この胸の高鳴りは・・・

暁エネル

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すれ違い

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僕は拓巳君に嫌われる様にと凄く恥ずかしい一言を言っていた




(これでいい拓巳君は僕の事を軽蔑して嫌いになるはず・・・ それにしても恥ずかしい・・・)




僕はすぐに下を向いた




(忍さんとキス・・・ キスって俺と忍さんが・・・)




俺はその言葉が俺の頭の中を駆け巡っていた


いつも見ていた忍さんの小さな口元を思い出していた




(忍さんとキス・・・ 正直なところ考えてなかったというか想像もしてなかった そっかそうだよなぁ~ 俺は忍さんにこうして会えるだけで幸せなんだけど 忍さんはもっと大人の人だった この間もどうしたいって聞かれてた 俺は俺の事ばっかで忍さんに俺の気持ち押し付けてた 忍さんの事をちっとも考えてなかった・・・)




「忍さんは俺とキスしたいですか?」


忍さんは下を向いたまま首を振っていた


「拓巳君冗談 冗談だよ忘れて・・・」




(本当に忘れてほしい 自分で言った事なのに凄く恥ずかしい・・・ どうしようここに居たくない消えてしまいたい)




「忍さん俺ね 高校生の時に彼女が居たんですよ 実家へ帰った時に集まった友達にはやし立てられて・・・」




(拓巳君彼女が居たんだ 拓巳君は優しいからモテたんんだろうなぁ~)




「その彼女とは一緒にただ帰るだけの彼女で 教室や廊下で会っても話はしませんでした 今思えば彼女と言えるのか疑問ですが 大学も別々になって自然消滅みたいな感じで ただ一緒に帰るだけで手もつないだ事なかったんです 俺そんな彼女にときめきとかドキドキとかまったくなかったんですよねぇ~」


そう言って俺はコーヒーを飲んだ


「忍さんこの間俺が忍さんに初めて会った時の事を話しましたよね 俺人を見ただけであんなにドキドキしたの初めてで 今日だって久しぶりに忍さんの顔を見て 凄くテンションが上がって 忍さんの笑顔に幸せになりました 俺初めてですけど忍さんとならキス出来ると思います」




(もうやめて拓巳君忘れてって言ったのに・・・ でもダメだ拓巳君は僕を嫌いになるどころか それを受け入れようとしてしまう どうしようどうすれば拓巳君は・・・)




僕は下を向いたまま顔を上げる事が出来なかった




(忍さんが顔を上げてくれない 忍さんは俺の事をどう思っているんだろう 俺の話を聞いてどう思ったんだろう 聞いてみたいけどそれは俺が返事は要らないって言ったてまえ・・・ でも聞きてぇ~)





「忍さん」


「拓巳君」


「はい」


忍さんが口を開いた


「拓巳君は気持ち悪いとか思わないの? だって僕は男なんだよ」


「忍さん前にも言いましたよね 俺は忍さんの全部を知りたいって・・・ 俺忍さんが望むなら出来ると思うんです」


「それは拓巳君の気持ちじゃ~ないでしょう 僕は拓巳君がどう思っているのか知りたいんだよ」


「そうですよね 俺は忍さんが好きです この好きはいろんな意味に取れますよね ひとめ惚れ憧れ忍さんの笑顔やしぐさ 俺は正直忍さんとキスしたいと思った事はありません でも忍さんが他の人とキスをしているのを見たら 多分ショックだと俺は思いますそれは俺でありたいと・・・ でもまだその段階ではないとも思っていて じゃ~いつなのって言われるとそれも俺にはわからなくて・・・」





(説明になってねぇ~そんなの俺がわかってる でも今はこれしか言えねぇ~)





(拓巳君は凄くいい子 だからこそ僕なんかに拓巳君の大事な時間を使ってほしくない・・・)





僕は顔を上げた


「拓巳君もうこの話はやめよう おみやげありがとう凄くかわいくて美味しかった」


「いいえ 俺もいただいてしまって・・・」


「あっそうだ忘れてた 拓巳君から借りていたブルーレイ全部見たんだよ」


僕はテーブルにブルーレイを置いた




(そうだよ今日全部ブルーレイを返して拓巳君とさよならしよう)




(良かった・・・ 忍さんと普通に話が出来た ブルーレイの話をして盛り上がれば いつも通り忍さんの笑顔が見られる)




「忍さんはどれがおもしろかったですか?」


「そうだなぁ~」


僕はいろいろなブルーレイの中から一つ一つ感想言った


大災害で地面が割れ 人々が逃げまどう映画


「これは題名から想像が出来たんだけど ハラハラドキドキして早く逃げてって思った」


「俺はこれこの状態になったら 大好き人と一緒に居ると会いに行くと思いました 本当にあったらスゲー怖いですけどね」


「そうだねいろいろな人間模様が見られたね」


「あっ忍さんこれは・・・」
 

拓巳君が手に取った


主人公が事件に巻き込まれてしまう映画


「どうしてって思ったよ かわいそうだったでも最後は良かった」


「そうなんですよね 思ってもない方向から事件に巻き込まれて笑いました」


「うんでもあれはないよ・・・」


「ホントですよね」


俺と忍さんは笑った




(良かった・・・ 忍さんの笑顔が見られた)




