馬鹿犬は高嶺の花を諦めない

phyr

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犬牙、犬吠、その身に喰らえ

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「ルイ、浄化」

 手を取られて師匠の腹のところに導かれたから、言われた通りに浄化の魔術を掛ける。魔術を掛けられる感覚は、俺より師匠の方がずっと鋭敏だ。一瞬だけ眉を顰めて、それから腹にあった俺の手を引き寄せて口付けてくれた。俺をリードしてくれて、優しく許してくれる。

 師匠も、俺としたいと思ってくれてるなら、嬉しい。

 師匠がベッドサイドに手を伸ばしているから、魔術で風を起こして潤滑油を引き寄せる。手に出した潤滑油を馴染ませるように温めていたら、手持ち無沙汰だったのか、師匠が俺のうなじに手を伸ばして、後ろ髪を弄んできた。まだそんなに髪は伸びてないはずだけど、気になるだろうか。

「なぁに、クライヴ」

 指を入れて、ナカの感触を確かめる。柔らかくて温かいけど、まだとろとろじゃない。小さく吐息を漏らした師匠が、髪をいじっていた手を俺の背中に滑らせる。

「……今、しゃべっ、た、ら……あお、り、そ」

 煽りそう。これだけ甘やかしてくれて抱かせてくれてるのに。俺を撫でて、じっと見つめて、好きって伝えてくれてるのに。
 息を乱している師匠のナカの指を、わざと当てるように動かして、色めいた声を零させる。挿れたいけど、師匠に気持ち良くなってもらいたくて、体を起こして勃っているモノにも手を添えた。

「ッ、ま、ルイ……!」

 ナカと一緒に擦ったら、師匠が気持ち良くなれる。喘ぐ声にどんどん艶が増して、シーツがぐちゃぐちゃになっていく。イく寸前で手を離した俺に師匠が目を見開いたけど、すぐにナカの指を増やして休ませないようにする。

「なっ、ぅ、てめ、ッあ、ァ……ふざ、っけ……ッ」

 今の師匠なら、ナカだけでもきちんと気持ち良くなれる。前も擦った方がたぶん気持ちいいけど、それだと師匠はすぐに果てちゃうから、もっと長く、俺に気持ち良くされていることを知ってほしい。

「る、っい、ルイっ……ぃや、だ、やだ、抜け……!」

 けど師匠が本当に嫌そうに、腰も逃げを打つから、仕方なく指を抜いて体を捕まえる。まだ挿れるには、師匠の体が拓ききってない。

「クライヴ? 嫌?」

 短い息をくり返しつつ、師匠が俺に視線を向けてから、首を横に振る。手を伸ばされたから好きに抱きしめさせて、落ちつくように体を撫でてあげる。
 快感を拾うのが上手だから、最後の方には師匠が余裕をなくすことは多いけど、それにしてはタイミングが早すぎる。師匠のナカには挿れたいけど、師匠が嫌だったら、今日はここまでだ。さっき噛むのは我慢出来たから、何とか、我慢出来る、と思う。お預けは結構つらいけど。
 だから、まだとろりとした潤滑油の残る指で、すりすりと孔の縁を未練がましくなぞるのは許してほしい。

「っ、ん、ルイ……なん、で……きもち、い」

 熱っぽい声で、師匠が俺の指の動きに反応するように体を震わせる。気持ちいいはずなのに、何でと聞かれるのがよくわからない。さっきは嫌と言っていたけど、したくないのかと思って聞いてみたら、首は振るし。師匠の反応が何だかちぐはぐで、わからなくて先に進めない。

「何で……指だけ、なのに……気持ちいい、何で……」

 ちゃんと気持ちいい、みたいだ。その言葉に安心して、指をもう一度侵入させた。
 さっきより熱くて、ふわふわしてる。

「……クライヴ?」

 泣きそうなのかと思うくらい蜜を湛えた師匠の目が、蕩けて俺を映している。嫌がっては、いない。指を増やしてナカをかき混ぜたら、甘やかな声が俺に縋ってくる。

「っん、ん、ルイ……っ、なんで……やだ……ッ、きもちぃ……っ」

 まだ指だけ、なのに?
 唇を舐めて、なるべくそっと指を引き抜いた。

「クライヴ」

 覆いかぶさった俺を見上げる碧には、今度はぎらぎらした獣が映っている。

「もっと、気持ち良くなろうよ」
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