馬鹿犬は高嶺の花を諦めない

phyr

文字の大きさ
上 下
116 / 116
【後日談】杖の下に回る犬は打てない

4-2

しおりを挟む
「大人げなく、お前の気ぃ引いて、惑わせて、夢中にさせようとしてんの」

 触れてくる唇が、少しだけ震えている気がして、無理やり割り開かせて逃げようとする舌を絡め取る。
 本当に性質が悪い。何もされてなくても師匠のことで頭がいっぱいなのに、本人がそんなことをして誑し込んで来たら、抗えるわけないだろう。抵抗する気も、ないけど。
 オネダリに応えるのは今度にしようと勝手に諦めて、断りもなく体を動かす。

「ふっ、ァ、きゅっ、ぅに……ッ」

 あんたがそうやって、俺を誑かそうとするなら。
 俺に揺さぶられて翻弄されてぐちゃぐちゃになって、全部喰らい尽くされればいい。

「ゃ、っア、ゃさ……ァっ、あ、やッ……さ、しっ、ない……ぃっ」
「……無理」

 優しくないなんて言われたって、今のは絶対に師匠が悪い。俺は悪くない。それに少なくとも俺の飢えが治まらないと丁寧にしてあげるのは難しいし、師匠があざとく俺を篭絡してくるなら、なおさら無理だ。少し泣きが入って、それでも快感を拾って喘いでいる顔は、めちゃくちゃ可愛い。
 奥まで俺を受け入れている体が、いや、とか、やだ、とか声を零す。けど、爪を立てて俺にしがみ付いて、足ですらぎゅっと絡めてきてるのには、たぶん、気付いてない。自分の言葉と体が合ってないのがわからなくなるくらい、溺れてくれてるなら嬉しい。

「好き、クライヴ……好き……」

 好きって言葉を出すと、きゅうきゅうとナカが締まって反応してくれて、可愛い。

 名前を呼ぶと、とろとろになっていても俺の方を見てくれて、可愛い。

「ルイっ、る、ぁ……ア、ァ……ッ!」

 イくと同時にぎゅうぎゅうと俺のモノに絡み付いて、奥に引き込むように胎内が蠢いた。誘い込まれるままナカに注いで、健気に俺の種を飲み込んだ腹を撫でる。どうせ綺麗にはしなきゃいけないけど、刻み付けたくて奥にぐりぐりと擦り付ける。動きに合わせて、浮かされたような声を上げる人が可愛い。

「……クライヴ、もっと」

 もう一度気持ちいい胎に抜き差しして、振り乱された金髪の頭を撫でる。俺のほんの少しの動きにさえ、敏感に体を震わせているのは可愛いけど、そろそろきついかなといったん待ってあげる。

「るい、ル……イ……っ」
「なぁに、クライヴ」

 ぐすぐすと俺を呼ぶ声に、出来るだけ優しく答える。優しく抱いてって言うなら、あんまり俺を煽らないでほしいけど、そうやって俺を繋ぎ止めようとしてくれるのは、すごく嬉しい。師匠の方でも、ちゃんと俺を選んでくれてるのがわかる。
 でも、愛してるって言ってくれないのはずるいし、愛してるって言わずに伝えてくるのは、ひどい手管だ。

 ずるい大人に、ずぶずぶにされてる。

「まだ……俺、えらび、てぇ?」

 あーーーーーもう。本当に性質の悪い。

「クライヴしか、選びたくない」

 ちっともそんな素振りを見せずに俺を落としたくせに、ちゃんと俺の方を向いてくれるようになったと思ったら、こっちが戸惑うくらい気持ちを注いでくれる。おかげで動揺させられっぱなしだ。それなのに、俺だけを見てはくれなくて、自分の足で立ってまっすぐ前を見据えている、強くて、格好いい人。
 ほっとしたように、嬉しそうに笑うから、悔しくてキスを仕掛けて、今は俺だけに浸ってもらう。少しだけ苦しそうに漏らしている吐息だって、全部俺のにしたいって、きっとそんなの全然わかってない。

「クライヴがほしい……クライヴだけほしい、足りない、もっと」

 緩く腰を振ったら艶めいた声を漏らしてくれる。背中に回っている手に力が入ったのは、了承のはずだ。

「気持ち良くなろうよ、クライヴ」

 もっと、俺を夢中にさせてよ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

色狂い×真面目×××

135
BL
色狂いと名高いイケメン×王太子と婚約を解消した真面目青年 ニコニコニコニコニコとしているお話です。むずかしいことは考えずどうぞ。

王太子からは逃げられない!

krm
BL
僕、ユーリは王家直属の魔法顧問補佐。 日々真面目に職務を全うしていた……はずなのに、どうしてこうなった!? すべては、王太子アルフレード様から「絶対に逃げられない」せい。 過剰なほどの支配欲を向けてくるアルフレード様は、僕が少しでも距離を取ろうとすると完璧な策略で逃走経路を封じてしまうのだ。 そんなある日、僕の手に謎の刻印が浮かび上がり、アルフレード様と協力して研究することに――!? それを機にますます距離を詰めてくるアルフレード様と、なんだかんだで彼を拒み切れない僕……。 逃げられない運命の中で巻き起こる、天才王太子×ツンデレ魔法顧問補佐のファンタジーラブコメ!

没落貴族の愛され方

シオ
BL
魔法が衰退し、科学技術が躍進を続ける現代に似た世界観です。没落貴族のセナが、勝ち組貴族のラーフに溺愛されつつも、それに気付かない物語です。 ※攻めの女性との絡みが一話のみあります。苦手な方はご注意ください。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

処理中です...