「あっ拓巳君コーヒー入れてくるよ」


「ありがとうございます お願いします」


俺はそう言って忍さんにコーヒーカップを渡した




(このまま忍さんといい感じに話をしていこう)




僕はキッチンへ




(出来ればこのまま笑顔で拓巳君とさよならしたい)




僕はコーヒーを入れテーブルに置いた


「ありがとうございます忍さん」


俺はコーヒーを飲んだ


「さっきも思ったんですけど 凄くいい香りですよね」


「ありがとう拓巳君 僕もコーヒーの香りは好きアロマ的な感じで・・・」


「はい 俺はあんまり好んでコーヒー飲まないんです コーヒーショップ行ってもコーヒーは頼まない でもたまに飲むと美味しいですね忍さんと飲むと余計に・・・」


「ありがとう拓巳君 コーヒーとこのクッキーがまた合うしね」


僕はまたクッキーに手を伸ばした


「あっ拓巳君これ続き物だよね」


「はい おもしろかったですか?」


「うんでも3番目のは主人公が違うでしょう 僕は同じ人が良かったなぁ~って思ったよ」


「忍さん俺も同じです 前の話がいい感じだったのでもったいないですよね」


「うんそうだよね 3番目だけなんでなんだろう・・・」


「ホントですよ」


「あっ忍さんこれは?」


それは心あたたまる親子の映画


「拓巳君これダメだよ 涙が止まらなくて大変だったんだから・・・」


「ですよね 子供がすべて受け入れて耐えているシーンはもうダメですよね」


「うんでも母親の愛って凄いなぁ~って思ったよ 病気をしても心配かけまいとする姿」


「子供も見ていないふりをするんですよね」


「うん本当にかわいそうでね」


「はい 俺もボロボロ泣きました」


俺はそう言ってコーヒーを飲んだ


「たくさん貸してくれてありがとう拓巳君」


「いいえ 忍さんと映画の話をこうしてしたかったので良かったです」


「忍さんこれどうでした?」


それは有名な恐竜の話


「怖かった 主人公は助かるってわかっていても怖かった」


「恐竜とか実際に居るはずのない生き物とかは映画ならではですよね」


「うんファンタジーとか僕好き・・・」


「忍さん好きそう・・・」


「うん」





(めちゃくちゃいい笑顔見られた 忍さんと話するのやっぱ楽しい・・・)





「忍さんどれかブルーレイ置いていきますか?」


「ううんありがとう拓巳君 荷物になっちゃうけどみんな持って帰って・・・」


「そうですか」


俺はそう言ってカバンにブルーレイを押し込んだ




(もうそろそろ帰らねぇ~となぁ~ 次いつ忍さんに会っかなぁ~)




「忍さんそろそろ・・・」


俺はそう言って立ち上がった


「拓巳君忘れ物ない?」


「はい大丈夫です」


「今日は来てもらっちゃって 美味しいご飯も作ってくれてありがとう拓巳君」


「いいえまたいつでも作りますよ」


「駅まで行くね」


「ありがとうございます」


俺と忍さんは玄関へ マンションを出て歩き出した




(忍さんちょっと元気がない? 俺ともっと一緒に居たいと思ってくれてたら嬉しいなぁ~)




坂道を下り駅へ


「拓巳君気を付けて帰ってね」


「はい家に着いたらラインします」


「うん待ってる」


忍さんの笑顔を見て俺は改札口を通った


俺が手を振ると忍さんも小さく手を振ってくれた




(これで拓巳君に会うのは最後にしよう ラインも拓巳君が家に着いた事が確認できたら もう拓巳君のラインを開くのはやめよう)




僕はそう思いながら坂道をのぼっていた



俺は家に着き忍さんにラインを送った




(忍さんも実家に帰る事が出来て良かったなぁ~ やっぱり生まれ育った場所は大事だよなぁ~ それにしてもいきなりキスとか言われて焦った 俺には経験がねぇ~し 忍さんはあるって事だよなぁ~ 当たり前かぁ~年上だしでもどっちと? 男の人?女の人?どっちでもやっぱ俺は嫌だなぁ~ 忍さんのあのくちびるを知っている人が居るって・・・)




それから俺は何日かして 忍さんの仕事に差し支えない様にラインを送った




(ちょっと待ってなんで既読が付かないの? おかしいこれはどういう事だ・・・)




俺の送ったラインを忍さんはまったく見てくれてはいなかった



(つづく)

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