Rely on -each other-

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omen

5-4

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 昂良の呼吸は、明らかに正常では無かった。金縛りにでもあったかのように立ち尽くす彼の腕を引っ張って、物陰に連れていく。
 朔斗は自ら受け持った大量の荷物を下ろすと、蹲る昂良に目線を合わせた。

「昂良、薬飲む?」
「……いや、いい」
「このまま帰ろうか。家にあるものでなんか出来ると思うし……それか一旦帰って僕が買い物行ってもいいし」

 彼を気遣う傍ら、どうやっても避け切ることの出来ない疎らな人の視線に惑う。

「……歩けそう?」

 自分の為にも、昂良の為にも、一刻も早く帰りたい。

 その焦りから、右手が昂良の背中に伸びる。落ち着かせる為に摩ってやろうと思ったのだが、何を勘違いしたのか、そのまま抱き締められてしまった。

 耳元で喘息のようなか細い呼吸音が聞こえてきては、振り払いたくても振り払えない。見ないでくれ、気付かないでくれという言葉ばかりが胸を満たし、彼を心配する余裕すら無くなってくる。

 朔斗は不安と羞恥が入り混じる心を殺して、この時間が終わるのをただひたすらに待ち侘びた。

 


「着いたよ昂良、入って」

 ふらつく彼を玄関に押し込み、鍵を閉める。朔斗は一息吐くことすら無いまま、昂良をトイレに連行した。

 一旦は落ち着いたと思われた体調も自宅に近付く程に悪化して、到着する頃にはもう、嘔吐寸前というところまで来ていた。

 それなのに彼は、便器を抱えたまま頻りにえずくだけで、一向に吐こうとしない。

「吐いた方が楽になるから吐きなよ」

 背中を摩ってやると、昂良は弱々しく首を横に振った。そんな動きでさえ、今の彼にとっては生易しくはないようだ。
 何か言いたげに口を動かしているが、発語したいのか嘔吐したいのかも分からない。

「出てた方がいい……?」

 反応が無くなる。ただ一生懸命に、ふーっと長い息を繰り返している。

「……我慢しなくていいよ」
「ウッ……」

 ついに限界に達したのか、昂良は背中を丸めて便器の中に吐き出した。咄嗟に口元に宛てがった右手は吐瀉物に塗れ、その汚れた手で胸を押さえながら激しく咳き込む姿からは、さすがに目を背けたくなる。

 実妹の美叶とは似ても似つかない広い背中を、やはり彼女に重ねてしまう。

 朔斗は胸の苦しさを感じながらも、昂良の背中を穏やかな掌で撫で続けた。何度も何度も、美叶にそうしていたように。
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