馬鹿犬は高嶺の花を諦めない

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犬牙、犬吠、その身に喰らえ

6-1

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 キスは気持ちいい。舌を絡めたり、口の中を擦ったりして、師匠がちょっと息を乱して気持ちよさそうにしてくれるのも好きだ。頭を支えたままゆっくり押し倒して、口に溜まった唾液を師匠に飲み込ませる。素直に喉を動かしてくれるのが嬉しい。口の端から溢れているから、そっちは俺が舐め取ってあげる。

「……したいけど、師匠、こっち使ってないよね?」

 尻を撫でたら軽く蹴られた。痛い。

「使ってた?」
「……股座蹴り上げてやろうかテメェ……」

 股間を蹴られるのは痛いから嫌だ。ひとまず、一人でする時にそっちを使う趣味はないらしい。もう一度キスをしながら、師匠の体に浄化の魔術を掛ける。一瞬だけ師匠の動きが止まったから、魔術を掛けたのはわかったはずだ。ただ、何も聞かずに続けてくれるから、許してもらえてるみたいで嬉しくなる。
 挿れたいけど、しばらくしてないところに突っ込んだら怪我をさせかねない。頑張って師匠を気持ち良くするだけに抑えるか、素股くらいはさせてもらうか悩ましい。

 唇を離して防具の留め金を外してたら、師匠に足を撫でられた。

「……ヤんのは、いいけど……怪我治ってるわけじゃねぇんだぞ、テメェは」

 心配してくれた。嬉しい。いや、ヤるのはいい? だめだ、処理しなきゃいけない情報が多すぎる。混乱してぐるぐるしてたら、師匠が小さく笑った。可愛い。

「そんなにヤりてぇのか」
「……だって、あの時からしてない……」

 置いていかれた日から、溜まったら抜いてるだけだ。ずっと師匠とも会えなかったし、相手がいなくちゃセックス出来ない。

「……娼館くれぇ行ってたんじゃねぇのか」
「……カーメルに会いに行ったくらい?」

 それも、師匠の情報がないか聞きに行った程度の話だし、あとは師匠がいなくて寂しいって言って慰めてもらっただけだ。上衣を脱がせたら師匠の体に傷跡が増えていて、ちょっと眉を寄せる。

「……アイツと俺って、かなり方向性違わねぇ?」

 傷のことを確認しておこうと思ったら、そう言って首を捻ってるからため息を漏らさないようにするのが大変だった。カーメルのことは好きだけど、突っ込みたいかって言われたらそれはない。

「カーメルは抱いたことない。そもそも俺、師匠以外とヤったことない」
「……は?」

 心底驚いたような顔をするから、師匠の下腹に手を置いて言い聞かせる。

「俺は、ここ以外に挿れたことないし、挿れたいと思ったことない」

 師匠のナカはめちゃくちゃ気持ちいいし、他の人間には勃たないからヤりようがない。挿れたいのも、とろとろにしたいのも師匠だけだ。
 ついでに師匠の下衣も下穿きも脱がせて、露わになったモノを撫でる。

「他のやつのこれ、触ろうと思わないし、舐める気もしない」

 師匠のだったらいくらでも気持ち良くしたい。わざとらしく指を絡めて擦り上げたら、詰めたような声を漏らして顔を逸らされた。俺を煽る気がなくてこれだから、初めての時みたいにその気になられたら、怪我させるどころじゃない。
 赤くなってる耳に口付けて、舌を這わせて水音を立てる。抱きたい。めちゃくちゃヤりたい。怪我させたくはないけど、奥まで貫いてぐちゃぐちゃにしたい。
 少しずつ唇をずらして首筋に痕を付けて、どうやって啼かせようか考えてたら、師匠の手が俺の腕を掴んだ。

「ル、イ、待って……ほしい……」

 俺を煽る気はない、はずだ。悪だくみしてる顔じゃないし、目がちょっと潤んで困ったような顔でいつも強気なくせに今は待ってほしいってお願いするような言い方とかどういうテクニックだチクショウ。

 思わず顔を上げて無言で凝視してたせいか、師匠が手を離そうとしたから、慌てて促す。

「違う、ごめんなさい、師匠、ちゃんと待つから、理由言って」

 我慢させて無理やりにでも抱きたいわけじゃない。せっかく俺を選んだって自覚してもらったのに、そこに我慢することを紐付けさせたくない。カーメルの言ってた通り、俺に甘やかされるのに慣れてほしい。
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