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忠犬、馬鹿犬、貴方のために
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警備の人に手伝ってもらいながら、どうにかこうにか師匠のいるらしいバルコニーまで出てこられた。
いろんな貴族にいっぱい声を掛けられて、領地がどうのとか娘がどうのとか言われた。いろんな町に行ったことはあるけど、どこが特別よかったなんて思い出は特にない。師匠がいればいい。娘が美人とか楽器が得意とか、よく知らない人の話をされても興味は持てない。今まで見てきた中で師匠が一番綺麗だし、楽器を弾けるかどうかは知らないけど、師匠に出来ないことはない、と勝手に思ってる。
とにかく、知らない人間に話し掛けられて興味のないことを聞かされても面倒なだけだ。手すりに座って煙草を吸っている師匠が見えた時にはほっとして、よれよれになって隣に座った。
「……いろんな人に囲まれて、大変なことになった」
「だろうな」
師匠の声ならずっと聞いていたい。いいにおいもする。そういえば、広間の中はいろんなにおいが混じって息苦しかった。横にいる師匠にすんすんと鼻を寄せたら、蹴られた。
「……気になる相手はいなかったのかよ」
「気になる相手?」
「年頃のご令嬢とか、薦められただろ」
娘が何とか言われたけど、師匠のことじゃないからあんまりちゃんと聞いてなかった。だいたい俺は孤児だし、貴族に馴染めるわけがない。
煙草を吸おうとする手を捕まえて、訝しげに振り返る顔に口付ける。外を歩いている時以外は、師匠もそこまで警戒心が強くない。
「俺は師匠と話がしたい」
「テ、メェ、な」
話もそうだけど、セックスもしたい。城に来てから師匠を抱いてない。
立ち上がって体と手すりの間に師匠を閉じ込めて、キスを仕掛ける。抵抗すればいいのに、蹴らないし、噛まないから、俺が調子に乗るのに。
戸惑ってるのに応えてくれるの、可愛い。
「ば、かいぬ、話って……ッ」
息を荒げた師匠が、声を抑えながら俺を睨む。バルコニーの出入り口は帳で仕切られていて、警備の人が他に誰も入ってこないよう見てくれている。大声や争う音が聞こえたらさすがに入ってくるだろうから、あんまり聞こえないように気を付けてるんだろう。
俺も師匠のエロい声が聞かれるのは、嫌だけど。
煙草を師匠から奪い取って、魔術で綺麗に燃やす。煙草を吸っている師匠は格好いいけど、今はちょっと邪魔だ。
「ここ来てから、全然師匠と一緒にいられない」
この服だと俺じゃ脱がせられないから、ここで勃たせるのはまずいかもしれない。汚したり破ったりしたらベティさんが泣きそうだし。服の上から師匠のを撫で擦りながら考える。
耐えようとしてる顔もエロい。オカズに出来る。
「それに師匠、俺と距離置こうとするし」
一瞬肩が跳ねた。図星みたいだ。だったらちょっと追い詰めても許されるか。許されるな。俺がどれだけ我慢して我慢して我慢して我慢してここにいたと思ってるんだ。
服の上から乳首を捏ねたら、ぎゅっと目を瞑ってしまった。時折漏れる息が艶っぽい。耳元に唇を寄せて、吹き込むように囁く。
「俺が欲しいの、師匠だけって、ずっと言ってるのに」
そのまま耳に口付けて、わざと水音を聞かせる。音に弱いのは知ってる。すごく小さいけど、声漏らしてて可愛い。
「……今日まで大人しくしてたご褒美、くれるよね」
碧の瞳がこちらを向いた。少し潤んでる、綺麗な宝石。
「……テメェを、連れてきたのは……俺の都合だ」
手を止めて、師匠の腰を抱く。体をくっつけたら、師匠はちゃんと勃ってた。ちょっと満足して、割れ目に繋がる骨の辺りを撫でながら、師匠の声を聞く。
「…………嫌、だったか?」
声すら出せなかった。
なん、この、は、はぁ? ここでそういうこと言う?
師匠の肩に顔を伏せて、抱きしめる。馬鹿犬っていつも言われるけど、この人がばか、いや、そんなことない、師匠は頭いい。くそ、かわいい、最近そういうことするから、ほんとにもう。
いろんな貴族にいっぱい声を掛けられて、領地がどうのとか娘がどうのとか言われた。いろんな町に行ったことはあるけど、どこが特別よかったなんて思い出は特にない。師匠がいればいい。娘が美人とか楽器が得意とか、よく知らない人の話をされても興味は持てない。今まで見てきた中で師匠が一番綺麗だし、楽器を弾けるかどうかは知らないけど、師匠に出来ないことはない、と勝手に思ってる。
とにかく、知らない人間に話し掛けられて興味のないことを聞かされても面倒なだけだ。手すりに座って煙草を吸っている師匠が見えた時にはほっとして、よれよれになって隣に座った。
「……いろんな人に囲まれて、大変なことになった」
「だろうな」
師匠の声ならずっと聞いていたい。いいにおいもする。そういえば、広間の中はいろんなにおいが混じって息苦しかった。横にいる師匠にすんすんと鼻を寄せたら、蹴られた。
「……気になる相手はいなかったのかよ」
「気になる相手?」
「年頃のご令嬢とか、薦められただろ」
娘が何とか言われたけど、師匠のことじゃないからあんまりちゃんと聞いてなかった。だいたい俺は孤児だし、貴族に馴染めるわけがない。
煙草を吸おうとする手を捕まえて、訝しげに振り返る顔に口付ける。外を歩いている時以外は、師匠もそこまで警戒心が強くない。
「俺は師匠と話がしたい」
「テ、メェ、な」
話もそうだけど、セックスもしたい。城に来てから師匠を抱いてない。
立ち上がって体と手すりの間に師匠を閉じ込めて、キスを仕掛ける。抵抗すればいいのに、蹴らないし、噛まないから、俺が調子に乗るのに。
戸惑ってるのに応えてくれるの、可愛い。
「ば、かいぬ、話って……ッ」
息を荒げた師匠が、声を抑えながら俺を睨む。バルコニーの出入り口は帳で仕切られていて、警備の人が他に誰も入ってこないよう見てくれている。大声や争う音が聞こえたらさすがに入ってくるだろうから、あんまり聞こえないように気を付けてるんだろう。
俺も師匠のエロい声が聞かれるのは、嫌だけど。
煙草を師匠から奪い取って、魔術で綺麗に燃やす。煙草を吸っている師匠は格好いいけど、今はちょっと邪魔だ。
「ここ来てから、全然師匠と一緒にいられない」
この服だと俺じゃ脱がせられないから、ここで勃たせるのはまずいかもしれない。汚したり破ったりしたらベティさんが泣きそうだし。服の上から師匠のを撫で擦りながら考える。
耐えようとしてる顔もエロい。オカズに出来る。
「それに師匠、俺と距離置こうとするし」
一瞬肩が跳ねた。図星みたいだ。だったらちょっと追い詰めても許されるか。許されるな。俺がどれだけ我慢して我慢して我慢して我慢してここにいたと思ってるんだ。
服の上から乳首を捏ねたら、ぎゅっと目を瞑ってしまった。時折漏れる息が艶っぽい。耳元に唇を寄せて、吹き込むように囁く。
「俺が欲しいの、師匠だけって、ずっと言ってるのに」
そのまま耳に口付けて、わざと水音を聞かせる。音に弱いのは知ってる。すごく小さいけど、声漏らしてて可愛い。
「……今日まで大人しくしてたご褒美、くれるよね」
碧の瞳がこちらを向いた。少し潤んでる、綺麗な宝石。
「……テメェを、連れてきたのは……俺の都合だ」
手を止めて、師匠の腰を抱く。体をくっつけたら、師匠はちゃんと勃ってた。ちょっと満足して、割れ目に繋がる骨の辺りを撫でながら、師匠の声を聞く。
「…………嫌、だったか?」
声すら出せなかった。
なん、この、は、はぁ? ここでそういうこと言う?
師匠の肩に顔を伏せて、抱きしめる。馬鹿犬っていつも言われるけど、この人がばか、いや、そんなことない、師匠は頭いい。くそ、かわいい、最近そういうことするから、ほんとにもう。
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