Rely on -each other-

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ordeal

8-3

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 タクシーで病院に向かう。翌朝になると痛みは格段に強くなり、右足に体重を掛けられなくなっていた。補助がないと歩けないので、結果的に昂良に迷惑をかけることになってしまった事を、今更悔しく思う。
 待合室で昂良と待っている間も、会話をしないせいでそればかり考える始末だ。自身の名前を呼ばれるのをこんなにも待ち侘びたのは、人生で初めてかもしれない。

「天川さん、天川朔斗さん。2番のお部屋にお入りください」
「あ、行ってくる」
「ついてこうか?」
「大丈夫、すぐそこだから。……ありがとう」

 いつもなら一緒に行くと駄々を捏ねる昂良も、今日はやけに大人しく頷いた。
 だが診察が終わって、ギプスを巻いた姿を見るや否や、昂良は慌ただしく駆け寄ってきた。
 昂良の肩を借りて歩き、長椅子に腰を下ろすなり、彼が顔を覗き込んでくる。

「どうだった? 治るって?」
「うん、治るって。捻挫だった」

 昨夜からずっと顔に貼り付いていた昂良の焦燥が、漸く溶けていく。脱力したように項垂れて、彼は溜め息を吐いた。

「ヒヤヒヤさせんなよ~……」
「……ごめん」
「謝んなって。……俺も怒って悪かった」
「いいよ、もう」

 昂良は何も言わなかった。彼の表情を見る限り、足が完治するまでは一件落着とは言えないようだ。
 これから治るまでの間、小さな困難がいくつも降りかかるのだろう。些些たる不安が、心の奥底から湧き出てくるのが分かった。



 片足が不自由なだけで、家に帰るのも一苦労だ。バランスひとつ取ることの出来ない自分が、情けなくなる。
 気にするなと言いたくても、これ程までに顕著な処置をされては口にするのも憚られる。案の定、昂良の視線は頑丈に巻かれたギプスに釘付けだ。

「それいつまで付けとくの?」
「4週間くらい付けとけば良いって」
「4週間!?」

 端正な顔に似合わないオーバーリアクションが何だか笑える。昂良はあー、と残念そうに肩を落とした。

「4週間もセックス出来ないのか……」
「あぁ……そこ?」

 朔斗は思わず嘆息を漏らした。怪我をした人間に対しての反応とは思えない。況してや、片思いする相手に。

 やっぱりセックスかよ。

 尤もな不満を漏らしそうになる口を閉じ、彼の肩を借りることもせず、重い右足を持ち上げた。

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