悠と榎本

暁エネル

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今日は榎本が僕のバイト先へ来る日


榎本は朝練がありホームルームが始まる時間ギリギリに 教室へと友達と滑り込む


榎本はいつもの様に僕に手を軽くあげた





(榎本の笑顔を見ると僕も元気が出る)





僕は毎朝そう思い榎本を見ている


「毎朝 慌ただしいね榎本君」


僕の隣で三谷君がそう言った






放課後


「悠帰ろう」


榎本が僕の所へ


「ホント仲いいね 何かさぁ~」


その時三谷君が榎本に近づいて 最後の方は僕には聞こえなかった


「悠早く行こう」


「あっうん 三谷君また明日」


僕は三谷君にそう言って榎本を追いかけた





(三谷の野郎 悠には聞こえない様に壊すって言いやがった しかも俺に直接だ あの野郎マジでムカつく やれるものならやってみろ 出来る訳がねぇ~俺と悠は壊されねぇ~何があっても・・・)





「榎本待って・・・」


榎本はどんどん進んで行って やっと僕が榎本の隣へ追いついた


「榎本 三谷君に何か言われたの?」





(三谷君に気にさわる事言われたんだ 何を言われたんだろう・・・)





僕は榎本の顔を覗き込んだ


「悠 いや何でもねぇ~よ それよりスゲー悠のバイト先楽しみ」


榎本は笑顔でそう言った





(三谷になんかかまってる暇はねぇ~ 俺は悠だけを見ていればいいんだ)





僕は榎本にそう言われ反対にドキドキしていた





(もうバイトに行くのは慣れたはずなのに 何で今日はこんなにドキドキするんだ 榎本が一緒だから前に榎本が僕の作ったドリンクを飲みたいって言ったから きっと両方だ・・・)





僕と榎本は電車を降り 喫茶店のドアを開けた


いつの様にカランカランと音が鳴り マスターと幸子さんの笑顔が見えた


僕の後ろから榎本が顔を出していた




僕はカウンター席まで進んだ


「マスター幸子さん この間話をした榎本です」


榎本は僕の隣で頭を下げた


「ちわっす」





(優しそうな人達で良かった そんなに広くない店内だ 今日は悠の様子が見られるスゲー楽しみ)





「まぁー良く来てくれたわね 座って・・・」


「はい」


「それにしても大きいのねぇ~」


幸子さんはそう言いながら おしぼりとお水を榎本の前に出した


「確かサッカー部だって聞いてるけどキーパーかい?」


マスターはそう言いながら幸子さんの隣へ


「俺そんな反射神経ないっすよ 俺のポジションはフォワードです」


マスターと幸子さんは顔を見合わせた


「すまないね榎本君 私らサッカーあんまり詳しくなくてね フォワードって?」


「あぁ~まぁ~点取り役です」




僕はドキドキも手伝って榎本の事を マスターと幸子さんに話た


「榎本は凄いんです ボールを操るテクニックって言うかぁ~ ボールが榎本から離れなくて榎本の蹴ったボールが 次々とゴールに吸い込まれて行くんです本当に凄いんですよ」


僕は榎本の話を終えて我に返った


「あっすいません 僕着替えて来ます」


僕は慌てて奥へ






(嫌だ僕・・・ 僕はここへ榎本の話をしに来たんじゃないのに・・・)





(悠が俺の事を ヤベ~めっちゃ嬉しい)





マスターと幸子さんは俺を見てこう言った


「悠君も友達の前だと違うのねぇ~」


「あぁ~ 悠君の素顔が少し見れたなぁ~ 榎本君ありがとう悠君は学校でもあんなにいい子なのかなぁ~」


「あっはい 俺それスゲーわかります 悠とは中学の時から一緒で俺は悠の事1番近くで見てました 悠は頭が良くて誰にでも優しくて 多分ここでも迷惑をかけない様に気をつかって頑張っていると思います」





(悠が心を開くのは俺の前だけだと思いたい・・・)





マスターと幸子さんはまた顔を見合わせた


「榎本君 私らは悠君の事を本当の孫の様に思っているんだよ 本当に悠君はこっちが心配になるくらいいい子でねぇ~ 榎本君悠君の事これからもよろしくお願いします」


マスターと幸子さんは揃って俺に頭を下げた





(普通ならここで照れたりするんだろうけど俺は・・・)





「悠の事は俺に任せて下さい 俺がいつも悠の傍に居てずっと悠の事をこれからも見ていきます」


「まぁ~榎本君カッコいい」


「何だか頼もしいなぁ~」


マスターと幸子さんは笑っていた




僕は鏡を見てベストのスソを引っ張った





(これで良しいつも通り大丈夫 マスターと幸子さんの笑い声がする 榎本は誰とでも話が出来るからうらやましい)





僕はそう思いながら奥から出て来ると カランカランと音が鳴った





(あっ島田さんだ)





僕は一瞬榎本と目が合った


「榎本ちょっと待ってて」


「あぁ~」





(悠が出て来たヤベ~かわいい写真撮りてぇ~)





「いらっしゃいませ」


島田さんはマスターの前にいつも通りに座った


僕は島田さんにおしぼりとお水を出した


「今日はでけぇ~あんちゃんが居るんだなぁ~ もしかして悠君の友達かぁ~」


「あっはい島田さん 僕の友達の榎本です」


榎本が島田さんに少し頭を下げた





(げっ怖そうなおっさん 悠は大丈夫なのかぁ~)





「榎本君かぁ~ 何かスポーツしてるのかぁ~」





(ヤベ~話かけられた)





「えっあっはい 俺サッカーやってます」






(このおっさんに話かけられるとか焦った~ それにしてもスゲーカンロク)





「島田さん 榎本君はサッカーで何て言ってたかしら・・・」


幸子さんはマスターに聞いていた


「フォワードだって言ってたよ・・・」


マスターは島田さんのブレンドを作りながら 幸子さんに優しくそう言った


「そうそうそのフォワード 榎本君はフォワードなのよ」


「そうかい スゲーボールが飛んで来そうだなぁ~」


「あら島田さんフォワードわかるの?」


「幸ちゃん 俺はスポーツ詳しいよ だてに毎日新聞に目を通してないよ」


「そうねぇ~ 島田さんは物知りなのよね」


「マスター聞いた 俺また幸ちゃんの株上げたなぁ~」


「あぁ~ 榎本君のおかげだなぁ~」


そう言ってマスターは島田さんの前にブレンドを置いた


「島田さんの顔も見られたし 私はこの辺であがるわね榎本君ごゆっくりね」


「あっ はいあざ~っす」


俺は軽く幸子さんに頭を下げた


「幸ちゃんまたなぁ~」


島田さんは幸子さんに手を軽くあげた


「悠君あとお願いね」


「はい お疲れ様でした」



幸子さんはそう言って2階へとあがって行った


「榎本 お待たせ何飲む?」


「悠が作ってくれるものなら何でも」





(えー どうしよう・・・)





「悠君 これにしてあげなよ」


マスターが指をさし 僕はマスターと顔を合わせた


「もう大丈夫だよ 悠君は自信もってやっていいよ」


マスターは笑顔でそう言ってくれた


それは僕が何度か挑戦して 一度もまともに出来た事がないクリームソーダだった


「えっ悠何?」


榎本がカウンターを覗き込もうと腰を浮かした


僕は慌てて榎本に手を伸ばした


「榎本見ないで 僕頑張るから・・・」


「わかった」





(ヤベ~悠かわいい そんなに顔赤くしなくても 写真撮ってもいいかなぁ~)





俺はポケットからスマホを取り出した


榎本が僕にスマホを向けていた


「榎本嫌だ撮らないで」





(集中出来なくなっちゃうよ・・・)





