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affection
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「実はこの間、俺も両親に会ったんだ。……あ、さつきのな」
一瞬強張った自分の頬に触れながら、当たり障りのない相槌を打つ。
「さつきの親さんはすごく良い人でさ、今でも俺のこと気に掛けてくれるんだ」
しかしその慈愛の深さが、実の両親の酷薄な様を顕著にするようで、愛情を受ければ受けるほどに、昂良は幼い記憶をありありと追想してしまう事となっていた。突如たる披歴に、朔斗は彼がさつきの墓参から帰宅した日の事を思い出していた。
「だからあの日……」
「あぁ、勝手に落ち込んでて悪かったな。どうしても話す気になれなくて」
「いや、大丈夫……」
不器用な言葉が零れ、黙り込んでしまう。
恐らく惰性でしていたであろうハグを忘れてしまうくらいの負荷だったのだ。口に出来ないのも、おかしくはない。当然、謝る必要も無い。
そう言った意味を全て含んだ『大丈夫』に、昂良は物寂しく微笑む。
「あいつらさ、朔斗の父さんと母さんも、なんで俺たちを産んだんだろな」
きっと昂良の中に、求めている返答など無いのだろう。にも関わらず、何故そんなに答えにくいことばかり投げ掛けてくるんだと、我にも無く腹を立てる。
無論、昂良の気持ちは痛いくらい分かる。何度も共感し噛み締めた想いが、現在抱える不可解な愛情の類を育て上げたのは間違いない。
現実が理想とかけ離れていたが為に人権を無視され、昂良に至ってはヒト以下の扱いを受けてきたのだ。到底許せるわけがない。
両親との血の繋がりには虫唾が走る。なんで産んだんだと責め立ててやりたくなる。つい数時間前、殺したいとさえ思った。
自身でも信じ難い現状に引き摺られるほどに、互いにとって彼らの存在は文字通り“悪魔”のようだ。
――――それでも君は。
昂良。それほどに素晴らしい名前を貰ったのだから、君は生まれた時は確かに祝福され、愛されていたのだ。
そんなちゃちな台詞で、彼が生まれてきたことを肯定したくなってしまう。
一瞬強張った自分の頬に触れながら、当たり障りのない相槌を打つ。
「さつきの親さんはすごく良い人でさ、今でも俺のこと気に掛けてくれるんだ」
しかしその慈愛の深さが、実の両親の酷薄な様を顕著にするようで、愛情を受ければ受けるほどに、昂良は幼い記憶をありありと追想してしまう事となっていた。突如たる披歴に、朔斗は彼がさつきの墓参から帰宅した日の事を思い出していた。
「だからあの日……」
「あぁ、勝手に落ち込んでて悪かったな。どうしても話す気になれなくて」
「いや、大丈夫……」
不器用な言葉が零れ、黙り込んでしまう。
恐らく惰性でしていたであろうハグを忘れてしまうくらいの負荷だったのだ。口に出来ないのも、おかしくはない。当然、謝る必要も無い。
そう言った意味を全て含んだ『大丈夫』に、昂良は物寂しく微笑む。
「あいつらさ、朔斗の父さんと母さんも、なんで俺たちを産んだんだろな」
きっと昂良の中に、求めている返答など無いのだろう。にも関わらず、何故そんなに答えにくいことばかり投げ掛けてくるんだと、我にも無く腹を立てる。
無論、昂良の気持ちは痛いくらい分かる。何度も共感し噛み締めた想いが、現在抱える不可解な愛情の類を育て上げたのは間違いない。
現実が理想とかけ離れていたが為に人権を無視され、昂良に至ってはヒト以下の扱いを受けてきたのだ。到底許せるわけがない。
両親との血の繋がりには虫唾が走る。なんで産んだんだと責め立ててやりたくなる。つい数時間前、殺したいとさえ思った。
自身でも信じ難い現状に引き摺られるほどに、互いにとって彼らの存在は文字通り“悪魔”のようだ。
――――それでも君は。
昂良。それほどに素晴らしい名前を貰ったのだから、君は生まれた時は確かに祝福され、愛されていたのだ。
そんなちゃちな台詞で、彼が生まれてきたことを肯定したくなってしまう。
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