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know
4-4【※挿絵あり】
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居間に入るなり、昂良と目が合う。ルームウェアに着替えた姿を見る限り、彼は随分前に帰宅していたらしい。
「あれ、早かったね」
「え? 普通だと思うけど」
朔斗は全く気にしていなかった時計を見遣った。家を出てから、一時間も経過している。恐らく半分以上は、衣料品コーナーで時間を潰した。その事実に、ひとり呆れる。
「朔斗はどこ行ってたの?」
「醤油買いに行ってた」
返答しながら荷物を置き、コートを脱ぐ。昂良は『それは何?』と言わんばかりにショッピングバッグを凝視した。
「あ、コレ。あげる」
贈り物を抜き取り、昂良に差し出す。彼は驚いた様子で、物品と朔斗の顔を交互に見つめた。朔斗が受け取るよう促すと、漸く昂良はそれを手に取った。彼の表情がパッと輝いたのは、数秒後の事だった。
「……え! え! 俺に買ってきてくれたの? クリスマスプレゼント? 開けていい?」
「うん」
昂良は意外にも几帳面で、包装紙を丁寧に剥がしていく。ダウンベストの入った箱が顔を出し、再び彼の瞳に光が落ちてくる。
「えっ、これ良いやつじゃん! 今めちゃくちゃ話題になってるやつ! オンラインでも売り切れてたんだよー」
「昨日入荷したばっかだって」
「うわー、嬉しすぎる。すごいぴったりだし」
早々とダウンベストを装着し、昂良は嬉しそうに機能性を体感した。やはり彼は、時々子供のようになる。与えたものを着て純粋に喜ぶ姿に、朔斗は微かな満足感を覚えた。
「でも何で?」
「欲しいって言ってたから」
「高かっただろ?」
まぁ、と曖昧に返す。長い迷いがあったとは言え、自身で選択をして支払った事が未だに不思議になるくらいの値段だった。
「朔斗ありがとう、マジで嬉しい」
昂良は口元を綻ばせて、朔斗を抱き締めた。ヒーターユニットが発熱したダウンベストの暖かさは、朔斗の体にまで伝わってくる。終わらない抱擁で体温が上昇し、半ば強引に腕を擦り抜けた。
「……暑い」
「悪い悪い、嬉しくて。なぁ、キスしていい?」
「良いけど暑いからハグはしないでね」
二つ返事の後、大きな両掌に頬が包まれる。軽く唇が触れ合い、啄むように何度も落とされるキスを、朔斗は佇立したまま受け入れた。
「あれ、早かったね」
「え? 普通だと思うけど」
朔斗は全く気にしていなかった時計を見遣った。家を出てから、一時間も経過している。恐らく半分以上は、衣料品コーナーで時間を潰した。その事実に、ひとり呆れる。
「朔斗はどこ行ってたの?」
「醤油買いに行ってた」
返答しながら荷物を置き、コートを脱ぐ。昂良は『それは何?』と言わんばかりにショッピングバッグを凝視した。
「あ、コレ。あげる」
贈り物を抜き取り、昂良に差し出す。彼は驚いた様子で、物品と朔斗の顔を交互に見つめた。朔斗が受け取るよう促すと、漸く昂良はそれを手に取った。彼の表情がパッと輝いたのは、数秒後の事だった。
「……え! え! 俺に買ってきてくれたの? クリスマスプレゼント? 開けていい?」
「うん」
昂良は意外にも几帳面で、包装紙を丁寧に剥がしていく。ダウンベストの入った箱が顔を出し、再び彼の瞳に光が落ちてくる。
「えっ、これ良いやつじゃん! 今めちゃくちゃ話題になってるやつ! オンラインでも売り切れてたんだよー」
「昨日入荷したばっかだって」
「うわー、嬉しすぎる。すごいぴったりだし」
早々とダウンベストを装着し、昂良は嬉しそうに機能性を体感した。やはり彼は、時々子供のようになる。与えたものを着て純粋に喜ぶ姿に、朔斗は微かな満足感を覚えた。
「でも何で?」
「欲しいって言ってたから」
「高かっただろ?」
まぁ、と曖昧に返す。長い迷いがあったとは言え、自身で選択をして支払った事が未だに不思議になるくらいの値段だった。
「朔斗ありがとう、マジで嬉しい」
昂良は口元を綻ばせて、朔斗を抱き締めた。ヒーターユニットが発熱したダウンベストの暖かさは、朔斗の体にまで伝わってくる。終わらない抱擁で体温が上昇し、半ば強引に腕を擦り抜けた。
「……暑い」
「悪い悪い、嬉しくて。なぁ、キスしていい?」
「良いけど暑いからハグはしないでね」
二つ返事の後、大きな両掌に頬が包まれる。軽く唇が触れ合い、啄むように何度も落とされるキスを、朔斗は佇立したまま受け入れた。
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