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一部
第二話
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篠と名乗った教師はぽつぽつと会話している生徒を宥めることもせず、選択Aと言う科目についての説明を始める。
選択、と言うのは名ばかりで、地域の歴史を調べたり、ボランティアなどを通して地域の住民と交流し、最終的にその様子を模造紙に纏め、新聞のような形態にする授業らしい。頻度は月に一、二回。今年から新たに導入されたらしく、学校側も手探りの状態だと言う。
見切り発車に近いんだよと、篠は小声でぼやいた。
大体五人から六人のグループに分かれて、それぞれにテーマを設定する。それに基づいて、教師の管轄のもとで活動していくようだ。他所のクラスとテーマが被ってもさほど問題無いと言う。
「今日はそのグループを決めて、出来れば活動のテーマも決めて貰いたいけど、……一時間じゃ無理だよなあ。籤引きとかはしないから、大体五、六人で好きに組んでくれよ。上手いこと組めたら教えてくれな」
それだけ言って、篠は教卓の前の椅子に腰掛けた。それを合図に、クラス中がざわめきに包まれる。どうする?どうする?と言う女子たちの声が聞こえた。
後ろから突かれて、陽は振り返る。
「御子柴、一緒にやろうよ」
最上の言葉に陽が短く頷くと同時に、前の席の前川が陽の座っていた椅子の半分を奪い取るように突進してきた。
「混ーぜて!」
最初からそのつもりだったと言わんばかりに、最上は空っぽになった前川の席に腰掛けて周囲を見渡す。五、六人のグループ、と言う話であるから、まだ足りない。陽もつられて、前川越しに教室を見た。
女子はもう仲の良い者同士で固まっていて、あぶれたらしい女子生徒に副委員長の村井が声を掛けている。
「なあ、初も混ぜて良い?」
陽の提案を快諾して、最上が初を呼んで手招いた。机の合間を縫って、初がこちらに歩いてくる。彼は前川に押し潰されかけている陽を見て、小さく笑った。
「仲良しだね?」
「これをどう見たら仲良しに見えるんだよ!」
前川を押し退けながら喚く陽に被せるように、最上が初を見上げる。
「初くん、誰かと組むんだった?」
「ううん、ちょっと迷ってたから助かったよ」
「俺と、最上、御子柴、香西くんと、……あと一人じゃん、どうする?」
指を折り畳みながら人数を数えていた前川が、ぴんと立った小指を最上と初に向けた。それを見た二人は暫く辺りを見ながら考え込んでいたが、ふと、初が自分の席の近辺に目を留めたようだった。
「あの、一人連れてきてもいい?」
三人がそれに頷くと初は軽く礼を言って、入り口から二列目の先頭──初の隣の席で俯いて座っている一人の男子生徒の元に駆け寄った。距離があるのと、周囲が騒がしいために何を話しているのかは分からないが、その生徒は陽たちの方を一瞥すると、首をぶんぶんと真横に振っている。
その様子を眺めていた最上が、前川と陽に尋ねた。
「誰だっけ?」
「何つったっけ、なあ御子柴」
「俺に丸投げされましても」
高校生になって二週間が経った今、クラスメイトの顔と名前は大体一致していた。が、その男子生徒は例外だ。前髪は顔が隠れてしまうのではと言うほど長く、右側の横髪だけを伸ばして、捻って結ぶ、と言う妙な髪型をしている。その割にいまいち目立たないというか、いつも隅の方で小さくなっている印象だった。今の今まで関わりを持っていなかったから、顔は知っていても名前が分からない。
彼は初と暫く話していたが、やがて肩を押されるようにしてこちらへやってきた。初と同じくらいか、少し小さい背丈の彼は、陽たちの前まで来ると泣きそうな顔で俯いてしまう。長い前髪は惺を連想させるが、惺よりももっと陰鬱な空気が強い。
「時藤くんも入れてあげよ」
初のその言葉に、時藤と呼ばれた生徒はびくりと肩を震わせた。蛇に睨まれた蛙か、あるいは肉食獣の巣に投げ込まれた兎のように、すっかり怯えているように見える。
不意に、最上が口を開いた。
「時藤、……ああ、思い出したわ。時藤瑞樹くんでしょ」
聞けば、最上と時藤は同じ中学に通っていたらしい。クラスは違ったが委員会が一緒で、何回か話したことがあると言う。
それを聞いた前川がわざとらしく口元を押さえて、蔑むような目で最上を見た。
「中学一緒だった奴のこと忘れるとか……」
「クラス違ったしセーフでしょ、……まあいいや。俺の席座っていいよ、瑞樹くん」
それを聞いた時藤は恐る恐ると言った様子で最上の席に座って、また俯いた。どうやら本当に怖がっているようで、血の気の薄い唇が僅かに震えている。それを見かねたのか、前川が陽の席を半分占領したまま後ろを向いて、何事か話し掛け始めた。どこに住んでるとか、中学の頃の部活とか、そう言った他愛ない話だ。
それを横目に、陽は立ったままの初に言う。
「初さあ、山野さんの席座って良いんじゃね」
「そう?じゃあ借りようかな。…山野さん、今日休みなんだね」
山野緑里は陽の隣席の女子生徒で、テニス部に所属している。朝礼の時に休みだと聞いたが、詳しい理由は知らない。
すると、時藤と話していた前川が初の方に向き直った。
「何かさあ、階段から落ちて怪我したらしいぜ」
昨日の放課後、テニス部の一年生は三階から屋上に繋がる階段を使って走り込みをしていた。山野はその最中に階段から転落し、顧問の車で病院に運ばれて行ったらしい。入院とまではいかなかったが、頭から落ちたために何針か縫うことになった。
──と言う話を、注意喚起として朝練時に顧問から聞かされたのだと、前川は言った。
それを聞いていた最上が、思い出したように口を開く。
「突き落とされるって話があったのってさあ、その階段じゃない?ねえ、瑞樹くん」
「えっ!?えっと、うん、多分」
陽と前川越しに急に話を振られた時藤は驚きつつも頷いて、ぽつぽつと話し出した。
東側の、三階から屋上に繋がる階段の踊り場には、大きな姿見が設置されている。そこから手が出てきて、階段を下る生徒を突き落としてしまう。突き落とされた生徒は必ず流血沙汰の怪我をする。
これも昨日惺が言っていた、この学校に無数に伝わる怪談の一部なのだろうか。
そんなことを考えながら時藤の話を聞いていた陽は、前川がいつの間にか自分の制服をしっかりと掴んでいることに気が付いた。見ると、心なしか顔が青い。
「前川?お前もしかして」
「怖いんだあ」
陽の言葉に続けるように、最上がにやりと笑う。前川はと言うと、すんなりそれを肯定してしまった。彼はどうにも素直で、嘘が吐けない性分なのだ。
「だって怖えじゃん!お化けとかさあ、絶対無理だって」
「時藤ってそういうの詳しいの?」
前川を揶揄う最上を見て笑いながら、陽は時藤に聞いた。また怯えられるのでは無いかと心配したが、これまでの会話で警戒心が解けて来たのか、時藤は少しだけ笑って答える。
「あ、えっと、詳しいっていうか、俺、──」
時藤が何か言い掛けた、その時だった。
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
甲高い絶叫と共にドタドタと走る足音が、突然に廊下から聞こえた。絶叫と足音はB組を通り過ぎたところで、まるで停止ボタンを押したかのように、ぶつん、と途切れた。
教室中が凍ったように静まり返る。壁掛け時計の秒針だけが、こちこちと音を立てていた。皆一様に硬直して、ドアの方を見つめている。誰かが息を呑んで、あ、と声を漏らした。
そして弾かれるように、教室は悲鳴に包まれた。女子は身を寄せ合って、半泣きで今の何?などと騒いでいる。隣の教室も似た状況のようで、生徒たちの喧騒と教師の怒号が混ざり合って聞こえてきた。
前川が陽の制服を握る力が、一層強くなる。最上も時藤も、まだドアの向こうに視線を向けていた。
時藤が、あの話も本当だったんだ、と呟くのが聞こえたが、その言葉を掘り返す余裕のある者はここにはいない。陽が初の方を向くと、目が合った。何か見えていたか、とでも言いたげな視線に、首を振って見せる。
教卓からドアを見詰めていた篠が立ち上がって、ひとつ手を叩いた。その音はやけに響いて、教室が徐々に静けさを取り戻していく。
「先生はちょっと様子を見てくるよ。すぐ戻ってくるから、静かにな。絶対に教室から出るんじゃないぞ」
そう笑って教室を出て行く篠に視線を向けた陽は、ふとその足元に目をやった。
開いたドアから見えた廊下には、素足で泥遊びをした子供が土足で走り回ったかのような小さな裸足の足跡が、びっしりと残っていた。一人分ではない。教室の外を叫びながら走り抜けたのは、何人もの、泥だらけの子供達だ。
見えなくて当然だ。教室のドアに嵌められたガラスに映るには、身長が足りない。
思わず出そうになる悲鳴を堪えるために、陽は口を自分の両手で塞ぐ。ここで自分が何か言えば、教室が今度こそ本格的なパニックに陥ってしまう気がした。
結局、篠は十分ほどで戻ってきて、その後すぐに五限目終了のチャイムが鳴った。再び開いたドアの隙間から廊下を覗き見ると、あったはずの足跡は綺麗さっぱり消え失せていた。
「邪魔が入ったから、テーマは次の授業にするか。各々何がいいか考えといてくれよ」
先程の騒動など無かったかのように、篠がひらひらと手を振って教室から出て行った。ドアが閉まると同時、いつもの休み時間より大きなざわめきが、教室の中に広がっていく。
「もう、な、何だよあれ……」
「びっくりしたねえ、…瑞樹くん、あれもそうなの?」
前川は心底怯えた様子で、半ば陽を抱き締めるようにして離れない。最上は前川の席を立って、自らの席に座ったままの時藤に話し掛けた。時藤はこっくり頷いて、廊下の方を指差しながら内緒話のような声音で言う。
「一階の東側廊下──そこのことだよ。そこをね、絶叫しながら走り抜けていくものがいるの。誰かが廊下にいる時は絶対出て来ない。出現はランダムだけど、春が一番多いって話だったな、……。一回出たらもうその年度は出て来ないから、大丈夫。でも──」
「何が大丈夫なんだよお……来年出るかもしれないってことだろ…?」
「二年になったら二階に上がるから大丈夫だよ、前川くん」
「そ、そうだよな!」
「いい加減に離れてくんねーかな、……で、何だよ、時藤」
前川は初に言われるまで、進級すれば階が変わると言う事実をすっかり失念していたらしい。陽は自らに抱き着いたままの前川の頭を押し退けて、泣き言に遮られた時藤の話の続きを促す。時藤は頷くと、より声を顰めて言った。
「確か、それが春先に出たら、その年は「怪異の当たり年」になるんだよね」
前川の引き攣った小さな悲鳴が、教室の喧騒と予鈴に掻き消されていく。席に戻ろうとする初と、その後ろを着いて行く時藤を、陽は呼び止めた。
「時藤さあ、何でそんなに詳しいの」
「あ、……俺、オカルト研究部なんだよ」
へえ、と言う陽の返事を聞くと、控えめに手を振って時藤は自分の席へ戻っていった。
六限目は数学で、予鈴から間も無くして教師がやってきた。教室の空気はいつもよりも重く、皆が廊下の外に気を向けている。また「あれ」が走ってくるのではないか、と言う恐怖感を内包したまま、時間は過ぎていった。
*
帰りのHRで、渡利は五限目で起こったことには一切触れなかった。ただいつものように明日の予定と、帰り道に気を付けて、と言うお決まりの台詞を述べただけだ。何の注意喚起も説明も無いと言うことは、あれが不審者──生身の人間の仕業ではないことを、教師側が暗に認めていることにならないだろうか?
日直が帰りの挨拶を終えると、皆どこか上の空でそれぞれ部活動へと向かう。前川などは最上の腕にしがみ付いて、お願いだから体育館まで一緒に来てくれと懇願している。最上は鬱陶しげに眉根を寄せつつ、それを了承したようだった。皆、今は一人になりたくないのだ。
陽と初はオカルト研究部の部室に行くのだと言う時藤と、途中まで一緒に行くことになった。
第二視聴覚室に向かう道すがら、陽はオカルト研究部について時藤に尋ねた。オカルト研究部、通称オカ研は、二階の印刷室の隣にある空き教室を根城にしている。部長の方針から基本的には個人主義で、UFO、UMA、心霊など、それぞれ自分の世界に没頭している人間しかいない。過去には集団で降霊術を行なっていたらしいが、今は固く禁じられているようだ。何故なのかは分からないし、まだ教えて貰えないんだ、と残念そうに時藤は言った。
「時藤は何調べてんの?」
「俺?俺はねえ、心霊系全般かなあ、……廃墟探索とかはまだちょっと怖くて、部長みたいにはできないけど……」
聞けば、部長の島村は隔週ほどのペースで心霊スポットへ行っては写真を撮って、周囲の様子やその土地の歴史を記録しているらしい。惺が昨日言っていた島村くんとは、恐らくその人物のことだ。
二階に上がると、時藤はじゃあと手を振って、小走りに部室の方へと駆けて行った。それに手を振り返して、二人はまた階段を上がっていく。
上り切った三階は相変わらず静かで、廊下には誰もいない。
「もう先輩たち来てるかなあ」
「鍵開いてなかったらどうしような」
「ねー」
自分たちが一番先に来ていたとしたら、ここで惺か織が来るまで待ちぼうけを食らうことになる。あんなことがあった後に、長い廊下を見続けながら人を待つのは御免だ。廊下の奥に現れるのが必ずしも人とは限らないと、今日知ってしまったのだから。
しかし第二視聴覚室の扉の前に立つと、そんな心配など吹き飛んでしまった。
分厚いドアの向こうから、微かにベースとピアノの音がする。五限目以降心にかかっていた靄が、あっという間に晴れた。勝手に口角が上がる。陽は初と顔を見合わせて、勢い良くドアを開けた。明瞭になった音が鼓膜を揺らす。
「先輩!」
机の上に座ってベースのチューニングをしていたらしい織が顔を上げて、二人を手招いた。織に抱えられた、曇り空のような燻んだ水色のジャズベースは、所々の塗装剥げが目立つ。惺は赤いキーボードの液晶を見ながら鍵盤を叩いていた。
昨日は室内の真ん中に置いてあったはずの四組の机と椅子は窓際へと寄せられて、空いた場所に黒いドラムセットとアンプ類、スピーカーが置かれている。ギターの場所であろう真ん中と、その左右にはマイクスタンドが立てられていた。大体のセッティングは終わっているようで、後は弾くだけ、と言った様子だ。
鞄を置くことも忘れて目を輝かせる陽の横で、初が申し訳なさそうに聞いた。
「すいません、遅れましたか……?」
「いや?全然」
「え、でも、これ──」
事もなさげに織が即答した織に、初は辺りを見渡した。これだけの準備をするのには、慣れていても相応の時間が掛かるに違いない。自分たちが遅れたのでは無いかと一瞬心配したが、どうやらそういう訳ではないらしかった。
キーボードが繋がったアンプの前に屈み込んでツマミを弄っていた惺が、呆れたような顔で振り返って窓の外を見た。
「先輩たちは六限目をサボったんだよ……」
惺の話では、五限目が終わってすぐに織が惺のクラスにやってきて、あれよあれよと言う間に第二視聴覚室に拉致されてしまったらしい。奥の物置からドラムセットと各機材を引き摺り出して、位置を決めてセッティング、音出しまでしたところで、六限目が終わってしまったと惺は言った。
それを聞いた陽はギターのストラップを肩に掛けながら織を見遣り、惺の元に駆け寄る。
「先輩誘拐されたんです?」
「単位ごと誘拐されたよ……」
「可哀想……」
しくしくなどと言いながら顔を覆う惺とそれに寄り添う陽を笑いながらベースのストラップを肩から外して、織はドラムセットの前に置いた丸椅子に座る初に目を向けた。
「初くん、椅子の高さとかは自分で調節してね」
「はい、…これ、方保田先輩がやったんですか?」
「そうよ、久し振りだったからちょっと時間食っちゃったけど」
そんな会話を尻目にチューニングを済ませた陽は、ピックとシールドコードを手にして、キーボードが繋がるアンプの左横に設置されたギターアンプに駆け寄る。大きなスタジオにあるようなキャビネットでは無いが、そこそこの大きさがある。有名メーカーの、音色を歪ませる切り替えスイッチがあるものだ。アンプのジャックにシールドの先を挿して、一番右端のスイッチを入れた。ボリュームのツマミを回すと、ぷつ、ぷつと言う微かな音と共に、自分の指がギターの弦を擦る音がする。
音色を切り替えるスイッチを押すと、それはより大きくなった。自然と込み上げてくる笑みを抑えることが出来ずにいる陽を、織は真ん中に来るよう促した。彼自身はボーカルマイクが繋がっているミキサーの前に立つ。
音量を見たいからと言う織の要求で、残りの三人で一斉に音を出した。数分と経たずにその作業を終えた織が、再びベースを手に取りながら言う。
「曲は?何がいい?」
皆で暫く逡巡した後、数年前にメジャーデビューしたバンドの曲を演奏することになった。あまり音楽を聴くことが無い初も、その曲はゲームで何度もプレイしたことがあると言う。
「ボーカルは陽くんでいい?」
「え、あ、はい!」
織に返事をして、じんわりと手に滲んできた汗を制服で拭いた後、陽はマイクのスイッチを入れた。
初がスティックを鳴らす音がする。この曲はギターボーカルがサビを歌うところから始まるんだと、今になって思い出した。スタンドが若干高く感じたので、少し背伸びをする。カラオケ以外で歌うのは、殆ど初めてだ。心臓の鼓動が、マイクを通じて聞こえてしまいそうだった。
