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後編
33.Claimしよう
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「もういいんじゃないかい……?」
「だめです。何か障りが残ったら困るでしょう」
もう指がふやふやのしわくちゃになるくらい湯に浸かっているのだが、あとどれくらいかかるだろうか。
ティノールトに後ろから抱えられて、指の一本一本に至るまで念入りに揉み解されながら、レーネはこっそりため息をついた。Subの性分としてDomに尽くしたい気持ちは理解できるし、ティノールトの尽くす対象がレーネなのは心地いい。それに、魔力をきちんと制御できなかった部分についてはレーネに非があるので、あまり強く言うこともできないでいる。結果として、ティノールトの好きにさせるしかない。
ティノールトが満足するまでゆっくりじっくり体中を手入れされて、ぴかぴかに磨き上げられたころには、レーネは軽くのぼせてしまって一人で歩けなかった。
そのせいで体を拭くのも、寝間着を着るのも甲斐甲斐しくティノールトに世話をされて、ベッドまで抱っこで運ばれる徹底ぶりだ。
「心配性……」
「……心に決めているDomを、守らないわけないでしょう……?」
あのあとレーネはずっとあの小部屋で休んでいるように言われて、暗くなってティノールトが入ってきたと思ったら、何を聞く間もなく抱き上げられて連れ帰られた。
騎士団には寮があって、ティノールトを含めた将軍たちにもそれぞれ部屋が用意されているのだが、補佐官として王都に来て以来、レーネもティノールトの部屋に住まわされている。公私混同ではないかと思ったのだが、他の将軍たちも、家族を住ませたり恋人と住んでいたりするそうだ。王都に来てこの部屋に連れ込まれた時点で、知らない間に外堀を埋められていたような気がする。
「……パートナーじゃ、なくても?」
「パートナーに、してもらえなくても……俺が奉仕したい相手は、レーネさんだけです」
どこか痛みをこらえるような顔をして、しかしティノールトは言いきった。
一緒に入ったというのに、風呂ではレーネの体を洗ったりマッサージをしたりする時間のほうがはるかに長かったし、今だってレーネはベッドに座らせているが、自分は決して上がってこない。ティノールトは、徹底的にレーネに尽くしてくれている。
「……Command使っても、いいかい」
だからこそ丁寧に確認したくて、レーネはじっとティノールトを見つめた。
「はい」
答える声にも、姿にも、迷いはない。
「……Sit」
とん、とベッドを叩いたレーネに戸惑った様子はあったが、ティノールトは素直にベッドに腰を下ろした。ベッドの上をのそのそ移動して、レーネも隣に座る。
「Good boy、聞いてくれてありがとう」
「はい」
Commandに従ってくれたことを褒めると、嬉しそうな顔をしてくれる。それはレーネにとっても幸福なことで、お互いに満たされる行為だ。
「……君が、第五王子に誘われてるなんて、知らなかった」
ぴくり、とティノールトが反応して、隣に座っているレーネの手に触れる。
「隠してたつもりは……すみません、毎回断ってて……」
「責めてるわけじゃない」
例えパートナー関係にあったとしても、日常の細々したことをすべて報告しなければいけないわけではない。もちろん、Subのすべてを把握しなければ気が済まないDomもいるのは知っているが、レーネはそこまでしようとは思わない。その日何をするか、何をしていたかなど、Subの自由だ。
「……ああいう人、たくさんいるのかい」
問題は、ティノールトが他のDomから迫られていたということなのだ。レーネが回答を保留にしていたせいで、もしそれが断れないような相手だったら、取り返しのつかないことになっていた。それがとても恐ろしい。
「……たくさんでは、ないですが。でも全部断ってます」
ティノールトの話しぶりからすれば、いないわけではないということだ。顔を逸らしてうつむいたレーネの前に、ティノールトがベッドを降りてひざまずく。
