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アンナとヒースの愛のかたち

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 ドア越しだと姿が見えないのでヒースから言われたような気になる。もちろんヒースクリフはヒースなのだから当然なのだけれど。

 誰を愛したか。

 アンナは即答できる。ヒースを愛したのだと。でも、そのヒースって一体どの部分だったのだろう。
 アンナを変えたヒース。外見は変わってしまったけれど、ヒースとヒースクリフは同じ。
 でも、とアンナは思ってしまう。不細工な犬だったヒースには安心感を得られていたのに、人間のヒースクリフにはそれが得られない。人間の男性だと思うと変に意識してしまう。
 ヒースはクッションの上で寝ていたけれど、ヒースを人間に置き換えると……。
「私は着替えも、寝顔も見られていたんだわ!」
 恥ずかしさでアンナは顔から火が出そうになった。ヒースを側に置いたのはアンナだ。だからヒースが悪いわけではない。それでも恥ずかしさが優ってなんだか怒りが湧いてくる。
「ヒースの馬鹿!」
 それでいて、話し相手のいないアンナは寂しさも感じていた。いつもならアンナの独り言に相槌をうったり、何かしら反応をくれたりしたヒース。そのヒースがいないと部屋はしんとしている。
「なんだか複雑だわ」
 独りごちてアンナは大きなため息をついた。
 ヒースを失いたくないから口付けをしたのに、ヒースは今部屋にいない。それはアンナの望んだ結果ではない。
「ダメだわ。納得できないわ」
 アンナは部屋を出た。
 直接会って言いたいことをぶつけなければ。
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