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僕の我儘
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夜空には過去の光が輝いている。
今はない星もあるかもしれない。
そしてまだ見えない星もあるかもしれない。
僕は星空を見上げて君を想った。
君とは高校の部活が一緒で、それから当たり前のように付き合いだして、結婚をした。
君は自己主張をしないタイプだったけれど、僕と連れ添って幸せだっただろうか。
僕は君が隣にいてくれたからできたことがいくつもある。僕の生活に君の存在は不可欠で、僕は君と過ごす時間全てが愛おしかった。でも、それを君に伝えたことはあったかな。
願い事なんてほとんどしたことなかった。
けれど、君が入院して、病院からの帰り道、僕は星空に初めて願ったよ。
『君より先に死ねますように』
君のいない世界など、僕には想像も出来なくて。そんな世界なら僕はいたくない。
君の残された命がもう少ないと分かっていながらも僕は願わずにはいられなかった。
けれどその願いは叶わなかった。
君はこうして眺める夜空の星の一つになってしまった。
君が亡くなってもう六年経つ。
一年目を僕は抜け殻のように過ごした。
二年目、これでは君に申し訳ないと少しずつ君の荷物の整理をしだした。君との思い出のつまった品々を片付けるとき、どれだけの涙を流したか。君がいないことを再確認する度に生きてることが苦しくて、それでも死ねない自分を情けなく思った。
三年目に孫ができて、僕に希望が灯った。
君は孫の可愛さを知らないままこの世から去ってしまったね。それはなんて勿体ないことだろう。それほど孫は可愛くて、僕は君に注げなくなった愛情を、何も分からない孫に注ぐようになった。
君を忘れたわけじゃない。
君のいない世界は幸せのピースがかけている。
それでも、思ってしまうようになったんだよ。せめて孫が大きくなるまで、もう少し見てみたいと。
僕の我儘だとはわかっているけど。
君がこの星のいづれかになっているというなら。
もう少し僕に時間をおくれ。
君を一人にして申し訳ないけれど。
ちゃんと数年後には逝くから。
もう少しだけ僕をそこから見守っておくれ。
僕の願いに応えるように、星がすぅっと夜空を翔けて、僕は君が僕を許してくれたのだと勝手に理解した。
了
今はない星もあるかもしれない。
そしてまだ見えない星もあるかもしれない。
僕は星空を見上げて君を想った。
君とは高校の部活が一緒で、それから当たり前のように付き合いだして、結婚をした。
君は自己主張をしないタイプだったけれど、僕と連れ添って幸せだっただろうか。
僕は君が隣にいてくれたからできたことがいくつもある。僕の生活に君の存在は不可欠で、僕は君と過ごす時間全てが愛おしかった。でも、それを君に伝えたことはあったかな。
願い事なんてほとんどしたことなかった。
けれど、君が入院して、病院からの帰り道、僕は星空に初めて願ったよ。
『君より先に死ねますように』
君のいない世界など、僕には想像も出来なくて。そんな世界なら僕はいたくない。
君の残された命がもう少ないと分かっていながらも僕は願わずにはいられなかった。
けれどその願いは叶わなかった。
君はこうして眺める夜空の星の一つになってしまった。
君が亡くなってもう六年経つ。
一年目を僕は抜け殻のように過ごした。
二年目、これでは君に申し訳ないと少しずつ君の荷物の整理をしだした。君との思い出のつまった品々を片付けるとき、どれだけの涙を流したか。君がいないことを再確認する度に生きてることが苦しくて、それでも死ねない自分を情けなく思った。
三年目に孫ができて、僕に希望が灯った。
君は孫の可愛さを知らないままこの世から去ってしまったね。それはなんて勿体ないことだろう。それほど孫は可愛くて、僕は君に注げなくなった愛情を、何も分からない孫に注ぐようになった。
君を忘れたわけじゃない。
君のいない世界は幸せのピースがかけている。
それでも、思ってしまうようになったんだよ。せめて孫が大きくなるまで、もう少し見てみたいと。
僕の我儘だとはわかっているけど。
君がこの星のいづれかになっているというなら。
もう少し僕に時間をおくれ。
君を一人にして申し訳ないけれど。
ちゃんと数年後には逝くから。
もう少しだけ僕をそこから見守っておくれ。
僕の願いに応えるように、星がすぅっと夜空を翔けて、僕は君が僕を許してくれたのだと勝手に理解した。
了
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