「大丈夫ですよ。俺はレーネさん以外を受け入れるつもりはないです。将軍になったおかげで、権力をかさに要求を呑まされるなんてこともありません」
レーネの両手が、ティノールトの大きな両手に包まれる。この手に触れられるのは嬉しいし、撫でてもらうと心地いい。他の誰かになど、渡したくない。
「……第五王子でも?」
「身分としては王子が上ですけど、実際の力関係としては俺が上です。負けません」
「……陛下に言われたら?」
ティノールトが、ぐっと言葉につまった顔をした。
わかっている。国王に命じられれば、さすがに断れるはずがない。そして第五王子の父親は、国王なのだ。
「……僕、嫌だ」
置いていかれて悲しかったのは、ティノールトと一緒にいたかったからだ。
レーネの都合も構わず呼び寄せてひどいと思ったのは、ティノールトのことをあきらめようと思っていたのに、忘れさせまいとするみたいだったからだ。
でも、悲しみと恨めしい気持ちは残っていても、それを塗りつぶすくらい、ティノールトが他のDomに取られてしまうのが嫌だ。
「君が僕以外の人のものになるのは、嫌だ」
レーネのほうからティノールトの手をぎゅっと握って、空色の瞳をしっかり見つめる。
「君のDomは、僕がいい」
ただ、ティノールトは目を丸くしただけで、何の言葉も返ってこなかった。今さら、遅かっただろうか。
「君、は、嫌かい」
ティノールトの手を握っていた力を抜いて、そっと離そうとした手が掴まれる。
「ちっ、違います! 違う、嫌じゃない、嫌なわけない!」
何も答えなかったはずなのに、必死に言葉を重ねるティノールトに今度はレーネが目を瞬いた。嫌だったから何も言わなかったのだと思ったのに、違うらしい。
「俺はっ、俺もあなたのSubになりたい、レーネさんがいい……!」
ぎゅっとレーネを掴む手は、加減を忘れているのか痛いほど力が強くて、焦った様子でくり出す言葉はめちゃくちゃで、ただひたすらレーネを求めていることだけは伝わってくる。
砦にいたころの、まだ子どもらしさを残していたティノールトのようで、レーネは小さく笑いだした。
「レーネ、さん……?」
「ご、ごめん、君を笑ってるわけじゃなくて、ふふ、おかしくて」
あんなに恐ろしくて、文字通り体が凍えてしまいそうだったのに、もう安堵して笑っていて、自分でも単純だと思う。
床にひざまずいたままのティノールトの胸に、レーネから飛び込んで抱きつく。勢いで尻もちをついたものの、ティノールトはしっかりレーネを受け止めてくれた。
「ティノールトくん、僕のSubになってくれるかい」
「もちろんです……俺は、レーネさんのSubです」
ティノールトはずっと、レーネに気持ちを向けてくれていた。わかっていたはずなのに、戸惑って、ずいぶん待たせてしまったように思う。あとはレーネが応えさえすればいいだけだったのに、それでも自分の心というのがよくわからなくて、恐怖を感じてからようやく自覚した。
それだけのんびり屋で不器用なDomを、ティノールトはずっと思い続けてくれた。この一途で誠実なSubを、誰かに奪われたくない。
「ティノールトくん」
「はい」
パートナー関係にあるというのは、恋人くらいには特別な関係だが、公的には何の力も持たないことはレーネも知っている。だから他のDomに対抗するためには、もっと強い関係が必要だ。
「Claimしよう」
「……え」
空色の目が見開かれるのは、きれいだと思う。ティノールトの言葉が返ってこなくても、嫌がっているわけではないというのは先ほど学習したので、じっと答えを待つ。
見つめていた顔が、なんだか赤くなってきた気がする。
「あ、の、レーネさん……」
「何だい」
ティノールトの視線が揺らいで、言葉を探すようにあちこちさまよってから、レーネの顔に戻ってくる。
「俺、その、確かに昔好きですって言いましたけど、でもいいんですか、Claimって」
「待って」
むぎゅ、とティノールトの口を押さえて、レーネはしばらく無言でティノールトを見つめる羽目になった。
好きだと言った。誰が。誰に。
いやこの場合はティノールトがレーネに言ったのだと思うが、いつだ。記憶にない。
ティノールトがそっとレーネの手を外し、腰とうなじに手を回してくる。この体勢はまずいのではないだろうか。逃げられない。
「覚えてないですか」
「ま、待って、いつ、だって君」
「……異動することになったって、打ち明けたときです」
言っていただろうか。あのときは、別の場所に行きたいのだと言われたと思って、ショックで、あまり思い出したくない記憶だし、鮮明に覚えているわけでもない。
また黙り込んでしまったレーネに苦笑して、ティノールトがすっと顔を近づけてくる。
近い、じゃなくて、口に何か当たった。柔らかくて少し弾力があるもの。
「好きです、レーネさん」
呆然と見つめるレーネの唇をもう一度ついばんで、ティノールトがぎゅっと抱きしめてくる。
「俺とClaim、してくれるんですか」
「だ、だって、誰かに君取られちゃう……」
慌ててティノールトの背中に腕を回して、レーネは自分の顔がじわじわと熱くなっていくのに気づいた。
Claimは、DomとSubの結びつきを内外に示すものだ。パートナーになることを恋人関係に例えるなら、結婚といってもいい。ClaimしたDomとSubの関係を壊そうとしたり、割って入ろうとしたりするのは不道徳だと一般的に考えられている。
つまり、レーネは、ティノールトに結婚しようと言ったのも同然なのだ。
理解があとから追いついてきて、よく考えれば大胆なことを口走ってしまった気がする。
「Claimしたら、解消しづらいですよ」
念を押すように言ってきたティノールトにむっとして、体を離して視線を合わせる。
「解消なんてしない、君は僕のSubだし、君のDomは僕だ」
「……はい。俺はレーネさんのSubで、俺のDomはレーネさんです」
嬉しそうに笑って、ティノールトがまた口づけてくる。ふに、ふに、と唇が触れ合うのが、こそばゆくて恥ずかしい。
「……好きです、レーネさん」
今までと違う声だ、と感じた次の瞬間には、レーネの口に何かが入り込んできていた。
「だめです。何か障りが残ったら困るでしょう」
もう指がふやふやのしわくちゃになるくらい湯に浸かっているのだが、あとどれくらいかかるだろうか。
ティノールトに後ろから抱えられて、指の一本一本に至るまで念入りに揉み解されながら、レーネはこっそりため息をついた。Subの性分としてDomに尽くしたい気持ちは理解できるし、ティノールトの尽くす対象がレーネなのは心地いい。それに、魔力をきちんと制御できなかった部分についてはレーネに非があるので、あまり強く言うこともできないでいる。結果として、ティノールトの好きにさせるしかない。
ティノールトが満足するまでゆっくりじっくり体中を手入れされて、ぴかぴかに磨き上げられたころには、レーネは軽くのぼせてしまって一人で歩けなかった。
そのせいで体を拭くのも、寝間着を着るのも甲斐甲斐しくティノールトに世話をされて、ベッドまで抱っこで運ばれる徹底ぶりだ。
「心配性……」
「……心に決めているDomを、守らないわけないでしょう……?」
あのあとレーネはずっとあの小部屋で休んでいるように言われて、暗くなってティノールトが入ってきたと思ったら、何を聞く間もなく抱き上げられて連れ帰られた。
騎士団には寮があって、ティノールトを含めた将軍たちにもそれぞれ部屋が用意されているのだが、補佐官として王都に来て以来、レーネもティノールトの部屋に住まわされている。公私混同ではないかと思ったのだが、他の将軍たちも、家族を住ませたり恋人と住んでいたりするそうだ。王都に来てこの部屋に連れ込まれた時点で、知らない間に外堀を埋められていたような気がする。
「……パートナーじゃ、なくても?」
「パートナーに、してもらえなくても……俺が奉仕したい相手は、レーネさんだけです」
どこか痛みをこらえるような顔をして、しかしティノールトは言いきった。
