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haze
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ドレープカーテンの隙間から、柔らかな光が差し込む。
自然と瞼の裏が明るくなり、朔斗は静寂の中目を覚ました。時間を確認すると同時に、自身がベッドの右側に寄っていることに気付く。
昨夜よりもベッドが広く感じるのは、寝室を満たす自然光の所為なのか、それとも別の感情的な原因があるのか。
おぼろげな思考を巡らせながら、何をするでも無くシーツの上で過ごす。
普段なら昂良が隣に居て、スマートフォンかPCを触っている。コーヒーを飲んでいたり、朔斗の顔をじっと見つめている事もある。
男の寝顔なんかの何が面白いのかと疑問に思っていた日々も、いつしか過ぎ去った。
日常と化していたはずの事柄の特殊性が、ひとりになった事で再び強調され、食事も、家事も、キスも、セックスも、と朔斗はあれこれ思考を巡らせた。
――――目覚めてすぐに考えることがそんな事なのかと、自分に呆れる。
いつもそばにあったものが、それも凄まじい存在感を放つものが無いのだから、寂寥さを感じるのはきっと人として当然の事だ。それらしい理由をこじつけて、漸く布団を抜け出した。
子供の頃、大きな家に住んで贅沢な暮らしをする事を夢見ていた。
それは世間並みに生きている子供が見るような、あまりにも平凡な夢だった。
大人になるにつれやがて消滅していく野望を、朔斗は最近まで抱き続けていた。そして、思い掛けず実現した。
だがその夢は、誰かと時間や空間を共有してこそ、真の実現と言えるらしい。
孤独な人間が抱え切れない贅沢を手に入れたところで、人生ごと持ち腐れになるだけだ。ここに来て、それに気付いてしまった。
自然と瞼の裏が明るくなり、朔斗は静寂の中目を覚ました。時間を確認すると同時に、自身がベッドの右側に寄っていることに気付く。
昨夜よりもベッドが広く感じるのは、寝室を満たす自然光の所為なのか、それとも別の感情的な原因があるのか。
おぼろげな思考を巡らせながら、何をするでも無くシーツの上で過ごす。
普段なら昂良が隣に居て、スマートフォンかPCを触っている。コーヒーを飲んでいたり、朔斗の顔をじっと見つめている事もある。
男の寝顔なんかの何が面白いのかと疑問に思っていた日々も、いつしか過ぎ去った。
日常と化していたはずの事柄の特殊性が、ひとりになった事で再び強調され、食事も、家事も、キスも、セックスも、と朔斗はあれこれ思考を巡らせた。
――――目覚めてすぐに考えることがそんな事なのかと、自分に呆れる。
いつもそばにあったものが、それも凄まじい存在感を放つものが無いのだから、寂寥さを感じるのはきっと人として当然の事だ。それらしい理由をこじつけて、漸く布団を抜け出した。
子供の頃、大きな家に住んで贅沢な暮らしをする事を夢見ていた。
それは世間並みに生きている子供が見るような、あまりにも平凡な夢だった。
大人になるにつれやがて消滅していく野望を、朔斗は最近まで抱き続けていた。そして、思い掛けず実現した。
だがその夢は、誰かと時間や空間を共有してこそ、真の実現と言えるらしい。
孤独な人間が抱え切れない贅沢を手に入れたところで、人生ごと持ち腐れになるだけだ。ここに来て、それに気付いてしまった。
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