部分に噛み付いた。
歯が立てられ、食い込み、腸壁を擦るそれとはまた違う痛みに、頭が混乱し始める。
逃げ場を無くした手が昇良の腕を掴んだ。食いつかれる度に朔斗も爪を立て、秩序も理性も吹き飛んでゆく様相はまるで獣の交尾のようであった。
腹を据えるにはまだ早い。しかし、希望らしきものも見当たらない。
苦慮しているうちに、ドアが開き、またしても照明が消される。消灯は、始まりの合図だ。
毎度の如く圧し掛かってきた昇良の肩を跳ね除け、震える唇を開く。
「あ、あの……ちょっと気になってたんですけど、さつきって、誰なんですか……?」
本当は、気になってなんかいない。
時間稼ぎをするための質問に過ぎなかった。
酩酊状態さえ冷めてしまえば、乱暴な扱いは回避出来る。そんな稚拙な魂胆だ。
だが、朔斗の企みは月明かりに照らし出された昇良の鋭い眼光によって、揉み消されてしまう。
「あ、すみません……! ごめんなさい……!」
反射的に手で顔を庇うが、無防備になった体躯に目を付けられ、案の定脱がされる。
「なんで……! 何でこんな事するんですか!」
「さて、何でだろうなぁ」
まるで答える気の無い音吐が吐息と共に迫り、唇が喉元を覆う。
彼の整った歯列が当たり、緊張で体が思うように動かない。
「や、だ……ッ、アアッ」
体の奥に沈み込む指が、さらに抵抗力を奪い取る。随分と手馴れた様子で胸を愛撫しながら、同時に内側を解してゆく。
一本、二本、そして三本と指が増えてゆき、その度に異物感は強くなった。
指が去ったかと思えば、間髪を容れず膝を折り曲げられ、その上に昇良が覆い被さる。
「……挿れるよ、さつき」
「い、……嫌だ! も、やめ……て……!」
彼が口にする名前が自分のものではないことは、この際どうでもいい。男に犯されるくらいなら、数発顔を殴られる方がマシだとさえ思う。
故に拒絶を辞めない口を、強引にシーツが塞いだ。
「ふっ、……!?」
発語どころか、息すら出来ない。苦しさに手足をバタつかせる朔斗に構わず、昇良は腰を押し付けた。
「む、ぐっ……ッンン!」
一気に貫かれた体が悲鳴を上げ、ガクガクと震えている。
幸か不幸か、呼吸を阻害していたシーツにより、舌は噛まずに済んだようだ。
抵抗が弱まってきた頃、漸く口元を押さえ付けていた昇良の手が去り、朔斗はシーツを吐き出した。
激しく咳き込む度に、結合部が痛み、呻吟する。
「ご、ごめん……な、もうちょっと、……慣らしてあげたらよかったな……」
泥酔している昇良の声は、絶頂に近付くほどに優しくなる。深く抉る腰の動きに似つかわしくない、赤子に語りかけるような包容力のある声だ。
素面との格差に、頭がついていかない。
今が現実であるのかも不確かになり始めた時、昇良が顔を埋めた肩に、激痛が走った。
朦朧としていた意識は一気に引き戻され、反射的に昇良の髪を掴む。
筋がぶちぶちと千切れる感覚で、漸く状況を把握する。
「いっ、痛い、痛い! 離して!!」
朔斗の訴えには目もくれず、彼は何度も何度も、首や肩の柔らかな部分に噛み付いた。
歯が立てられ、食い込み、腸壁を擦るそれとはまた違う痛みに、頭が混乱し始める。
逃げ場を無くした手が昇良の腕を掴んだ。食いつかれる度に朔斗も爪を立て、秩序も理性も吹き飛んでゆく様相はまるで獣の交尾のようであった。
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