28 / 47
後編
28.立ち止まるのも、進むのも
しおりを挟む「はぁ。アレン如きが、何うちの団長を語ってるの?片腹痛いよね」
おーーーい。急にどうした兄さん???
「何が如きだ!言っておくが、俺の方が歳上で、騎士としても先輩に当たる!そんな俺に対する態度がそれで良いと思っているのか?!」
「いいんじゃないの?尊敬に値出来る人なら、自然と敬うんだけどね」
「クラ!」
ギャーギャーと言い争いを始めるクラとアレン。
そんな2人を、呆然と見つめるキリアに、隣でニコニコと微笑みながら見ているカトレア。
「あーーの、これは、いつもの事ですか?」
恐る恐る尋ねてみる。
「そうですね。通常の光景です」
クラ兄さんーー!!!お城に来て何してるの?!いや、カトレアとかに対する態度は正解になったのかもしれないけど、大好きな団長さんの事で喧嘩するの止めてーー!?!?
「キリア、カトレア様の専属魔法使いになったとの事だけど」
暫く喧嘩を続けた後、やっと一段落ついたクラ兄さんから、話し掛けられる。
「もし何か困った事があったら、すぐ俺に言うんだよ?カトレア様の専属魔法使いが嫌になったとかなら、すぐに家に帰ってもいいんだからね?」
あ。根本的な部分は変わって無いんだね。でも駄目だよ?王子様の前でそんな事言ったら。
「大丈夫だよクラ兄さん。クラ兄さんも、騎士団の人達と仲良く!仲良くしてね」
念を押して、2回同じ事を言う。大切だからね。
それから暫く騎士団の練習を見学し、また、城の案内に戻る。
余談だが、ラット騎士団長も途中練習に参加し、愛しい妹と弟が見ているとあって、クラとラットのやる気は倍増し、いつも以上に他の騎士達はボコボコにされたらしい。
「後はーーー」
丁寧にお城の中を案内してくれるカトレア。カトレアは、最初から、ずっと、優しい。
クラ兄さんもいて、頼りになるアレンもいて、何とか、お城での生活もやって行けそう。そう、思った矢先だったーーー
「あら、ゴミ屑じゃない」
「!!!」
その声に、体がビクッと反応する。聞き覚えのある声。
ゆっくりと後ろを振り返ると、そこには、聞き覚えのあった声の主がいた。
「……サウィルンさん」
私の元・家族の1人、姉のサウィルン・ラナン。
「あはっ。姉様、だなんて呼ばれなくて良かったー!あんたなんかうちの子じゃないもんね」
それは、こちらも同じ。私の家族は貴女達じゃない。だから、姉だなんて二度と呼びたくない。
「サウィルン。貴女がお城に何の用ですか?」
サッと、私の前に出て、姉から隠してくれるカトレア。アレンも、その隣で、1歩前に出た。そのアレンの表情は険しくて、サウィルンを警戒しているのが伺える。
カトレア、ユーリさんーー元・兄とも面識があったけど、サウィルンさんとも面識があるんですね。
「貴方に会いに来たのよ、ダーリン♡」
ーーーは?ダーリン?王族に向かって??
「サウィルン様!幾ら貴族であろうと、第7王子であるカトレア様に向かって、なんて口の利き方をーー!!」
ほら、アレンさんが1発で激ギレしてるじゃないですか。
「うっさいわねー。いーの、私とカトレアは婚約者同士なんだから♡」
「貴女の婚約者になった覚えは一切有りません。お引き取り下さい」
動揺する前に一瞬でカトレアが否定した。
「やだ。照れてるの?かぁわぁいー♡」
……元とは言え、実の姉の阿呆さ加減に頭が痛くなりますね。大丈夫?王族相手に、虚偽の婚約者名乗ってるの?ヤバくない?
「……不思議なのですが、この前から、どういった心境の変化なのですか?留学先で一緒だった時には、そのような態度では無かったですよね?それどころか、ニケが命を狙ってるから、精々怯えて過ごせば?と、笑いながら言ってきたじゃ有りませんか」
サウィルンさんとはどこの知り合いなのかと思えば、留学先の学校?あの飛び級したやつの?最初に、カトレアが私達に依頼したーーー。
そう言えば、私の事をニケさん(阿呆テスト男)に話したのは、サウィルンでしたね。成程。皆さん、同じクラスメイトだったんですね。
「やだーそんな過去の事!あれは、命が狙われてるから気を付けて!って意味だったの♡そのお陰で、命が助かったでしょ?」
よく言いますね。カトレア殺人の容疑を、私に被せるためにニケに助言までしといて。
「僕の命が助かったのは、紅の魔法使いーーキリア達のお陰です」
「!」
「そこのゴミ屑がー?」
不満そうな目を、カトレアの背中に守られている私に向ける。
「兄さんから聞いてたけど、あんたホントに生きてたのね」
貴女達元・家族に、森に捨てられましたからね。ケイ先生が拾ってくれなきゃ、死んでましたよ。
「あはは!あそこで野垂れ死んでくれてれば良かったのに!そしたら、あんたの不細工で辛気臭い顔見なくて済んだんだから!」
大きな声で笑いながら、人が傷付く事を、平気で言う。昔と何も変わらない。変わらないーーーけど。
「……サウィルンさん、随分、体型がーー変わりました。ね」
母親譲りの緑の髪に、緑の瞳は変わっていないが、体型が、ぽっちゃりした、お相撲さんの体型になっている。昔はもっと痩せてたのに……。
11
お気に入りに追加
160
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

Promised Happiness
春夏
BL
【完結しました】
没入型ゲームの世界で知り合った理久(ティエラ)と海未(マール)。2人の想いの行方は…。
Rは13章から。※つけます。
このところ短期完結の話でしたが、この話はわりと長めになりました。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
愛しの妻は黒の魔王!?
ごいち
BL
「グレウスよ、我が弟を妻として娶るがいい」
――ある日、平民出身の近衛騎士グレウスは皇帝に呼び出されて、皇弟オルガを妻とするよう命じられる。
皇弟オルガはゾッとするような美貌の持ち主で、貴族の間では『黒の魔王』と怖れられている人物だ。
身分違いの政略結婚に絶望したグレウスだが、いざ結婚してみるとオルガは見事なデレ寄りのツンデレで、しかもその正体は…。
魔法の国アスファロスで、熊のようなマッチョ騎士とツンデレな『魔王』がイチャイチャしたり無双したりするお話です。
表紙は豚子さん(https://twitter.com/M_buibui)に描いていただきました。ありがとうございます!
11/28番外編2本と、終話『なべて世は事もなし』に挿絵をいただいております! ありがとうございます!
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる