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第五話
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非常口に到着するなり、『あ!』という声がする。
ピクトさんは嬉しそうに俺の名前を呼び、客室に案内するように、誘導灯の下へと俺を誘った。
「おはよ、今日は何してたの?」
時刻は既に14時を回っていたが、何となくそんな挨拶をすると、ピクトさんがふふ、と微笑む。恐らくその笑みに、意味は無い。
「うーんとね、歌を歌っていたよ!」
授業中に微かに聞こえてきたハミングは、やはりピクトさんだったか。
「……それは怖がられるからやめなって」
忠告し、持参した小袋の菓子を開ける。
噂になるくらい歌うことが好きな彼のことだから気を落としてしまうだろうか、と心配したが、誘導灯からいつもの笑い声が響き、俺は胸を撫で下ろした。
「三宅くんがお話してくれるから、もうどうでもいいよ」
予想外の言葉に、目を瞠る。
「たった一人、話を聞いてくれる友達がいれば僕はそれでいいんだ」
その声色を聞いて、嘘だとは思わなかった。
表情は見えないが、何故だか、ピクトさんの気持ちがひしひしと伝わってくる。
「……なんて! らしくないこと言っちゃったー! 事実だから良いんだけどね!」
どこまでも素直で真っ直ぐなピクトさんに、思わず口元が綻んだ。
ピクトさんは嬉しそうに俺の名前を呼び、客室に案内するように、誘導灯の下へと俺を誘った。
「おはよ、今日は何してたの?」
時刻は既に14時を回っていたが、何となくそんな挨拶をすると、ピクトさんがふふ、と微笑む。恐らくその笑みに、意味は無い。
「うーんとね、歌を歌っていたよ!」
授業中に微かに聞こえてきたハミングは、やはりピクトさんだったか。
「……それは怖がられるからやめなって」
忠告し、持参した小袋の菓子を開ける。
噂になるくらい歌うことが好きな彼のことだから気を落としてしまうだろうか、と心配したが、誘導灯からいつもの笑い声が響き、俺は胸を撫で下ろした。
「三宅くんがお話してくれるから、もうどうでもいいよ」
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「たった一人、話を聞いてくれる友達がいれば僕はそれでいいんだ」
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表情は見えないが、何故だか、ピクトさんの気持ちがひしひしと伝わってくる。
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