馬鹿犬は高嶺の花を諦めない

phyr

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犬牙、犬吠、その身に喰らえ

8-2

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「……好き、大好き……俺はクライヴが好き」

 俺にしがみ付く力が強くなって、堪らなく愛しい。それなら、あの日いなくなったのも、俺が愛してるって言ったせいだ。俺に告げられたら、応えないではいられないから。

 可愛い。めちゃくちゃ可愛い。手放せない。大事にしたい。

 指を抜いて抱きしめて、ねだってキスで愛を伝える。俺の大切な人。可愛い人。

「いっぱい、言わせて。俺が選んだのはクライヴだから、いっぱい伝えたい」

 瑞々しい瞳が俺を見つめて、何か言いたげに形のいい唇を震わせて、答えが見つけられずに額に口付けを落としてくれる。愛情表現が不器用で、でもちゃんと伝えようとしてくれるのが嬉しい。

「……ルイ」
「なぁに、クライヴ」

 目尻を親指で撫でられて、少しこそばゆい。すり、と腰を寄せられて、支えていた手をずり下げられた。手を引かれて導かれたのは、さっきまで散々弄っていた場所だ。

「……指、だけ?」

 ちょっと待て人の決意を何だとどれだけあんたの体のこと考えて今すぐ挿れてぇよ何だその言い方ぶち犯すぞ。

 思わず喉を鳴らして、いったん目を閉じる。落ちつけ、平常心。ここで欲望に負けて突っ込んだら、俺が師匠に甘える構図のままで何も変わらない。大人、そう、大人にならないと。

「…………今日は、指だけ」

 少しだけ不満そうに小首を傾げるから、尻を鷲掴みにして揉んでやる。欲情してないわけじゃないっての。クソ。

「指、だと、奥まで来ねぇから……物足んねぇ……」

 俺の決意を、何だと。

 拾い上げた傷薬を俺に渡して、きゅ、とくっついてくる辺りは可愛いんだけど、本当にもう。じっくりゆっくり馴らすつもりだったのに、出したくて堪らない。

「…………今日、ここまでにしていい?」

 孔をなぞりながら聞いたら、不思議そうな顔を返された。言葉じゃなくて仕草で会話しがちなの、可愛い。

「……挿れるのは、ちゃんと体出来てからだから……素股させてほしい……」

 挿れてるっぽい感覚で出来るって聞いた。でも、師匠が嫌なら諦める。

「どっちで?」

 どっちで?

 目を瞬いてたら、師匠もぱちぱちと瞬きして、もう一度口を開く。

「正常位、後背位、どっちで?」

 俺に選択権があるらしい。
 え、待て。俺に背中見せて後ろからガンガン掘られてもいいと? いや、素股だから挿れないけど、でも。
 顔が見たい。けど、師匠を四つん這いにさせてヤるとか、めちゃくちゃ滾る。

「……こ、はい、い……」

 ひょいと体を離して、無防備に背中を晒した師匠が俺に尻を差し出した状態で振り返る。

「ん」

 ん、じゃねぇよ何この据え膳。嫌がってほしいわけじゃないし嫌がられたくないけど、何この、この、言葉が出てこない、辛い、情緒も何もないけど、この。

「師匠のえっち……」
「ァア?」

 急いで傷薬を師匠の足と俺に塗りたくって、腰を掴んで間に捻じ込む。カーメルほど柔らかくないし、すべすべでもないけど、そもそもこんなことに使わせる太腿じゃない。師匠の腹に擦り付けた時も思ったけど、戦うために作られてきた体を劣情の捌け口にするのはぞくぞくする。

 初めてだから、ゆっくり前後に動かして師匠の反応を確かめる。ちょっとだけ、声を漏らしてる。俺だけ気持ちいいのかと思ってたけど、俺のが当たるから師匠も気持ちよくなれるみたいだ。少しずつ動きを大きくするにつれて、零れる声も艶っぽくなって、姿勢を保てないのかずるずると上半身が沈んでいく。俺に腰を抱えられて、抵抗出来ない体勢で揺さぶられて、エロい声出してる。師匠が。
 舌なめずりしてわざと動きを緩めて、師匠自身でびたびたと汚されていた下腹を撫でてやる。

「ちゃんと足締めて」

 震える足が動いて、きゅっと太腿が閉じられた。俺の言う通りに動いてくれる。堪らない。強くて、まだ勝てなくて、出会った時からずっと俺を圧倒している人が、甘やかに啼きながら媚態を見せてくれる。猛ったモノを何度も足の間に突き入れて、気持ちよさを追いかけて師匠に俺の情欲を叩き付けた。出した後の荒い息のまま、師匠のモノも擦って追い上げる。

「ッあ、ふ、ゃう……ッ、んゃ、ァ……!」

 もっと、声が聞きたい。啼いてほしい。
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