Rely on -each other-

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interrogative

3-1

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 外は12月とは思えないほどに暖かい。そんな中で朔斗は、凡そ三日おきに更新されるキスマークを隠す為に、渋々タートルネックセーターを着て歩いていた。
 夏季のように見える箇所へのキスは禁止しなければいけないかもしれない。そう思ったのは束の間で、出かける頻度が少ないから許してやるかと一人問題を片付ける。

 一方で、隣を歩く昂良は真冬の装いだった。彼との温度感覚の違いにはいつも驚くし、共同生活においては困ることも意外と多い。

 今日はいつもよりあったかいよね。

 言いかけて、昂良の首元を覆うマフラーに目が留まる。同時に視界に入ってきた、極めて眉目秀麗な横顔を数秒間見つめてしまった。

 端正な地顔に薄化粧を施している今日は、いつもよりも見栄えがする。

 気付かれる前に視線を逸らそうとした時、疑問符を含んだ男の声が昂良の名を呼んだ。目的地である大型ショッピングモールの、正門が見えてきた頃であった。

「あ、やっぱり昂良くんだ」
「……誠さん!」

 近付いてきたのは50代後半と見られる男で、穏やかな目尻に何本か皺を刻んでいた。白髪混じりのオールバックや、グレーネイビーのスーツはきちんと整えられており、温和さの中に知性を感じられる。

「そちらの方はお友達?」
「あー……まぁ」

 昂良が言葉を濁す。男は顔に笑みを湛えたまま、それ以上質問を提示する事はなかった。

「この人、佐野さのまことさん。俺が前働いてたとこの社長」

 突然の紹介に、朔斗は控えめに一礼した。佐野も軽く頭を下げて、昂良に向き直る。

 ごく自然な流れで始まったのは、久しく会った人間がするような、ありきたりな会話だ。しかし、年の離れた上司と元部下とは到底思えない、和気藹々とした雰囲気に包まれている。スキンシップも含めて平凡な話をする姿は、まるで親子だ。

 異様な光景に『二人は一線を超えた仲なのではないか』と疑ってしまう。ついこの間まで多種多様な人々と性関係を持っていた昂良の事だ。可能性としては十分に有り得る。

「元気そうで本当に安心したよ。良ければまた食事でもどうかな」
「全然良いよ、また連絡する」

 そう言って昂良が佐野に手を振ったところで、やっと推測を打ち切る。
 佐野と昂良の関係を知ったところで何かが進展するわけでもない。そう自分に言い聞かせて、朔斗は足早に正門へ向かった。
 
 
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