僕は炭酸水をグラスに注いでいた





(ここまではいつも大丈夫なんだ 問題はアイスクリーム少なかったり溢れたり いつも酷い悲惨な状態になる どうしよう緊張する)





僕はマスターと目を合わせ マスターは黙ってうなずいてくれた


僕はディッシャーでアイスクリームをすくい 溢れ出たアイスクリームをはらいゆっくりとグラスに乗せた





(良かった 今までで一番うまく出来た)





最後にチェリーを乗せ 僕は榎本の前にコースターとストロースプーンを置いた





(悠のあんな真剣な顔初めて見た やっぱ来て良かった・・・ 出来たみたいだなぁ~)





「榎本 お待たせ」


僕は榎本の前にクリームソーダを置いた


「スゲー悠スゲーよ・・・」


俺はスマホを出して写真を撮った


「榎本嫌だ」





(何で写真を撮るの恥ずかしいよ)





「母ちゃんに見せんだ あっあとで悠の写真も撮られて」


榎本は嬉しそうに笑っていた





(まずは悠の作ったクリームソーダ飲まねぇ~と・・・)





「榎本どうかなぁ~」


「うめ~よ 悠」


「本当」


「あぁ~ 何の問題もねぇ~よ・・・」


「悠君 私も見てたけど 榎本君が言う様に何の問題もなかったよ」


「ありがとうございます・・・ 良かった」


僕はマスターにそう言われて胸をなでおろした




「あの~聞いてもいいっすか」


俺は気になっている事をマスターに聞いた





(えっ何だろう榎本が僕ではなくマスターに・・・)




「悠の他にバイトさんって居るんですか」


「うちは見ての通り狭い それに常連客で手いっぱいなんだよ だから悠の様な人がバイトに来てくれて とても良かったと幸子さんと話しているんだよ もちろんバイトは悠君1人だからなるべく疲れさせない様にしているつもりなんだけれど 悠君もし疲れて来たら座っても構わないからね 遠慮しないでいいんだよ」


榎本が聞いた話がいつの間にか僕の話に変わっていた


「あっはい ありがとうございます」





(悠の他に居ねぇ~のか 良かった)






「榎本君 また来てくれるかなぁ~」


俺がアイスクリームを食べ終えストローをくわえていた


「あっはい来ます 悠の様子も気になりますし・・・」


「榎本」


僕は思わず少し大きな声を出しマスターは笑っていた


「それじゃ~ お代は要らない・・・」


「えっ 榎本のお代は僕のバイト代から引いて下さい」


「悠 何言ってんだ俺払うよ」


「まぁ~まぁ~」


マスターはそう言って僕達を止めていた


「悠君のお友達からお金は受け取れないし 悠君のバイト代からも貰うつもりもないよ 榎本君がまたサボテンに来てくれたら それで十分なんだよ・・・」


マスターが言い終わると島田さんは新聞をたたんだ


「子供は大人に甘えていいんだ ここはマスターに花を持たせてやんなよ 俺も悠君の事をもっと知りてぇ~し 悠君は榎本君が居るとおもしろし 榎本君とサッカーの話もしてぇ~しなぁ~」



島田さんの話に一瞬静まり返った


「島田さんに助けられるとは思わなかったよ」


「マスター今の事 幸ちゃんに必ず 必ず言っておいてよ 俺幸ちゃんに褒められたいから」


僕は思わず榎本の顔を見た


榎本の変な顔に僕は吹き出してしまった


するとマスターも笑い出していて


僕は笑うのをこらえようと下を向いたけど また吹き出してしまった


「悠君がこんなに笑うの初めて見たよ こりゃ~榎本君サボテンに通わねぇ~となぁ~」


島田さんの言葉に榎本はうなずいていた






(良かった・・・ 悠の周りに優しい人達が居て)





僕が顔を上げると榎本は優しい笑顔を向けていた



(つづく)



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