自分の声を、レスポールの音を、陽はどこか他人事のように聴いていた。
選択、と言うのは名ばかりで、地域の歴史を調べたり、ボランティアなどを通して地域の住民と交流し、最終的にその様子を模造紙に纏め、新聞のような形態にする授業らしい。頻度は月に一、二回。今年から新たに導入されたらしく、学校側も手探りの状態だと言う。
見切り発車に近いんだよと、篠は小声でぼやいた。
大体五人から六人のグループに分かれて、それぞれにテーマを設定する。それに基づいて、教師の管轄のもとで活動していくようだ。他所のクラスとテーマが被ってもさほど問題無いと言う。
「今日はそのグループを決めて、出来れば活動のテーマも決めて貰いたいけど、……一時間じゃ無理だよなあ。籤引きとかはしないから、大体五、六人で好きに組んでくれよ。上手いこと組めたら教えてくれな」
それだけ言って、篠は教卓の前の椅子に腰掛けた。それを合図に、クラス中がざわめきに包まれる。どうする?どうする?と言う女子たちの声が聞こえた。
後ろから突かれて、陽は振り返る。
「御子柴、一緒にやろうよ」
最上の言葉に陽が短く頷くと同時に、前の席の前川が陽の座っていた椅子の半分を奪い取るように突進してきた。
「混ーぜて!」
最初からそのつもりだったと言わんばかりに、最上は空っぽになった前川の席に腰掛けて周囲を見渡す。五、六人のグループ、と言う話であるから、まだ足りない。陽もつられて、前川越しに教室を見た。
女子はもう仲の良い者同士で固まっていて、あぶれたらしい女子生徒に副委員長の村井が声を掛けている。
「なあ、初も混ぜて良い?」
陽の提案を快諾して、最上が初を呼んで手招いた。机の合間を縫って、初がこちらに歩いてくる。彼は前川に押し潰されかけている陽を見て、小さく笑った。
「仲良しだね?」
「これをどう見たら仲良しに見えるんだよ!」
前川を押し退けながら喚く陽に被せるように、最上が初を見上げる。
「初くん、誰かと組むんだった?」
「ううん、ちょっと迷ってたから助かったよ」
「俺と、最上、御子柴、香西くんと、……あと一人じゃん、どうする?」
指を折り畳みながら人数を数えていた前川が、ぴんと立った小指を最上と初に向けた。それを見た二人は暫く辺りを見ながら考え込んでいたが、ふと、初が自分の席の近辺に目を留めたようだった。
「あの、一人連れてきてもいい?」
三人がそれに頷くと初は軽く礼を言って、入り口から二列目の先頭──初の隣の席で俯いて座っている一人の男子生徒の元に駆け寄った。距離があるのと、周囲が騒がしいために何を話しているのかは分からないが、その生徒は陽たちの方を一瞥すると、首をぶんぶんと真横に振っている。
その様子を眺めていた最上が、前川と陽に尋ねた。
「誰だっけ?」
「何つったっけ、なあ御子柴」
「俺に丸投げされましても」
高校生になって二週間が経った今、クラスメイトの顔と名前は大体一致していた。が、その男子生徒は例外だ。前髪は顔が隠れてしまうのではと言うほど長く、右側の横髪だけを伸ばして、捻って結ぶ、と言う妙な髪型をしている。その割にいまいち目立たないというか、いつも隅の方で小さくなっている印象だった。今の今まで関わりを持っていなかったから、顔は知っていても名前が分からない。
彼は初と暫く話していたが、やがて肩を押されるようにしてこちらへやってきた。初と同じくらいか、少し小さい背丈の彼は、陽たちの前まで来ると泣きそうな顔で俯いてしまう。長い前髪は惺を連想させるが、惺よりももっと陰鬱な空気が強い。
「時藤くんも入れてあげよ」
初のその言葉に、時藤と呼ばれた生徒はびくりと肩を震わせた。蛇に睨まれた蛙か、あるいは肉食獣の巣に投げ込まれた兎のように、すっかり怯えているように見える。
不意に、最上が口を開いた。
「時藤、……ああ、思い出したわ。時藤瑞樹くんでしょ」
聞けば、最上と時藤は同じ中学に通っていたらしい。クラスは違ったが委員会が一緒で、何回か話したことがあると言う。
それを聞いた前川がわざとらしく口元を押さえて、蔑むような目で最上を見た。
「中学一緒だった奴のこと忘れるとか……」
「クラス違ったしセーフでしょ、……まあいいや。俺の席座っていいよ、瑞樹くん」