一緒に入ったというのに、風呂ではレーネの体を洗ったりマッサージをしたりする時間のほうがはるかに長かったし、今だってレーネはベッドに座らせているが、自分は決して上がってこない。ティノールトは、徹底的にレーネに尽くしてくれている。
「……Command使っても、いいかい」
だからこそ丁寧に確認したくて、レーネはじっとティノールトを見つめた。
「はい」
答える声にも、姿にも、迷いはない。
「……Sit」
とん、とベッドを叩いたレーネに戸惑った様子はあったが、ティノールトは素直にベッドに腰を下ろした。ベッドの上をのそのそ移動して、レーネも隣に座る。
「Good boy、聞いてくれてありがとう」
「はい」
Commandに従ってくれたことを褒めると、嬉しそうな顔をしてくれる。それはレーネにとっても幸福なことで、お互いに満たされる行為だ。
「……君が、第五王子に誘われてるなんて、知らなかった」
ぴくり、とティノールトが反応して、隣に座っているレーネの手に触れる。
「隠してたつもりは……すみません、毎回断ってて……」
「責めてるわけじゃない」
例えパートナー関係にあったとしても、日常の細々したことをすべて報告しなければいけないわけではない。もちろん、Subのすべてを把握しなければ気が済まないDomもいるのは知っているが、レーネはそこまでしようとは思わない。その日何をするか、何をしていたかなど、Subの自由だ。
「……ああいう人、たくさんいるのかい」
問題は、ティノールトが他のDomから迫られていたということなのだ。レーネが回答を保留にしていたせいで、もしそれが断れないような相手だったら、取り返しのつかないことになっていた。それがとても恐ろしい。
「……たくさんでは、ないですが。でも全部断ってます」
ティノールトの話しぶりからすれば、いないわけではないということだ。顔を逸らしてうつむいたレーネの前に、ティノールトがベッドを降りてひざまずく。
「大丈夫ですよ。俺はレーネさん以外を受け入れるつもりはないです。将軍になったおかげで、権力をかさに要求を呑まされるなんてこともありません」
レーネの両手が、ティノールトの大きな両手に包まれる。この手に触れられるのは嬉しいし、撫でてもらうと心地いい。他の誰かになど、渡したくない。
「……第五王子でも?」
「身分としては王子が上ですけど、実際の力関係としては俺が上です。負けません」
「……陛下に言われたら?」
ティノールトが、ぐっと言葉につまった顔をした。
わかっている。国王に命じられれば、さすがに断れるはずがない。そして第五王子の父親は、国王なのだ。
「……僕、嫌だ」
置いていかれて悲しかったのは、ティノールトと一緒にいたかったからだ。
レーネの都合も構わず呼び寄せてひどいと思ったのは、ティノールトのことをあきらめようと思っていたのに、忘れさせまいとするみたいだったからだ。
でも、悲しみと恨めしい気持ちは残っていても、それを塗りつぶすくらい、ティノールトが他のDomに取られてしまうのが嫌だ。
「君が僕以外の人のものになるのは、嫌だ」
レーネのほうからティノールトの手をぎゅっと握って、空色の瞳をしっかり見つめる。
「君のDomは、僕がいい」
ただ、ティノールトは目を丸くしただけで、何の言葉も返ってこなかった。今さら、遅かっただろうか。
「君、は、嫌かい」
ティノールトの手を握っていた力を抜いて、そっと離そうとした手が掴まれる。
「ちっ、違います! 違う、嫌じゃない、嫌なわけない!」
何も答えなかったはずなのに、必死に言葉を重ねるティノールトに今度はレーネが目を瞬いた。嫌だったから何も言わなかったのだと思ったのに、違うらしい。
「俺はっ、俺もあなたのSubになりたい、レーネさんがいい……!」
ぎゅっとレーネを掴む手は、加減を忘れているのか痛いほど力が強くて、焦った様子でくり出す言葉はめちゃくちゃで、ただひたすらレーネを求めていることだけは伝わってくる。
砦にいたころの、まだ子どもらしさを残していたティノールトのようで、レーネは小さく笑いだした。
「レーネ、さん……?」
「ご、ごめん、君を笑ってるわけじゃなくて、ふふ、おかしくて」
