馬鹿犬は高嶺の花を諦めない

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犬牙、犬吠、その身に喰らえ

9-4

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 ゆっくり挿れたつもりだったけど、師匠はぎゅっと目を閉じて、耐えるように睫毛を震わせていた。待ちきれなくて少し体を揺すれば、艶めかしい啼き声が応えてくれる。俺を受け入れている腹を下から撫で上げて、つんと主張している乳頭を押し潰す。

「あ、っ、ぁ」

 気持ちいい、とうわ言のように零して、師匠が俺に視線を向けた。眉尻を下げたまま、でもふんわりと笑って腹に触れてくる。

「ルイ」

 蕩ける声に名前を呼ばれるだけで、硬くなった気がする。小さく唸って、シーツを掴んでいる手を外させて繋いだ。俺を安心させてくれる手に指を絡めて、俺に抱かれてるんだって、師匠の意識に刻み付けたい。
 言葉を奪わないように唇を軽く啄んで、鼻に触れて、薄い瞼と形のいい額にそれぞれキスを落としていく。

「なぁに、クライヴ」
「お前、の、はいってんの、きもち、いい」

 思わずむせた。師匠が胸を撫でてくれるけど、そういうことじゃない。

「……煽ってんの」

 咎めるように軽く抜き差しして、大好きな声で喘がせる。つい素が出てぞんざいな言い方になった。

「ち、がぅ……っ、やめ、ゃ……ッ」

 ぐりゅぐりゅと押し付けるように壁を擦ったら、今度は嫌がってシーツの上でもがく。逃げていこうとする体を捕まえて、また奥の方に押し込む。

「ぅあ……っ」

 気持ち良さそうに見えるのに、いやいやと首を振って目尻から涙を零しているのが気に掛かる。やだって言われることが全くないわけじゃないけど、こんなふうに嫌がるのは初めてのはずだ。
 嫌がられるのは、俺だって嫌だ。ちゃんと、俺とすると気持ちいいって、師匠にも思ってほしい。

 胎の中にまた収めて、宥めるために唇を落とす。甘く感じる唾液もしょっぱい涙も舐め取って、師匠が落ちつくまでじっと我慢する。ちゃんと待てが出来るって、さっきも褒められた。

「クライヴ、好き、大好き」

 きゅう、とナカが締まった。体に反応が出るの、可愛い。
 良かった。師匠はちゃんと、俺のことを好き。嫌われたわけじゃないってわかれば、大丈夫。

「ル、イ」

 ぎこちなく俺を呼んで、師匠が手を伸ばしてくる。体を寄せたらナカの角度が変わったせいか、師匠がまたびくりと震えたけど、俺に抱き付いて浅い息をくり返しているのは可愛い。

「どうしたの」

 ナカの壁がゆるゆると動いてまとわりついてくるから、痛かったり気持ち良くなかったりは、たぶんしてないはずだ。挿れただけで苦しげな息を漏らしているのは珍しい。久しぶりだからだろうか。動かさないように気を付けて、師匠の髪を撫でる。

「……わか、んな……きもちい、い、ルイ……」

 師匠自身も、困惑してる。気持ちいいし嫌なわけじゃないのに、俺が動くとだめみたいだ。

「気持ちいい?」
「……腹ん中、入ってるだけで……気持ちいい……」

 すり、と師匠が頭を寄せてくる。可愛い。

 いや、待ってほしい。そんなの師匠は気持ちいいかもしれないけど、俺は生殺しだ。
 様子を見て少しだけ中を突いたら、悲鳴のように師匠が声を震わせてしがみ付いた。師匠の気持ちいいとこに当てたわけでも、奥まで深く挿れたわけでもないのに。

「ルっ、イ、やだ……ゃ、ッあ、や、だ……っ」
「……クライヴ、何がやだ?」

 動きを止めずに師匠の体を緩く拓いていく。もう形は馴染んでるはずだし、何より俺が待ち続けられない。意識してやってるわけじゃないとは思うけど、ナカでずっときゅうきゅうしゃぶられてたら、我慢出来るわけがない。待てだって限度がある。

「きもっ、ち、ぃい……っの、やだ……ぁっ、ア、や……っ」

 また逃げようとする体を押さえ付けて穿ちながら、促してたくさん喋らせる。
 気持ちいいのが、嫌。いつもと違う。こんなの知らない。気持ちいいのが強すぎて、怖い。
 ぐずって、喘いで、助けを求めるように俺に訴えて、混乱したまま師匠が俺に啼かされている。
 めちゃくちゃ可愛い。
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