俺の知らなかった世界

暁エネル

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新学期

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卒業式が終わりさくらも咲き始めた頃


俺はまた龍の家へと向かっていた


学校が休みになると俺はゆっくりと起き


母さんが用意してくれた朝ご飯を1人で食べ龍の家へ


俺が龍の部屋に着いた頃


ドタドタと廊下を走って来る足音に


龍の部屋のフスマが勢い良く開いた


「ねぇ~見て・・・」


そう言いながら渚がセーラー服を着て龍の部屋へと入って来た


「渚 何度も同じ事を言わせるな・・・ ドタドタ足音がうるさい・・・」


「そんな事より見てよ・・・ 似合う?」


「制服を見せに来てくれたのか やっぱセーラー服だよなぁ~渚似合うよ」


「ありがとう真彦・・・」


「似合うも何もねぇ~だろう・・・ 制服なんだから 着ねぇ~とならねぇ~んだからよ」


龍の言葉に渚は怒った様に言い返していた


「龍 そんなのわかってる でも初めての制服しかもセーラー服なんだ 少しぐらい褒めてくれてもいいじゃん ケチ・・・」


「登校前に汚れるぞ・・・」


「龍のバカ・・・」


そう言って渚が勢い良くフスマを閉めた


「相変わらずスゲーなぁ~」


「龍・・・」


「真彦悪い・・・」


「俺じゃなくて渚に言いなよ」


「渚ならほっといても大丈夫だ」


「いや渚は明るく振る舞ってるけど 実際のところ不安なんだと思うよ 中学生って言う未知の世界にさぁ~」


「俺にはどうする事も出来ねぇ~よ 渚が不安でも友達を作ってやる事も出来ねぇ~しなぁ~」


「そうだけど・・・」



(龍ってたまに冷たい時があるよなぁ~ でも龍の言う通りなんだけど・・・)



「真彦」


「ううん?」


「前に身体を鍛えるみたいな事言ってたよなぁ~」


「うん それがどうかしたの?」


「俺もするかなぁ~と思って・・・」



(えっ冗談じゃねぇ~ 龍に強くなられたら俺がかなわねぇ~よ)



「ウソだよなぁ~?」


「何で真彦に俺がウソつかねぇ~とならねぇ~んだよ」


「いやいや 今さら龍が身体を鍛える事はねぇ~だろう・・・ もう十分強いし身体も大きくなってる・・・」


「真彦に言われてもなぁ~」


「龍は十分だよホントに・・・」



(マジで勘弁してほしい・・・ 龍が強くなってどうするんだよ・・・)



俺は違う話を龍に振って気をそらしていた





その日は朝からバタバタと騒がしかった


忍の入園式と渚の入学式が重なり


俺はそんな中 一足早くに家を出た



(こうも重なるとはなぁ~)



忍の入園式には母親ではなく世話係が行く事になった



(まぁ~当然と言えば当然だよなぁ~ 母親が行ってもなぁ~忍がかわいそうだ・・・)



忍も母親よりもいつも一緒に居る世話係の方が安心する


一方渚の入学式には母親が行く事になった


中学生の入学式は行きと帰りしか母親と一緒にならない


なので渚には何も問題はなく帰って来る


俺は真彦との待ち合わせ場所に早く着いていた





(あぁ~神様 龍と今度こそ 同じクラスにして下さい マジで頼むよ・・・)



俺は歩きながら神様にお願いをしていた


俺が道を曲がると龍の姿があった



(マジか・・・ 2年生になってからの初登校日に龍が俺の事を待っている 今日はひょっとしてひょっとするかもしれねぇ~ぞ・・・)



俺は大きく手を振り龍の名前を呼んでいた


「龍 おはよう早いね」


「家の中がバタバタでなぁ~特に渚が・・・ うるさいから早く出て来た」


「そうだったのかぁ~」



(渚の様子が目に浮かぶ・・・)



「忍は大丈夫そう?」


「あぁ~大丈夫だろう・・・ 世話係が一緒だから 母親だったら泣いていたかもだけどなぁ~」


龍はそう言って笑いながら歩いていた


校門に着いた俺達はクラス替えのプリントが渡された



(真彦は1組から見るだろう ならば俺は6組から見ていこう)



(龍と同じクラスにお願いだよ・・・)



「真彦 行くぞ」


「ちょっと待ってまだ俺自分のクラス・・・」


「真彦も5組だ」


「えっ? 俺もって・・・」


俺は慌てて持っていたプリントを見た



(5組 龍の名前・・・ 俺の名前が あった・・・)



俺は天を仰いでいた



(あぁ~神様ありがとうございます・・・)



「真彦 行くぞ」


「あっうん」



(ヤッター よ~しよしよし龍と同じクラス これで学校に居る時も放課後も龍と一緒に居られる・・・)



俺は階段を上りながら手を握り締め ガッツポーズを繰り返していた


教室に入ると席順が黒板に書いてあった


あいうえお順で当然 俺と龍は席が離れた


俺はカバンを置きに自分の席へ


置きながら振り返ると女子が龍の所へ



(何だよあの女 油断も隙もねぇ~じゃんかよ・・・)



俺はそう思いながら龍の席へと向かった





真彦が俺から離れ自分の席へと座ると


1年生の時に同じクラスだった女子が俺の所へとやって来た


「藤堂君 また同じクラスだねよろしく・・・ 私 藤堂君に前から聞きたかった事があるんだけどいいかなぁ~」


俺はその女子に顔を向けていた


「何だよ」


「ねぇ~藤堂君は毎日どれくらい勉強しているの?」


そこへ真彦がやって来た


「龍に何か用かよ・・・」


龍の所へ来た女子が俺の言葉にひるんだ


「真彦 1年の時に同じクラスだったんだ」



(だとしてもだ 気に入らねぇ~)



「藤堂君またあとで・・・」


そう言って女子は自分の席へ



(何なんだよ・・・ 用が無いのに龍に近くなよ・・・ またとかはねぇ~から・・・)



俺はその女を睨み付けていた


「俺がどれくらい勉強しているのか聞きたかったらしい・・・」


「仲が良かったのか?あの女と・・・」


「いや 多分話をしたのは初めてだ」


「えっ 何だよそれ・・・」



(もしかして龍の事を狙ってたのか? 俺が龍の傍に居る限りそうはさせねぇ~ぞ・・・)



俺は先生が来るまで龍の席を離れなかった





始業式のあと入学式が執り行われた


新1年生が俺達在校生の前に座る


俺は渚が出て来るのを待っていた


渚は楽しそうに前の友達とニコニコしながら体育館へと入って来た



(良かった渚はもう友達が出来たんだなぁ~ 龍も安心してるかもなぁ~)



俺はそう思いながら入学式を終えていた


俺達在校生は教室へ


教科書を貰いそのまま下校となった


「龍は渚を待つのか?」


「冗談だろう・・・ 母親の顔は見たくねぇ~から帰る」


「そっか じゃ~帰ろう・・・」


俺は一応さっきの女子に目を向けていた


龍に近づくなよって意味を込めて


俺と龍は昇降口へと向かい学校を出た


「それにしても奇跡だよなぁ~ まさか龍と同じクラスだとはなぁ~」


「あぁ~俺も驚いた」



(ホント神様ありがとう・・・ これで龍に近づくやからから遠ざけられる・・・)



「体育も運動会もモロモロ龍と一緒なんだよなぁ~」


「体育も運動会もってなぁ~ まぁ~1年間よろしく・・・」


龍は歩きながらそう言った


「珍しいなぁ~ 龍がそういう事言うなんて・・・」


「俺だってなぁ~ 何だよ悪いかよ・・・」


龍が照れた様に顔をそむけた


「いや 俺の方こそ1年間よろしく・・・」


俺はそう言って立ち止まって右手を出した


「バカ そんなこっぱずかしい事が出来るかよ・・・ 真彦は置いて行く」


そう言って龍は早足で歩き出していた



(ヤベ~龍がカワイイ・・・)



「あっ龍ちょっと待ってよ・・・」


俺はそう言いながら龍を追いかけていた





ドタドタと足音がして龍の部屋のフスマが開いた


渚がセーラー服のまま龍の部屋へとやって来た


「龍 渚3組になった・・・」


そう言って渚は俺の隣に座った


「渚いきなり開けるな それに入学式に出たんだわかってる・・・」


「へ~龍は見てたんだ・・・ そんで龍は何組?真彦は?」


「俺と真彦は5組だ」


「え~同じクラスなの・・・ ズル・・・」


「ズルくねぇ~だろう何も・・・」



(龍がムキになってるカワイイ・・・)



「渚はもう友達が出来たみたいだなぁ~」


「えっ何で真彦わかったの? 驚かせようと思ってたのに・・・」


渚が俺の方を向いた


「入学式で前の子と楽しそうに体育館に入って来たから・・・」


「うん すぐ友達になった・・・」


「良かったなぁ~ せいぜいこの家の事がバレない様にしろよ」


「それねぇ~ みんなやっぱり怖がるよねぇ~」


渚の顔が曇っていた


俺は話を変えようと忍の話を切り出した


「忍は朝大丈夫だった?」


「世話係が一緒だったからなぁ~ 問題ねぇ~んじゃねぇ~の?」


「うん渚も大丈夫だと思うよ 渚は馴染めなかったけど 忍は意外と根性あるしねぇ~」


「渚はそろそろそのセーラー服を着替えて来た方がいいんじゃねぇ~のか・・・」


龍にそう言われ渚は立ち上がった


「うん 学校で会ったらよろしくね真彦・・・ 龍は渚の事をムシしそうだけどね・・・」


そう言いながら渚は龍の部屋を出て行った


「嵐みたいなヤツだなぁ~まったく・・・」


「龍は渚に救われているところがあるんじゃない?」


「まぁ~ムダに明るい性格は この家には必要なんだろうけどなぁ~」


龍はそう言いながら自分の手を見ていた



(俺がいつかこの家の役に立つ人間になれたらなぁ~)



俺はそう思いながら龍の細くてキレイな手を見ていた


(つづく)


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