Rely on

begin

1-7

　ぼんやりとした視界に、薄暗い天井を映す。
　朔斗は鉛のように重い体を何とか持ち上げ、放心状態で辺りを見回した。

　広い寝室。柔らかなベッド。――――隣には、半裸で眠る男。

　途端に本能が呼び起こされ逃走を図るが、下半身の痛みに阻止され、断念する。

　床にはロープが落ちている。恐る恐る手首に視線を落とせば、赤黒くくっきりとした痣が飛び込んできた。

　途中で意識が飛んだようで、あれがいつ終わりを迎えたのかは分からないが、この部屋の惨状や体の痛みが悪夢ではなかったという事を証明している。

　気が付けば、涙が頬を伝っていた。
　男としての自尊心を奪われたことが悔しかった。

「……うるせぇな、朝から何泣いてんだよ……」

　不快なほど耳に残っているその声に、肩を震わせる。
　気だるそうに欠伸をし、昇良は仰向けに寝たまま頭の後ろで腕を組んだ。

「まだまだこれからだって言うのに、初めからそんなに泣かれちゃ困るな」
「……え？」

　思わず昇良の方を見ると、視線が絡んだ。自分と同じ、生気の無い目だった。

「まさか一回きりだと思ってる？」

　言葉を失う。彼の意図を読み取った脳が、焦燥している。

「……そんなんだったらわざわざ仲間集めてお前みたいな面白みのない奴連れてこねぇよ」

　不気味に微笑んだ昇良が、徐に上体を起こした。
　貫かれた瞬間の痛みが蘇り、全身に悪寒が走る。そんな朔斗の肩を、昇良は奇妙なほどに優しい手つきで撫でた。

「教えてやったろ？　お前を選んだ理由」

　戦慄に心が波打ち、ガチガチと歯が鳴る。
　無意識にシーツを握れば、手首の痣が微かに疼いた。
　硬直する朔斗にぐっと顔を寄せた昇良が、耳元で囁く。

「これからよろしくな」