それを聞いた時藤は恐る恐ると言った様子で最上の席に座って、また俯いた。どうやら本当に怖がっているようで、血の気の薄い唇が僅かに震えている。それを見かねたのか、前川が陽の席を半分占領したまま後ろを向いて、何事か話し掛け始めた。どこに住んでるとか、中学の頃の部活とか、そう言った他愛ない話だ。
それを横目に、陽は立ったままの初に言う。
「初さあ、山野さんの席座って良いんじゃね」
「そう?じゃあ借りようかな。…山野さん、今日休みなんだね」
山野緑里は陽の隣席の女子生徒で、テニス部に所属している。朝礼の時に休みだと聞いたが、詳しい理由は知らない。
すると、時藤と話していた前川が初の方に向き直った。
「何かさあ、階段から落ちて怪我したらしいぜ」
昨日の放課後、テニス部の一年生は三階から屋上に繋がる階段を使って走り込みをしていた。山野はその最中に階段から転落し、顧問の車で病院に運ばれて行ったらしい。入院とまではいかなかったが、頭から落ちたために何針か縫うことになった。
──と言う話を、注意喚起として朝練時に顧問から聞かされたのだと、前川は言った。
それを聞いていた最上が、思い出したように口を開く。
「突き落とされるって話があったのってさあ、その階段じゃない?ねえ、瑞樹くん」
「えっ!?えっと、うん、多分」
陽と前川越しに急に話を振られた時藤は驚きつつも頷いて、ぽつぽつと話し出した。
東側の、三階から屋上に繋がる階段の踊り場には、大きな姿見が設置されている。そこから手が出てきて、階段を下る生徒を突き落としてしまう。突き落とされた生徒は必ず流血沙汰の怪我をする。
これも昨日惺が言っていた、この学校に無数に伝わる怪談の一部なのだろうか。
そんなことを考えながら時藤の話を聞いていた陽は、前川がいつの間にか自分の制服をしっかりと掴んでいることに気が付いた。見ると、心なしか顔が青い。
「前川?お前もしかして」
「怖いんだあ」
陽の言葉に続けるように、最上がにやりと笑う。前川はと言うと、すんなりそれを肯定してしまった。彼はどうにも素直で、嘘が吐けない性分なのだ。
「だって怖えじゃん!お化けとかさあ、絶対無理だって」
「時藤ってそういうの詳しいの?」
前川を揶揄う最上を見て笑いながら、陽は時藤に聞いた。また怯えられるのでは無いかと心配したが、これまでの会話で警戒心が解けて来たのか、時藤は少しだけ笑って答える。
「あ、えっと、詳しいっていうか、俺、──」
時藤が何か言い掛けた、その時だった。
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
甲高い絶叫と共にドタドタと走る足音が、突然に廊下から聞こえた。絶叫と足音はB組を通り過ぎたところで、まるで停止ボタンを押したかのように、ぶつん、と途切れた。
教室中が凍ったように静まり返る。壁掛け時計の秒針だけが、こちこちと音を立てていた。皆一様に硬直して、ドアの方を見つめている。誰かが息を呑んで、あ、と声を漏らした。
そして弾かれるように、教室は悲鳴に包まれた。女子は身を寄せ合って、半泣きで今の何?などと騒いでいる。隣の教室も似た状況のようで、生徒たちの喧騒と教師の怒号が混ざり合って聞こえてきた。
前川が陽の制服を握る力が、一層強くなる。最上も時藤も、まだドアの向こうに視線を向けていた。
時藤が、あの話も本当だったんだ、と呟くのが聞こえたが、その言葉を掘り返す余裕のある者はここにはいない。陽が初の方を向くと、目が合った。何か見えていたか、とでも言いたげな視線に、首を振って見せる。
教卓からドアを見詰めていた篠が立ち上がって、ひとつ手を叩いた。その音はやけに響いて、教室が徐々に静けさを取り戻していく。
「先生はちょっと様子を見てくるよ。すぐ戻ってくるから、静かにな。絶対に教室から出るんじゃないぞ」
そう笑って教室を出て行く篠に視線を向けた陽は、ふとその足元に目をやった。
開いたドアから見えた廊下には、素足で泥遊びをした子供が土足で走り回ったかのような小さな裸足の足跡が、びっしりと残っていた。一人分ではない。教室の外を叫びながら走り抜けたのは、何人もの、泥だらけの子供達だ。
見えなくて当然だ。教室のドアに嵌められたガラスに映るには、身長が足りない。
思わず出そうになる悲鳴を堪えるために、陽は口を自分の両手で塞ぐ。ここで自分が何か言えば、教室が今度こそ本格的なパニックに陥ってしまう気がした。
結局、篠は十分ほどで戻ってきて、その後すぐに五限目終了のチャイムが鳴った。再び開いたドアの隙間から廊下を覗き見ると、あったはずの足跡は綺麗さっぱり消え失せていた。
「邪魔が入ったから、テーマは次の授業にするか。各々何がいいか考えといてくれよ」
先程の騒動など無かったかのように、篠がひらひらと手を振って教室から出て行った。ドアが閉まると同時、いつもの休み時間より大きなざわめきが、教室の中に広がっていく。
「もう、な、何だよあれ……」
「びっくりしたねえ、…瑞樹くん、あれもそうなの?」
前川は心底怯えた様子で、半ば陽を抱き締めるようにして離れない。最上は前川の席を立って、自らの席に座ったままの時藤に話し掛けた。時藤はこっくり頷いて、廊下の方を指差しながら内緒話のような声音で言う。
「一階の東側廊下──そこのことだよ。そこをね、絶叫しながら走り抜けていくものがいるの。誰かが廊下にいる時は絶対出て来ない。出現はランダムだけど、春が一番多いって話だったな、……。一回出たらもうその年度は出て来ないから、大丈夫。でも──」
「何が大丈夫なんだよお……来年出るかもしれないってことだろ…?」
「二年になったら二階に上がるから大丈夫だよ、前川くん」
「そ、そうだよな!」
「いい加減に離れてくんねーかな、……で、何だよ、時藤」
前川は初に言われるまで、進級すれば階が変わると言う事実をすっかり失念していたらしい。陽は自らに抱き着いたままの前川の頭を押し退けて、泣き言に遮られた時藤の話の続きを促す。時藤は頷くと、より声を顰めて言った。
「確か、それが春先に出たら、その年は「怪異の当たり年」になるんだよね」
前川の引き攣った小さな悲鳴が、教室の喧騒と予鈴に掻き消されていく。席に戻ろうとする初と、その後ろを着いて行く時藤を、陽は呼び止めた。
「時藤さあ、何でそんなに詳しいの」
「あ、……俺、オカルト研究部なんだよ」
へえ、と言う陽の返事を聞くと、控えめに手を振って時藤は自分の席へ戻っていった。
六限目は数学で、予鈴から間も無くして教師がやってきた。教室の空気はいつもよりも重く、皆が廊下の外に気を向けている。また「あれ」が走ってくるのではないか、と言う恐怖感を内包したまま、時間は過ぎていった。
*
帰りのHRで、渡利は五限目で起こったことには一切触れなかった。ただいつものように明日の予定と、帰り道に気を付けて、と言うお決まりの台詞を述べただけだ。何の注意喚起も説明も無いと言うことは、あれが不審者──生身の人間の仕業ではないことを、教師側が暗に認めていることにならないだろうか?
日直が帰りの挨拶を終えると、皆どこか上の空でそれぞれ部活動へと向かう。前川などは最上の腕にしがみ付いて、お願いだから体育館まで一緒に来てくれと懇願している。最上は鬱陶しげに眉根を寄せつつ、それを了承したようだった。皆、今は一人になりたくないのだ。
陽と初はオカルト研究部の部室に行くのだと言う時藤と、途中まで一緒に行くことになった。
第二視聴覚室に向かう道すがら、陽はオカルト研究部について時藤に尋ねた。オカルト研究部、通称オカ研は、二階の印刷室の隣にある空き教室を根城にしている。部長の方針から基本的には個人主義で、UFO、UMA、心霊など、それぞれ自分の世界に没頭している人間しかいない。過去には集団で降霊術を行なっていたらしいが、今は固く禁じられているようだ。何故なのかは分からないし、まだ教えて貰えないんだ、と残念そうに時藤は言った。
「時藤は何調べてんの?」
「俺?俺はねえ、心霊系全般かなあ、……廃墟探索とかはまだちょっと怖くて、部長みたいにはできないけど……」
聞けば、部長の島村は隔週ほどのペースで心霊スポットへ行っては写真を撮って、周囲の様子やその土地の歴史を記録しているらしい。惺が昨日言っていた島村くんとは、恐らくその人物のことだ。
二階に上がると、時藤はじゃあと手を振って、小走りに部室の方へと駆けて行った。それに手を振り返して、二人はまた階段を上がっていく。
上り切った三階は相変わらず静かで、廊下には誰もいない。
「もう先輩たち来てるかなあ」
「鍵開いてなかったらどうしような」
「ねー」
自分たちが一番先に来ていたとしたら、ここで惺か織が来るまで待ちぼうけを食らうことになる。あんなことがあった後に、長い廊下を見続けながら人を待つのは御免だ。廊下の奥に現れるのが必ずしも人とは限らないと、今日知ってしまったのだから。
