23 / 70
interrogative
3-2
しおりを挟む
あらぬ誤解を招かないよう、昂良と距離をとって歩く。家に戻れば指を絡ませ、肌を密着させ、体を繋げるのに、外ではこの有様だ。異様だと自覚しながらも、未だに“二人きりでない時は普通であること”を意識してしまう。
コスメショップの紙袋片手に前を歩く彼が、振り向いて徐に立ち止まる。朔斗も反射的に足を止めたが、すぐに駆け寄った。
「昼飯、ここで食べてく?」
「……あぁ、うん。そうしよっか」
「フードコートで良い?」
頷き、足並みを揃える。つい癖で、両手はポケットに隠した。
特に希望がなかった為フードコートに同行したが、正直なところ店の数が多い故に、選定するのに苦労する。
選ぶのが苦手、という事に気付いたのも昂良と暮らし始めてからだ。
それまでは朔斗の人生に選択肢と言うものが存在しなかった。
衣類は親から与えられるものしか着なかった。外食先では一番安価なものを選ぶのが、暗黙のルールだった。こっそり買ったおもちゃを売り飛ばされたことで、手に入れるだけ無駄だと知った。なので、特段欲しいものも無かった。
選択肢がたくさんある場合、一番安価なものを選ぶ。そのルールは朔斗の中に未だ残り続けている。
一通り店舗を見終わると、朔斗はハンバーガーチェーン店へと歩いた。美味しさと安さを売りにしているハンバーガー屋で、平日であるにも関わらず列が出来ている。巧みな客捌きのおかげで、すぐに順番が来た。ハンバーガーをひとつワンコインで購入し、予め二人で決めておいた席に戻る。
「あれ? 朔斗そんだけ?」
トレーに乗ったハンバーガーを見て、昂良が目を丸くした。スープ付きのローストビーフ丼を食べようとしている人間からすれば、たしかに不思議な光景なのかもしれない。
「……俺のちょっと食べる? あ、もしかしてデザート食べるために少なくしてるとか?」
「ううん、そうじゃなくて……何か食べれればそれで良いから」
「どうせならもっと美味しいもの食べれば良いのに。朔斗にはもう自由に使える金があるんだからさ」
酸鼻な過去を背負う昂良の言葉には、何処となく重みがある。
幼い頃から暗黙のルールに従ってきた朔斗は、いつしかそのルールに疑問すら持たなくなっていた。
しかし、昂良の言う通り、今は自由に使える金がある。親の監視下では無いのだから、そもそもルールは必要ない。欲が無くたって、経験を積むと思えば良い。
発言した相手は昂良だったからこその説得力に、朔斗は何度か頷いて、もう一度フードコートを見回した。
コスメショップの紙袋片手に前を歩く彼が、振り向いて徐に立ち止まる。朔斗も反射的に足を止めたが、すぐに駆け寄った。
「昼飯、ここで食べてく?」
「……あぁ、うん。そうしよっか」
「フードコートで良い?」
頷き、足並みを揃える。つい癖で、両手はポケットに隠した。
特に希望がなかった為フードコートに同行したが、正直なところ店の数が多い故に、選定するのに苦労する。
選ぶのが苦手、という事に気付いたのも昂良と暮らし始めてからだ。
それまでは朔斗の人生に選択肢と言うものが存在しなかった。
衣類は親から与えられるものしか着なかった。外食先では一番安価なものを選ぶのが、暗黙のルールだった。こっそり買ったおもちゃを売り飛ばされたことで、手に入れるだけ無駄だと知った。なので、特段欲しいものも無かった。
選択肢がたくさんある場合、一番安価なものを選ぶ。そのルールは朔斗の中に未だ残り続けている。
一通り店舗を見終わると、朔斗はハンバーガーチェーン店へと歩いた。美味しさと安さを売りにしているハンバーガー屋で、平日であるにも関わらず列が出来ている。巧みな客捌きのおかげで、すぐに順番が来た。ハンバーガーをひとつワンコインで購入し、予め二人で決めておいた席に戻る。
「あれ? 朔斗そんだけ?」
トレーに乗ったハンバーガーを見て、昂良が目を丸くした。スープ付きのローストビーフ丼を食べようとしている人間からすれば、たしかに不思議な光景なのかもしれない。
「……俺のちょっと食べる? あ、もしかしてデザート食べるために少なくしてるとか?」
「ううん、そうじゃなくて……何か食べれればそれで良いから」
「どうせならもっと美味しいもの食べれば良いのに。朔斗にはもう自由に使える金があるんだからさ」
酸鼻な過去を背負う昂良の言葉には、何処となく重みがある。
幼い頃から暗黙のルールに従ってきた朔斗は、いつしかそのルールに疑問すら持たなくなっていた。
しかし、昂良の言う通り、今は自由に使える金がある。親の監視下では無いのだから、そもそもルールは必要ない。欲が無くたって、経験を積むと思えば良い。
発言した相手は昂良だったからこその説得力に、朔斗は何度か頷いて、もう一度フードコートを見回した。
47
お気に入りに追加
245
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。


臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる