Rely on -each other-

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 どんなに激しく抱かれたとしても、行為が終われば全て元通りだ。潤滑剤や体液を拭った体には、余韻ひとつ残らない。強いて言うなら、昂良が入っていたところに僅かな違和感があるくらいだが、これにもすっかり慣れてしまった。

 不応期を抜け出した朔斗は、冴えた脳内に昼間の記憶を手繰り寄せた。
 さつきが亡くなった後のことは、出会った頃の昂良を思えばいくらか想像がつく。酒と性に明け暮れて、家に帰れば一人この広いベッドで眠ったのだと思うと、どうにも切ない。

 自分自身や人生を変えるほど愛した人物が、突然この世を去ったなら。

 ぼんやりと、薄暗い天井を眺める。

 きっとあの時と似た感情を、昂良も抱いたはずだ。愛し、支え、守りたいと望んだ美叶が自ら命を絶った時と――――。

「そろそろ風呂行く?」

 ふと尋ねられ、隣に目を遣る。彼の乱れた前髪が、月色に照らされて一層艶やかに輝いていた。数分前、潤んだ視界の中で捉えた昂良の顔を、我知らずと補正をかけて瞼に浮かべる。

「一緒に入るか? 俺が全部洗ってやるぞ」
「いや、今日は大丈夫。僕もうちょっと休んでるから先入ってきて」

 何も言わずに立ち上がったかと思えば、昂良はすぐにベッドに腰掛けた。無防備に投げ出した手を取られ、そのまま握られる。

「入る前にキスしたい」
「……キスだけだよ」

 親指で口を開けるよう促され、唇に隙間を作れば、なめらかに舌が滑り込んでくる。虚脱状態が終わるまで、きっと彼は待っていたのだ。恐らくこのキスは、入浴というスキンシップの代替案だろう。

 彼は行為中は口内を隅々まで愛撫してくるのだが、今は柔軟に舌と舌を触れ合わせることに専念する。徐々に分泌される唾液が、顎を伝い落ちた。

「もう入ってきなよ、……これ以上出来ない」

 念を押すと昂良は一言謝って、漸く浴室へと身を運んだ。ティッシュで口元を拭い、再び天井に向き直る。

 昂良の事を知れば知るほど、重なるものが増えていく。その度に胸に滲む切なさや温かさは、同時に懐かしさでもある。昂良がどんな意味でも“特別な存在”に変わりつつあるのは言うに及ばない。

 キスもセックスもさほど嫌と思わなくなったのは、ただ慣れただけかもしれない。
 好きなのかもしれない。でも、勘違いかもしれない。

 この茫漠たる感情を愛情と言い切るには、まだ早い。
 
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