あんなに恐ろしくて、文字通り体が凍えてしまいそうだったのに、もう安堵して笑っていて、自分でも単純だと思う。
床にひざまずいたままのティノールトの胸に、レーネから飛び込んで抱きつく。勢いで尻もちをついたものの、ティノールトはしっかりレーネを受け止めてくれた。
「ティノールトくん、僕のSubになってくれるかい」
「もちろんです……俺は、レーネさんのSubです」
ティノールトはずっと、レーネに気持ちを向けてくれていた。わかっていたはずなのに、戸惑って、ずいぶん待たせてしまったように思う。あとはレーネが応えさえすればいいだけだったのに、それでも自分の心というのがよくわからなくて、恐怖を感じてからようやく自覚した。
それだけのんびり屋で不器用なDomを、ティノールトはずっと思い続けてくれた。この一途で誠実なSubを、誰かに奪われたくない。
「ティノールトくん」
「はい」
パートナー関係にあるというのは、恋人くらいには特別な関係だが、公的には何の力も持たないことはレーネも知っている。だから他のDomに対抗するためには、もっと強い関係が必要だ。
「Claimしよう」
「……え」
空色の目が見開かれるのは、きれいだと思う。ティノールトの言葉が返ってこなくても、嫌がっているわけではないというのは先ほど学習したので、じっと答えを待つ。
見つめていた顔が、なんだか赤くなってきた気がする。
「あ、の、レーネさん……」
「何だい」
ティノールトの視線が揺らいで、言葉を探すようにあちこちさまよってから、レーネの顔に戻ってくる。
「俺、その、確かに昔好きですって言いましたけど、でもいいんですか、Claimって」
「待って」
むぎゅ、とティノールトの口を押さえて、レーネはしばらく無言でティノールトを見つめる羽目になった。
好きだと言った。誰が。誰に。
いやこの場合はティノールトがレーネに言ったのだと思うが、いつだ。記憶にない。
ティノールトがそっとレーネの手を外し、腰とうなじに手を回してくる。この体勢はまずいのではないだろうか。逃げられない。
「覚えてないですか」
「ま、待って、いつ、だって君」
「……異動することになったって、打ち明けたときです」
言っていただろうか。あのときは、別の場所に行きたいのだと言われたと思って、ショックで、あまり思い出したくない記憶だし、鮮明に覚えているわけでもない。
また黙り込んでしまったレーネに苦笑して、ティノールトがすっと顔を近づけてくる。
近い、じゃなくて、口に何か当たった。柔らかくて少し弾力があるもの。
「好きです、レーネさん」
呆然と見つめるレーネの唇をもう一度ついばんで、ティノールトがぎゅっと抱きしめてくる。
「俺とClaim、してくれるんですか」
「だ、だって、誰かに君取られちゃう……」
慌ててティノールトの背中に腕を回して、レーネは自分の顔がじわじわと熱くなっていくのに気づいた。
Claimは、DomとSubの結びつきを内外に示すものだ。パートナーになることを恋人関係に例えるなら、結婚といってもいい。ClaimしたDomとSubの関係を壊そうとしたり、割って入ろうとしたりするのは不道徳だと一般的に考えられている。
つまり、レーネは、ティノールトに結婚しようと言ったのも同然なのだ。
理解があとから追いついてきて、よく考えれば大胆なことを口走ってしまった気がする。
「Claimしたら、解消しづらいですよ」
念を押すように言ってきたティノールトにむっとして、体を離して視線を合わせる。
「解消なんてしない、君は僕のSubだし、君のDomは僕だ」
「……はい。俺はレーネさんのSubで、俺のDomはレーネさんです」
嬉しそうに笑って、ティノールトがまた口づけてくる。ふに、ふに、と唇が触れ合うのが、こそばゆくて恥ずかしい。
「……好きです、レーネさん」
今までと違う声だ、と感じた次の瞬間には、レーネの口に何かが入り込んできていた。
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