この胸の高鳴りは・・・

暁エネル

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僕の実家へ①

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忍さんの実家の事を何も聞かされないまま 俺と忍さんは電車を降りた 


いつもは賑やかそうな商店街も干支の貼り紙に日付が書いてあり閉まっていた


「忍さんどこもお休みですね」


「うん静かだね」


「忍さんもこの商店街は良く来ていたんですか?」


「小さな頃は来た記憶が無くて わりと大きくなってからかなぁ~」


「そうなんですか・・・」


忍さんと商店街を通り抜け 住宅街へ忍さんは高い塀に沿って歩いていた


曲がり角をまがると小さな子供が 忍さんの名前を言いながら走って来た


「あっ忍だ・・・ 忍・・・」


忍さんは子供に気付いてしゃがみ両手に子供達を抱きしめていた



(えっ何これ? 忍さんの知り合いの子?)



俺はどうすればいいのかわからず ただ忍さんが子供達を抱きしめている様子を見ていた


「あすかちゃん幸君待っていてくれたの?」


「うん だって忍が来るって聞いてたから待ってたんだよ」


「ありがとうあすかちゃん幸君」


「忍 この人だぁ~れ?」


僕の腕からあすかちゃんと幸君が離れた


僕は立ち上がりあすかちゃんと幸君に紹介した


「あすかちゃん幸君 こちら江口拓巳君」


「江口・・・ 拓巳」


「そう拓巳君 僕の大事な人」


「あすかと幸より?」


「同じくらい大事な人だよ」


「それじゃ~あすか 拓巳と仲良くする」


「幸も・・・」


「ありがとうあすかちゃん幸君」


僕は拓巳君の方を向いた


「拓巳君 あすかちゃんと幸君は僕の姉さんの子供なんだ 姉さんもこの家に一緒に住んでいるんだよ」



(えっちょっと待って今忍さん塀を指さした?)



あすかちゃんと幸君は僕の手をついで大きな門の前へ


若い人達が頭を下げていた


その奥に着物姿にかっぽうぎを着た姉さんが立っていた


僕はあすかちゃんと幸君と門の中へ



(ウソだろう・・・ 藤堂組って書いてある ここホントに忍さんの実家なのか・・・)



俺は門から動けずに居た


「姉さん ただいま」


「忍 お友達置いて来たらダメでしょう まぁ~当然の反応だけどね」


「えっ」


僕は振り返った


てっきり僕の後ろを歩いて来ていると思っていた


拓巳君は門を見上げて入れずに居た おまけに怖い人達も並んで居る


僕は急いで拓巳君の所へ


「拓巳君ごめんね びっくりしたよね」


「ここホントに忍さんのご実家なんですか?」


「うんそうごめん・・・」


「いいえ忍さんが謝る事は何も ただ驚いてしまって・・・」


「そうだよね とりあえず拓巳君入って・・・」


僕は拓巳君の手を引っ張り姉さんの所へ



(うわ~ 貫禄がある人だなぁ~)



「姉さん紹介するね こちら江口拓巳君」


「初めまして江口拓巳と申します 忍さんに親しくしていただいています」


俺はそう言って頭を下げた


「まぁ~固い挨拶はいいから上がってよ あとでいろいろ聞かせてもらうから・・・」


「あっ姉さん これお年賀・・・」


「ありがとう まず挨拶済ませて来な 龍は真彦と待ってるから・・・ あすかと幸は行っちゃダメわかった? いい子にしてたら忍が持って来たこれ開けてもいいよ いい子にしてたらね」


「わかった あすかいい子にしてる」


「幸も・・・」


「そうそれじゃ~手伝ってもらおうかなぁ~」


姉さんが顔を僕に向け合図した


「拓巳君行こう」


僕と拓巳君はコートと靴を脱いで廊下を進んだ


「忍さん広いですね」


「うん たくさん人が居るからね でも僕が子供の頃はもっとたくさんの人が居たんだよ」


廊下を進み兄さんの部屋へ


「拓巳君 次は僕の兄さんを紹介するね」


僕は小さな声でそう言って兄さんに声をかけた


「兄さん忍です」


「入れ・・・」


僕はまた拓巳君に小さな声でこう言った


「拓巳君は僕の隣に座ってね」


僕はそう言ってふすまを開けた


兄さんは和装で部屋の奥に座っていた


僕は拓巳君に小さくうなづいた


真さんは離れた所に座っていた


僕と拓巳君は兄さんの前へと座った


「兄さん 新年あけましておめでとうございます」


僕と拓巳君は兄さんに頭を下げた


「あぁ~おめでとう 隣に居るのは誰だ」


「龍 そんな言い方したら萎縮するだろう・・・ なぁ~?」


真さんが声をかけてくれた


僕は真さんの方を向いた


「真さん 新年あけましておめでとうございます」


僕と拓巳君は真さんに頭を下げた


「挨拶が終わったからもういいだろう」


そう言って真さんは兄さんの隣へと座った


「兄さん真さん こちら江口拓巳君です」


「江口拓巳と申します」


俺はそう言って頭を下げた



(さっきのお姉さんと似てるなぁ~ お兄さんもスゲー貫禄がある)