しかし第二視聴覚室の扉の前に立つと、そんな心配など吹き飛んでしまった。
分厚いドアの向こうから、微かにベースとピアノの音がする。五限目以降心にかかっていた靄が、あっという間に晴れた。勝手に口角が上がる。陽は初と顔を見合わせて、勢い良くドアを開けた。明瞭になった音が鼓膜を揺らす。
「先輩!」
机の上に座ってベースのチューニングをしていたらしい織が顔を上げて、二人を手招いた。織に抱えられた、曇り空のような燻んだ水色のジャズベースは、所々の塗装剥げが目立つ。惺は赤いキーボードの液晶を見ながら鍵盤を叩いていた。
昨日は室内の真ん中に置いてあったはずの四組の机と椅子は窓際へと寄せられて、空いた場所に黒いドラムセットとアンプ類、スピーカーが置かれている。ギターの場所であろう真ん中と、その左右にはマイクスタンドが立てられていた。大体のセッティングは終わっているようで、後は弾くだけ、と言った様子だ。
鞄を置くことも忘れて目を輝かせる陽の横で、初が申し訳なさそうに聞いた。
「すいません、遅れましたか……?」
「いや?全然」
「え、でも、これ──」
事もなさげに織が即答した織に、初は辺りを見渡した。これだけの準備をするのには、慣れていても相応の時間が掛かるに違いない。自分たちが遅れたのでは無いかと一瞬心配したが、どうやらそういう訳ではないらしかった。
キーボードが繋がったアンプの前に屈み込んでツマミを弄っていた惺が、呆れたような顔で振り返って窓の外を見た。
「先輩たちは六限目をサボったんだよ……」
惺の話では、五限目が終わってすぐに織が惺のクラスにやってきて、あれよあれよと言う間に第二視聴覚室に拉致されてしまったらしい。奥の物置からドラムセットと各機材を引き摺り出して、位置を決めてセッティング、音出しまでしたところで、六限目が終わってしまったと惺は言った。
それを聞いた陽はギターのストラップを肩に掛けながら織を見遣り、惺の元に駆け寄る。
「先輩誘拐されたんです?」
「単位ごと誘拐されたよ……」
「可哀想……」
しくしくなどと言いながら顔を覆う惺とそれに寄り添う陽を笑いながらベースのストラップを肩から外して、織はドラムセットの前に置いた丸椅子に座る初に目を向けた。
「初くん、椅子の高さとかは自分で調節してね」
「はい、…これ、方保田先輩がやったんですか?」
「そうよ、久し振りだったからちょっと時間食っちゃったけど」
そんな会話を尻目にチューニングを済ませた陽は、ピックとシールドコードを手にして、キーボードが繋がるアンプの左横に設置されたギターアンプに駆け寄る。大きなスタジオにあるようなキャビネットでは無いが、そこそこの大きさがある。有名メーカーの、音色を歪ませる切り替えスイッチがあるものだ。アンプのジャックにシールドの先を挿して、一番右端のスイッチを入れた。ボリュームのツマミを回すと、ぷつ、ぷつと言う微かな音と共に、自分の指がギターの弦を擦る音がする。
音色を切り替えるスイッチを押すと、それはより大きくなった。自然と込み上げてくる笑みを抑えることが出来ずにいる陽を、織は真ん中に来るよう促した。彼自身はボーカルマイクが繋がっているミキサーの前に立つ。
音量を見たいからと言う織の要求で、残りの三人で一斉に音を出した。数分と経たずにその作業を終えた織が、再びベースを手に取りながら言う。
「曲は?何がいい?」
皆で暫く逡巡した後、数年前にメジャーデビューしたバンドの曲を演奏することになった。あまり音楽を聴くことが無い初も、その曲はゲームで何度もプレイしたことがあると言う。
「ボーカルは陽くんでいい?」
「え、あ、はい!」
織に返事をして、じんわりと手に滲んできた汗を制服で拭いた後、陽はマイクのスイッチを入れた。
初がスティックを鳴らす音がする。この曲はギターボーカルがサビを歌うところから始まるんだと、今になって思い出した。スタンドが若干高く感じたので、少し背伸びをする。カラオケ以外で歌うのは、殆ど初めてだ。心臓の鼓動が、マイクを通じて聞こえてしまいそうだった。
自分の声を、レスポールの音を、陽はどこか他人事のように聴いていた。
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