「拓巳君 僕の兄さんの龍と真さん 真さんは僕が小さい頃よく遊んでくれたんだよ」


「忍はかわいかったからなぁ~」


「忍 ハナレにはもう行って来たのか?」


僕は兄さんに首を振った


「そうか渚も待ってんだろう早く済ませて来い 今回はあすかと幸の助っ人は出来ねぇ~ぞ」


「うんわかってる」


「大丈夫いざとなったら拓巳が助けるんだろう・・・ なぁ~拓巳」


俺の名前がいきなり呼ばれて俺は困っていた


「真さん 拓巳はまだ来たばかりなんだよ あまりからかわないで・・・」


俺は忍さんに助けられた


「拓巳」


「はい」



(今度はお兄さんだ)



「忍を守ってやってくれるんだよなぁ~?」


「はい」


「いい返事だ 良かったなぁ~忍」


「兄さん」


「顔を出したらすぐに部屋を出ろ 酒も入っているんだ絡まれるなよ 渚にツノが出ないうちに早く行って来い」


「うんわかった」


僕はそう言って立ち上がった


「拓巳君行こう」 


俺は2人に頭を下げた


廊下を進み忍さんが振り返った


「拓巳君お願い手を握ってくれる?」


「はい」


俺は忍さんの手を優しく包み込んだ


すると忍さんは大きく深呼吸をした


「ありがとう拓巳君」


「忍さん 渚って誰ですか?」


「あぁ~さっきあった姉さんの事だよ」


「ハナレには誰が居るんですか?」


「僕の両親・・・」


「忍さん」


「あっごめんね 僕は両親とあまり仲が良くなくてね」


忍さんは苦笑いをしていた



(えっ末っ子って1番可愛がられるんじゃ~ないの?)



渡り廊下を通ると忍さんはまた大きく深呼吸をした



(忍さんがこんなに緊張して・・・ 忍さんの両親っていったい・・・)



忍さんはまた振り返った


「拓巳君嫌な思いをさせてしまったらごめんね」


「忍さん俺はへ~きです」


「ありがとう拓巳君」


部屋の中は賑やかで楽しそうな話し声が聞こえていた


「お父さんお母さん忍です」


忍さんの大きな声で話し声がピタリと止まった


「入ってもいいですか?」


「あぁ~入れ」


「失礼します」


中に入るとお酒のニオイとタバコのニオイが充満し 怖そうな人達が集まっていた


僕はお父さんとお母さんの前へ


「新年あけましておめでとうございます」


そう言って頭を下げた


「忍」


「はい」


「知らない顔があるなぁ~ 誰が入っていいと言った?」


「この人は僕の大事な人で・・・ 江口拓巳です」


「初めまして江口拓巳と申します」


俺は深々と頭を下げた



(怖っ 怖そうな人達だ・・・ 本物のヤクザだ・・・)



「大事な人ねぇ~ 忍お前は出て行ったんだろうこの家を・・・」


「はい」


「もういい酒がまずくなる」


「失礼いたしました」


忍さんは逃げる様に部屋を出て行った


俺は頭を下げながらそんな忍さんのあとを追った


「忍さん・・・」


忍さんは渡り廊下で止まっていた


「怖かった」


そう言って俺に抱きついた


「忍さん」


「ごめんね拓巳君 嫌な思いをさせて・・・」


「俺は大丈夫です お兄さんやお姉さんよりも迫力があってスゲー怖かったです 正直ビビリましたけど 俺は忍さんが心配です」


忍さんが俺からゆっくりと離れた


「良かった何もなくて・・・」


「えっ何が・・・」


「拓巳君行こう姉さんが待ってる」


忍さんは笑顔でそう言った



(何もなくてって・・・ 何かがおこってもおかしくなかったってことか?)




俺と忍さんはダイニングテーブルへ テーブルいっぱいに料理が並んでいた


そこは何人も座る事が出来そうなとても長いテーブル


奥にはテレビとソファーが並んでいた



(広い・・・ めちゃくちゃ広い 何人の人がここに座れるんだ?)



「あっ忍来た」


あすかちゃんと幸君が僕の所へ


「あっやっと来た大丈夫だった? 忍ごめんあすかと幸の隣へ」


「うん」


「拓巳って言ったっけ」


「はい」


「拓巳はうちのお父さんの隣へ座ってくれる」


忍さんのお姉さんは忙しそうにそう言った


旦那さんらしき人が小さく手をあげた


俺は手をあげてくれた人の隣へ


「忍君の連れだって?」


「あっはい 初めまして江口拓巳と申します」


「これはご丁寧に 私は相沢と言いますあすかと幸の父です この家はちょっと普通の家と違うからね 拓巳君も驚いたろう?」


「はい」


俺の前に忍さんが座って両隣にあすかちゃんと幸君が座った


お兄さんと真さんがダイニングテーブルへと現れた


「龍遅い少しは手伝え これ持って行って 真彦も手伝ってこれお願い」


「あっ俺手伝います」


そう言って俺が立ち上がろうとしたところ 相沢さんに止められてしまった


「拓巳君はお客さんなんだから座ってていいんだよ」


優しくそう言ってくれた


忍さんと目が合い 忍さんもうなづいていた



(相沢さんは柔らかな感じがする 養子じゃないか相沢さんって言ってたし・・・)



「みんな飲み物大丈夫ね それじゃ~お父さんお願い」


俺の隣の相沢さんが立ち上がった


「それでは僭越ながら お正月みんなで顔を合わせる事が出来て幸せに思います また拓巳君と言う青年も加わりました それではみんなであけましておめでとうございます 乾杯」


「乾杯」


カチンカチンとグラスをみんなで合わせた


「さぁ~お腹いっぱい食べてよ」


お姉さんが大きな声でそう言った



(つづく)


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